犬のオシッコは”黄金の液体”。犬の情報がたっぷり詰まった、ゴールドのように価値のある液体です。今回はこの価値ある液体の「色」に注目し、それらが語る愛犬の健康状態についてまとめています。
[icon name=”comments” class=”” unprefixed_class=””] この記事の監修者
こなか動物病院 小中知幸(こなか ともゆき)院長
青森県青森市出身。平成元年にこなか動物病院を青森市に開業。人と動物が健康で生活できるように健康診断から高度医療まで幅広く治療できるよう日々努力しています。
犬のオシッコは健康の尺度
オシッコを作るのは腎臓で、1つの腎臓にはネフロンと呼ばれる構造が集まってできています。毛細血管が球状になった小さなろ過装置である「糸球体」と、糸球体からつながる「尿細管」からできており、尿細管は腎盂へと繋がります。
血液は糸球体と尿細管をとおる中で、老廃物を含んだ液体がこし出され、身体に必要な成分や水分が再吸収されて、最終的に老廃物と余分な水分だけが尿となって体外に排出されます。
ろ過装置を経た犬の尿は、全身の健康を反映する沈殿物が含まれた健康の尺度ともなる”黄金の液体”。尿を検査することにより、代謝および体液の状態、疾患の兆候を示す物質などの存在を調べることができるのです。
健康ワンコのオシッコの色
飲水量に応じて色調は異なりますが、健康な犬は黄色のオシッコをします。色だけを考えた場合、黄色以外のオシッコをする犬は、身体になんらかの問題を抱えている可能性が高くあります。
黄色の色合いの濃さは、尿の濃度あるいは希釈度を反映します。濃い黄色の尿は水分が不足している可能性を示し、透明に近い黄色の尿は、水分過剰を示します。
黄色の濃さが日々に移り変わるぶんには、あまり心配しなくても良いでしょう。摂取した水分量によって変化しているだけであることがほとんどです。一方、濃すぎる黄色や透明に近い黄色の状態が数日持続するようなら、脱水や他の医学的な問題が発生している可能性があります。改善しない場合には、獣医師の診察が必要です。
奇妙な色のオシッコが語ること
オシッコが黄色以外の色をしていたら、早めに動物病院に連絡しましょう。
・オレンジ色の尿
尿が、暗い黄色ではなくオレンジに近い色なら、心配すべきです。黄疸、肝臓病、胆管・胆嚢・膵臓の問題、赤血球の損傷、または極端な脱水症状を示している可能性があります。薬によっては尿にオレンジまたは赤の色合いが加わることがあります。
・ピンクまたは赤の尿
ピンク、赤、赤茶、赤っぽいオレンジの尿の最も一般的な原因は尿路感染や、膀胱・尿道の結石です。多くはないものの出血や凝固疾患、鈍的外傷、さらには癌に罹患している可能性もあります。
・茶色または黒の尿
今すぐ動物病院に走るべき深刻な状態です。尿路での出血、血球の損傷によるヘモグロビンの放出、外傷による筋肉の損傷、毒素への暴露(タマネギ、ニンニク、亜鉛、アセトアミノフェンなど)がある可能性があります。
犬のオシッコをつかまえて
動物病院での検査に必要な尿の量は、それほど多くはありません。正確に調べる場合には、動物病院で採取してもらうことも十分に可能です。
しかし、「尿の色がいつもと違うな」とか、「ちょっと色を確認してみよう」などというときには、ご家庭にあるもので尿サンプルを採ってみましょう。
脚を上げて用を足す犬なら、描かれた放物線の先にコップを差し出すだけでOK。お座りスタイルの犬ならば、トイレシートを逆にしてそれを透明カップに移す形でも摂取はできます。
いつもの色と違う奇妙な色であるならば、身体の中で問題が発生している可能性が大ですから、できるだけ早く動物病院へ向かいましょう。色だけでなく、匂いや頻度についても注意して観察すると良いでしょう。
さて、今回は「色」に注目しましたが、もちろん回数と量にも注意は必要です。
脱水の場合は量が少なくなりますが、いつもより回数が多く、少ない量をチビチビとしている時は膀胱炎や結石が疑われます。多飲多尿が見られる場合、糖尿病、子宮蓄膿症、尿崩症、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、初期の腎不全が疑われます。慢性腎不全の末期症状になると、逆にオシッコは出なくなります。
ウンチほどには注目されないオシッコですが、実は愛犬の身体について、様々なことを教えてくれるものです。ぜひこれからは積極的に、”黄金の液体”を観察してみてくださいね。
[icon name=”heart” class=”” unprefixed_class=””] 以下の団体の協力により記事を作成しました
Team HOPEは、全国の獣医師・動物病院がTeamとなって、ペットの予防医療と健康管理の普及・啓発 活動を推進し、ペットにやさしい社会の実現を目指すプロジェクトとして2013年12月に発足。Team HOPEの「Team」には、獣医師同士のTeam、業界全体でのTeam、そして、ペットオーナーと獣医師とのTeamづくりを願う気持ちが込められています。