愛するペットを失うことは、飼い主にはとても辛い経験です。人によっては近しい人間の死よりも、大きな打撃を受けることがあります。

ペットの死は、飼い主だけでなく同居する他の動物にも影響を与えます。犬と猫は、同居動物の死に際して、人が悲しむような行動をすることが報告されています。

犬も猫も仲間の死によって行動が変わる

2016年11月に発表された調査報告[1]によれば、同居動物の死亡を経験した犬猫には、行動の変化が見られます。

調査対象はオーストラリアとニュージーランドに住むペットの飼い主。配布した質問票について、279人から有効回答がありました。

分析の結果、残されたペット動物には、愛情行動とテリトリー行動の2タイプの行動変化が見られたそうです。飼い主の注意を喚起しようとするなどの愛情行動を取ったのは、犬で74％、猫で78％でした。一方、亡くなったペットの好きな場所で長い時間を費やすなどのテリトリー行動を取ったのは、犬で60％、猫で63％でした。

また、食事や睡眠に関する変化も報告されました。食事の量を減らした犬は全体の35％、食べる速さが遅くなった犬は31％で、睡眠時間の増加が見られた犬は34％にのぼりました。猫では発生の頻度が上がるケース（43％）も報告されています。

別の調査では、動物たちの嘆きの期間は概ね2週間ほど。完全に回復するには6ヶ月ほどかかると言われています。ペットたちが仲間の死を嘆くのかは定かではありませんが、その喪失から影響を受けるのは間違いがないようです。

環境変化に適応できない犬は行動が変化する

残されたペットの行動が変化するのは、同居ペットの死によって生じた変化に対応できないからだと考えられています。現在のところ犬の認知能力では、生や死や永続性と行った概念を理解することはできないと考えられており、同居ペットの永続的な不在を理解している訳ではないという考えが一般的です。

仲間の死をきっかけとした行動変化は悲しみによるというより、飼い主をひっくるめた彼らの周辺環境の変化に適応できないことに由来するものと考えられることが多いのです。

同居ペットの不在は、残された動物に変化への対応を求めます。1匹がいなくなれば、毎日のルーティンにも家庭内の力関係も変化します。兄弟間の仲介役を買っていた年長の犬がいなくなれば、1匹は乱暴になり1匹は臆病になるなどの勢力変化も怒るかもしれません。残された犬が1匹なら、なれない一人での留守番に戸惑うこともあるでしょう。

また犬は、人間の感情の変化に非常に敏感です。飼い主である私たちが嘆き悲しむことがあれば、彼らも元気を無くしてしまうでしょう。

”悲しむ犬”をサポートするヒント

複数ペットの飼い主さんは、喪失の痛みをグッと堪え、残されたペットの変化への適応をサポートしなければなりません。失なったペットの分も合わせて、たっぷりの愛情を注いであげましょう。

変化への適応をサポートするヒントには、以下のものがあります。

望ましくない行動を無視し、良い行動を褒める：犬が嘆き悲しむ様子を見せたら、できるだけ構わないようにしましょう。「うなだれていると構ってくれる」のではなく「元気にしていると構ってくれる」ことを知ってもらいましょう

• 慣れ親しんだルーティンを変えない：亡くなったペットがいた時と変わらぬルーティンを維持しましょう
• たっぷりの愛情と運動：変化によって不安を感じる犬も少なくはありません。彼らの心を刺激するような遊びや運動をして、これまで以上に愛情をかけ注目をしてあげましょう
• 過保護にしすぎない：たっぷりの愛情をかけるのは良いけれど、過保護になっていつもベッタリということのないようにしましょう。同居ペットの喪失という変化より、飼い主の変化に反応して、問題行動を引き出してしまうかもしれません。「これまでと変わらない」ことがとても大切です
• 健康問題に注意する：残されたペットが食欲不振や不眠などに悩まされていたら、同居ペット喪失の嘆き行動ではなく体調不良かもしれません。身体の調子が良くない犬は、”うつ状態”と解釈される元気のない状態になることがあります

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Owners’ Perceptions of Their Animal’s Behavioural Response to the Loss of an Animal Companion.
[2] 10 Tips for Helping Your Grieving Pet | Psychology Today

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