犬の体年齢を理解するのに役立つのが、「人間の年齢に換算する」という方法です。このときよく使われるのが、”犬の年齢に7を乗じたものが人間に換算した年齢”という方法です。

この方法に即すると、18歳の犬は126歳。人間だとギネス世界記録のタイトルを複数年保持できそうな超ご長寿ですが、犬の世界なら18歳や19歳まで生きる犬は少なくはありません。この方法は、ざっくりとイメージを共有するには便利なものですが、健康管理のための”本当の”年齢を知る意味では、ちょっとざっくりしすぎています。

”人間の1年は犬の7年に該当する”は忘れよう

いわゆる”7年ルール”は、「人間の寿命は70歳で、犬の寿命は10歳」というかつての統計に基づくと言われるものです。

実際の犬の年はそれほど単純なものではありません。また、生活環境の変化や医療の進歩などにより、人間の寿命も犬の寿命も延びています。”7年ルール”は、平均的な高齢犬のイメージを捉えるためには良いかもしれませんが、個体を考えた時には明らかに間違っている側面があることは覚えておきましょう。1歳の犬は7歳の子供より遥かに大人ですし、犬種や体のサイズによっても寿命は全く異なってきます。

アメリカ獣医師会（AMVA）は「一般的に考え方とは異なり、犬は毎年7歳ずつ年をとる訳ではない」とコメントしています。

AVMAによるガイドライン

AVMAによる、犬の年齢についての一般的なガイドラインは以下のとおりです。

• 1歳の中型犬は15歳の人間に相当する
• 2年目は人間の9歳に相当する（中型犬の2歳は24歳に相当）
• それ以降は、犬の1年はおよそ5年間に相当する

犬の年齢の換算は、身体のサイズによって異なります。大型犬は小型犬に比べて寿命が短く、大型犬の2倍ほど長生きする小型犬もいます。グレート・デーン・クラブ・オブ・アメリカによれば、グレート・デーンの平均寿命は平均7〜10年であり、小型犬は14〜15歳とも言われています。

AVMAは、シニアとみなされる年齢について「一般的に小型犬で7歳、大型犬で5〜6歳」としています。シニア期に入った犬は、加齢による問題が増えてくるようになります。

小型犬はなぜ大型犬に比べて寿命が長いのか

「小型犬はなぜ大型犬に比べて長生きか？」という問題は、長らく科学者を困惑させてきました。犬の世界では大きくなればなるほど短命ですが、動物全体で見てみるとゴリラやゾウ、クジラなどの大型動物の方がネズミなどの小型動物に比べて長生きの傾向があります。

大型犬の平均寿命に大きな影響を与えているのは癌だという専門家がいます。ジョージア大学のPromislow教授は大型犬の癌の罹患率は小型犬に比べて高いため、これが平均寿命を引き下げる要因になっていると言います[2]。ケッティンゲン大学のクラウス博士は、大型犬は成犬になってからの成長が早いために年齢関連疾患に早く陥り、また進行も早い（癌であれば細胞増殖が早い）ことが要因ではないかと考えているそうです。また、科学者らが体重4.4ポンド（約2kg）ごとに平均寿命は1ヶ月短縮されるという結論に達しているともコメントしています[1]。

他の動物では見られない”犬ならでは’の成長傾向は他にもあります。寿命が長い小型犬は早く成熟する一方、大型犬は成熟に時間がかかり、その後は加速度的に成長するというものです。小型犬の1歳は、カラダ年齢で言えば大型犬より”年上”ですが、5歳になるとこれが逆転するという現象が起こります。サイズの多様性が大きい犬ならではの現象で、他の動物ではこうしたことは起こらないということです。

ヒトイヌ年齢換算表

上の表は、AKCによる年齢換算表を元にthe WOOFが作成したものです。

いつまでも幼い顔つきをした愛犬が自分の年齢を超えていくのは、驚きと同時に悲しさを感じさせるものです。しかし、年齢を重ねた人が魅力的なのと同様に、年齢を重ねた犬も美しく魅力的です。年齢に合った適切なお世話をすることで、老化を遅らせ健康寿命を延ばす事は十分に可能です。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] How to Calculate Dog Years To Human Years – American Kennel Club
[2] Dog years: How do you calculate a dog’s true age? – BBC News
[3] Senior Pets | AVMA

Featured image credit max guitare / Flickr