犬も恥ずかしがるのか

生態・行動
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犬には愛すべき点がたくさんありますが、そのひとつは彼らが「恥を知らない」ところかもしれません。グルーミングで失敗しても平気だし、洋服からお尻が丸出しになっていてもお構いなし。その愉快で堂々とした振る舞いは、いつも私たちを笑顔にしてくれます。

しかし、彼らは本当に「恥を知らない」のでしょうか。失敗したときに居心地の悪さを感じることはないのでしょうか。そうであれば何か失敗したときの”バツの悪そうな表情”は、なぜ現れるのでしょうか。

犬も恥ずかしがるのか

German shepherd vs a pier

犬に感情があることは、疑いの余地はありません。犬に限らず動物は、怒り、悲しみ、恐怖、喜びを感じます。

しかし、罪悪感や嫉妬、恥ずかしさのような複雑な感情については、「ある」という人もいれば「ない」という人もいます。怒りや悲しみのような自動的に生じる感情とは異なり、社会関係の中で生じる感情はとても複雑であり、行動観察などからはよくわからないのです。

たとえば、恥ずかしいという感情が生じるためには、自分と他者とが別物であると認識していなければなりません。そのうえで、自らの行動を振り返ることができて(内省)、なんらかの基準をもち、これに基づいて自己を評価することができなければなりません。

犬が自意識や自尊心をもっているか、あるいは自己をどれだけ認識しているかは、あまりよくわかっていません。また、自己評価の基準と社会的規範や道徳をどれだけ理解しているかにも疑問が残ります。「犬は羞恥や恥ずかしさといった感情は持ち合わせない」という人の多くは、この点を論拠にしているようです。

一方で、「犬も恥ずかしさや屈辱に似た感情を経験することがある」と主張する人もいます。犬も感情は持ち合わせるが、人とは恥ずかしさを感じる基準が異なるという考え方です。お尻丸出しの洋服が恥ずかしくないからといって、不適切失禁に屈辱を感じないわけではないといういうのです。

繰り返しになりますが、現在はどちらが正しいのかはわかりません。犬が「恥ずかしい」と感じるかどうかは、今後の研究成果を待つしかないのです。fMRIを使った脳の研究によれば、犬の脳の動きは人間のそれに驚くほど似ているそうです。研究がすすみ、犬がどういうときにどんな反応をみせるのか、羞恥や屈辱の感情を持ち合わせるかなどが、わかってくることをゆっくり待ちましょう。

恥ずかしそうに見える犬

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image by Sue Dudley / Flickr

犬と暮らしているとしばしば、「恥ずかしそう」な仕草に出くわすことがあります。

走っていたら足を滑らせて転んでしまったときや、ママのバッグをごそごそ漁っていいるのが見つかったとき、犬たちは飼い主から隠れたり目をそらしたりします。ときにはクッション掘りを始めたり、お腹を出すなどの行動もみられます。

私たちはこうした犬の行動を、「恥ずかしがってる」「決まり悪いと感じている」などと考えがちですが、犬は必ずしもそう感じているわけではありません。わたしたちが「反省していると思う顔」は、犬が恐怖を感じている顔かもしれません。怒る飼い主に、「私はあなたの敵ではなりませんよ」「落ち着いてください」と訴えるための行動である可能性があります。あるいは、「お腹を出せば笑ってくれる、許してくれる」と学習したうえでの行動かもしれません。

行動や表情、ものごとへの反応は、その犬の性格や生活環境、飼い主との関係性によって異なるものです。犬がちょっと変わった行動を見せたら、擬人化することなく、「うちのコはどう思っているのかな」とじっくり観察するようにしましょう。

尻尾や耳が下がっていたり、身体を小さくしているのなら、「反省」「羞恥」ではなく怖がっています。「〜に見える」と安易に判断しないようにすることは、ほんとうに大切です。

屈辱に震える犬を笑ってはならない

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image by Phil Sangwell / Flickr

犬にハロウィンのコスチュームを着せて楽しむくらいは、問題ないでしょう。ちょっと失敗しちゃった元気な愛犬を笑うのも、それほど罪ではありません。

しかし、たとえば病気や老化のために出来たことが出来なくなった犬を笑いものにするのは、良い考えとはいえません。

肛門や膀胱の機能が弱くなり失敗してしまった犬や、足腰が弱くなり起きあがれない犬には、むしろ「屈辱をおぼえている」「気まずさを感じている」と考え、助けの手を差し伸べましょう。

いままで出来ていたことが出来なくなるのは、犬にとっても非常に不安なことでしょう。また、犬はあなたを失望させたくないと強く思っているものです。笑うのではなく上手にできるよう助け舟をだすのが、飼い主としての役割です。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Dogs Evaluate Threatening Facial Expressions by Their Biological Validity – Evidence from Gazing Patterns
[2] Can Animals Be Humiliated? | Psychology Today

Featured image creditNIDHIN MUNDACKAL/ unsplash

犬がヤキモチを焼いている時にみせる6つのサイン | the WOOF イヌメディア

犬にも人間の嫉妬に似た感情はあります。ただしこれは、リソースガーディングのような本能に基づいている可能性があり、人間の抱く複雑な感情とは同じかどうかはわかっていません。 ヒトやモノに感情的に結びついた犬は、それを取られたり失ったりすることを嫌がります。そしてその気持ちを行動で示そうとします。”嫉妬”にかられた犬はどんな行動をするのでしょうか?そしてそれを止めるためには何をすれば良いのでしょう。

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