犬は人間と同じように痛みを感じるのか?

健康管理
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「犬は人間ほどに痛みを感じない」というセリフ、聞いたことはありませんか?

実際犬たちは、テーブルに頭をぶつけても平気そうだし、怪我をしていても動きまわろうとするし、痛みをあまり感じていないように見えます。

「犬は痛みをあまり感じない」?

犬は確かに、痛みをあまり感じていないように見えます。これは一般的に、彼らが怪我や衰弱からくる痛みを隠すという本能を受け継いでいるからだと言われます。弱みを見せれば攻撃されやすいため、常に元気に見せることが生き残るために重要だからです。

ペットとなった私たちの愛犬も、痛みや弱さを見せることには慣れていません。彼らの本能は痛みがあっても隠そうとするため、私たち人間は彼らの痛みに気づきづらいのです。

しかし、私たちが気づかないからといって、彼らが痛みを感じていないというわけではありません。

動物は痛みをどう感じるのか

動物たちが人間の言葉で痛みについて語ることはないので、彼らがどのように、どの程度、痛みを感じているかを知ることはできません。しかし、これまでにわかっていることから推測することはできます。
進化生物学者Robyn J. Crookによる動画、『動物は痛みをどのように感じるのか(How do animals experience pain?)』に、痛みについてのわかりやすい説明があります。

Crookの説明によれば、痛みを感じるような刺激を受けると、2種類の反応が起こるそうです。一つは「侵害受容(nociception)」というもので、肌の神経から伝えられた情報を受けた脊髄が、脅威から身を守るための身体的認知のことです。非常に単純な動物を含むほとんど全ての動物は、これを経験します。

もう一つは「意識的な認識(conscious recognition of harm)」です。人間では、これは皮膚の感覚ニューロンが脊髄を介して脳に2番目の接続をつくるときに起こるもので、さまざまな領域にある数百万のニューロンが痛みの感覚を作りだすのです。痛いと認識するか、どのくらい痛いと感じるかは、この「意識的な認識」に左右されます。

この「意識的な認識」については、どの動物がどのようにもつのかは、あまりよくわかってはいません(しつこいですが、動物はどう感じるかを教えてくれないので、わからないのです)。ただ、私たちは観察から、動物が痛みを意識し、傷口をかばったり苦痛を示すために声をあげることを知っています。足を怪我した犬はかばって歩くし、痛みを経験した場所に近づかない犬がいることも知っています。これらのことから一般的には、脊椎動物は「痛みを感じる」として、多くの国において、故意に不必要に害することは法律などで禁じられています。

無脊椎動物については、痛みに対して身体の反応はあるけれど、意識されたものなのかどうかは、疑問視されていました。しかし最近になり、甲殻類などの無脊椎動物も痛みを感じる複雑な神経系をもつことが研究により示されています。これを受けてスイスでは、生きたロブスターを熱湯に入れることを禁じる法律が今年3月に発効されています。

すべての痛みは緩和されるべき

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image by Annette Shaff / Shutterstock

さて、「犬の痛み」に話を戻しましょう。

かつては、犬はあまり痛みを感じないか、あるいは痛みに鈍感だと考えられていました。痛がるのは、一部の”弱虫な犬種”のみだと言う人もありました。獣医師の中にも「手術後の安静のためには痛みがあった方が良い」と公言する人がいたほどです。1980年代後半から1990年代初頭にかけては、米国では鎮痛が推奨されていない時期もあったそうです。

しかし現代は、「痛みのコントロールは治療を助けるもの」という考え方の方が、受け入れられています。ストレス要因である痛みにより”ストレスホルモン”が分泌され、緊張や興奮、さらには食欲の減退や睡眠障害などが引き起こされ、身体の治癒力は弱まるのです。

痛みの管理は、より早期に行われることが推奨されています。普段は眠っている痛みを感じる神経は、一度活性化されると、コントロールが困難になるのです。

「すべての痛みは緩和されるべき」というのは、動物愛護の観点もありますが、治療に必要なことなのです。薬や治療に対する考え方はそれぞれにあると思います。獣医師とじっくり話し合って、納得のいく方法を模索してください。


犬たちが私たちと同じように痛みを感じるかはわかりませんが、彼らも痛みを感じますし、そこからくるストレスにも苦しみます。

痛みは(とくに長期間にわたる痛みは)、犬の健康を害するものです。痛みを感じている期間が長ければ、それだけ犬の回復は遅れるものと考えましょう。「犬は痛みに強い」ではなく「隠すのが上手」と考え、痛みのサインに敏感になりましょう。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Animals can feel pain. A biologist explains how we know. – Vox
[2] Do Dogs Feel Pain the Same Way that Humans Do? | Psychology Today
[3] Managing your dog’s pain – Dogtime

Featured image creditana erb/ Flickr

寒い時期の犬の関節炎の痛みを緩和する | the WOOF イヌメディア

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