犬の唾液〜その機能と役割、そして密かに住まう細菌たち

犬のカラダ
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愛犬からのペロペロを受け止めるのは、犬の飼い主の大切なお仕事。「唾液まみれは飼い主の勲章!」とお考えの飼い主さんも少なくはないでしょう。

唾液はとても重要なもので、愛犬の虫歯を防いでくれたり、傷を治す力を持っています。一方で、細菌や寄生虫をたくさん住まわせる危険なものでもあるのです。

今日は犬の唾液のお話。機能や役割、人間への影響などをまとめています。

唾液は犬の虫歯を防ぐ

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image by Zach / Flickr

犬の虫歯は一般的ではありませんが、絶対にできないわけではありません。細菌などにより酸が産み出され口腔内が酸性に傾くと、歯の表面のエナメル質を溶かしはじめて歯の損傷や炎症、感染、変色をもたらし、”虫歯”といわれる状態なるのです。

犬に”虫歯”が少ないのは、唾液の働きによるところが大きいそう。アルカリ性寄りの唾液は口腔内を洗浄・希釈し、酸を緩衝する働きが強く、虫歯を予防する働きが強いと言われますす。ペンシルバニア大学のハーベイ博士(Dr. Colin Harvey)によれば、イヌの唾液のphは7.5〜8とヒトの唾液(6.5〜7)に比べてアルカリ寄りで、これが酸によるエナメル質の侵食を防いでいるとコメントしています[1]。ただし、アルカリ性寄りの唾液は石灰化しやすく、歯垢がたまりやすい傾向があります。歯肉炎や歯周病などのお口トラブルはヒトより多いかもしれません。予防の歯磨きは、きっちりしっかりと行いましょう。

唾液は食物を体に運ぶ

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image by Joanne Wan / Flickr

人間の唾液には消化酵素が含まれており、消化を促す役割を果たしています。一方、犬の唾液には消化酵素は含まれず、単に食物を体(胃)の中に運ぶ役割のみを果たします。

犬は人間と異なり、食べ物を口の中で咀嚼して唾液と混ぜる消化プロセスを経る必要はありません。消化に必要な働きは、すべて胃や腸が担ってくれます。犬の唾液が果たすのは、”潤滑油”的役割のみということになります。

唾液には傷を癒す物質が含まれている

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image by Jau Kay Kiang / Flickr

フランス語には”Langue de chien, langue de médecin(犬の舌は医者の舌)”という言葉があり、ラテン語には”Lingua canis dum lingit vulnus curat(犬の唾液は傷を癒す)”という言葉があります。なんとなく眉唾っぽいこの言葉ですが、全くの嘘というわけではないようです。

(なんと!)犬のペロペロには抗菌性の化学物質が含まれているのです。嘘みたいですけど。

オランダの研究者は、犬の唾液の中にヒスタチンという抗細菌活性、抗菌活性のある化学物質を同定しました。また、唾液が皮膚に触れると、一酸化窒素を発生させることも示されており、これも「犬の舌は医者の舌」をサポートします。一酸化窒素は、細菌の増殖を抑制し感染から創傷を保護すると言われているからです[2]

さらに、フロリダ大学の研究者は、唾液中に創傷の治癒期間を半減させる神経成長因子呼ばれるタンパク質を同定しています[2]

とはいえ、次に示すように犬の唾液にはアレルギーを引き起こすことがあり、また細菌や寄生虫を媒介するものとしても知られています。積極的に犬に傷を舐めさせるのはやめましょう。

唾液はアレルギーを引き起こすことがある

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image by Micolo J / Flickr

犬の被毛はアレルギーを引き起こすことが知られていますが、唾液に含まれるタンパク質も人のアレルギーの原因になり得ることが複数の研究により示されています。唾液はフケなど以上に、アレルギーを引き起こす原因になり得るとする研究者もいます[3]

唾液には細菌や寄生虫がたくさん住まう

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image by Dave L / Flickr

ペットの唾液には、人獣共通感染症を引き起こす細菌および寄生虫がウジャウジャいます。パスツレラは犬及び猫が口腔内常在菌として保有する細菌で、皮膚症状及び呼吸器症状を引き起こします。サルモネラ(Salmonellla)、大腸菌(E.coli)、クロストリジウム(Clostridia)およびカンピロバクター(Campylobacter)は、ヒトの重篤な腸疾患を引き起こし得るペットの腸内細菌で、糞便を通じて感染するものですが、犬猫はお尻を舐めるため唾液から感染することも十分に考えられます。寄生虫についても同様に、肛門を舐めた後に人の顔を舐めることで感染させる可能性があることは否定できません。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Dog Saliva: 5 Facts You Should Know | petMD
[2] Pet Saliva: Health Hazard or Health Benefit? | petMD
[3] コルチゾール – Wikipedia
[4] Polovic, N., Wadén, K., Binnmyr, J., Hamsten, C., Grönneberg, R., Palmberg, C., … & Hage, M. (2013). Dog saliva–an important source of dog allergens. Allergy, 68(5), 585-592.

Featured image credit gesango16 / Shutterstock

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