家族として迎える犬を選ぶためには、容姿の可愛らしさや「好き!」という直感だけでなく、犬の気質や訓練の必要性、生活環境やライフスタイルに合っているか否かといった様々なポイントを検討する必要があります。
一度は愛した犬を不幸にすることのないように、犬についてよく知って、十分に慎重に検討を重ねてから、家族となる犬を選びましょう。
1. 犬のサイズ
犬のサイズは、非常にバラエティに富んでいます。それぞれに良さもありますが、よろしくない点もあります。大型犬はおおむね穏やかで暖かく、何時間でも活動できる丈夫さを有していますが、よく食べてよく出し、力が強く旅行も大変。トレーニングは必須ですから、家計に優しくはありません。心を奪うパワーも巨大ですが、家の中を占有するスペースも、家計を圧迫する力も、とにかく大型です。
一方の小型犬は、移動のグルーミングも楽々です。つぶらな瞳に可愛い仕草で、私たちを魅了します。しかし小さいだけに彼らは繊細で脆弱。かわいらしい外貌からは想像できないほどにタフな性格で、訓練が必須になるコもいます。
犬の大きさが大きくなればなるほど、食べ物や用品、医療など犬にかかる費用も高額になります(また、修繕費も増大します)。ご自身や家族の好みに加え、どのくらいの費用を犬にかけられるのかも大きなポイントです。特に大型犬を検討する場合は、何にいくら費用がかかるのか、シミュレーションをしてから決めた方が良いでしょう。
2. 居住スペース
「大きな犬は広いスペースを必要とし、小さな犬は狭いところでもやっていける」というイメージは、おおむね間違いではありません。しかし、大きな犬でも穏やかで、外での運動が十分であれば集合住宅でもやっていける犬もいれば、小さい犬の中でも活発な犬や声を出すタイプの犬(狩猟犬で声で知らせる仕事をしていた犬など)など集合住宅には不向きの犬もいます。犬の来歴を含めて犬種の特性を調べ、専門のブリーダーなどに相談をして決めましょう。
3. 現在の家族と将来の家族像
家族がどう変わっていくのか、未来も含めて考えましょう。現在の家族構成はどうか、将来家族が増えるのか。将来増える家族が赤ちゃんならば、犬種選びの「小さな子供が苦手ではない犬」を上位にいれた方が良いでしょう。犬の中には、どんな人間でもOKというおおらかなコもいれば、小さな子供は苦手という繊細なコもいます。一方で、高齢者が中心の家庭なら、あまり活発すぎない犬を選んだ方が無難です。お互いにストレスをためることになってしまいます。
また、家族の健康状態についても事前に確認しておきましょう。一緒に暮らすだけで病気にする犬種はありませんが、免疫系が弱っている時は犬が病気を悪化させることは十分にあり得ます。もっとも配慮すべきはアレルギーで、この場合は抜け毛が少ないなどの”アレルギーを起こしにくい犬種(Hypoallergenic dog)”を選ぶなどの選択肢があります。
4. 犬の品種
犬は、純血種と交配種(雑種、ミックス)の2つのいずれかに分類されます。両者の違いは、同じ系統だと認められた2匹の犬の子であるか否かです。ただし、来歴のわからない犬が雑種とされることもあります。
純血種の場合、形態や特徴を定めた犬種標準(スタンダード)があります。繁殖の歴史などから行動様式や気質、健康状態なども共通することが多いです。純血種を検討するのであれば、その品種について徹底的に調べましょう。罹患の可能性がある病気や生活スタイルに合致するかなど、ある程度の将来の予想をつけることが可能です。
交配種は、犬という種の中での品種間交配により誕生した犬です。仔の特徴は両品種の中間的になることも、両方の特徴をもつこともあるようです。親の犬種の特徴を調べることは良いことではありますが、成犬になった時の姿や健康状態を正確に知ることはできません。ただ、ミックスの多くは健康上の問題が少なく性格の良いコが多いとも言われています。ミックス犬は個性あり、サプライズありの素晴らしい犬たち。ぜひとも検討に加えたい犬たちです。
5. 犬の気質
人間の子供と同じように、犬も育て方で”性格”は変わります。しかし、品種改良の歴史の中で培われてきた気質や特性は、簡単には変えられません。飼い主からの愛情と注目を集めたい犬もいれば、あからさまな愛情表現を好まない犬もいます。純血種を選ぶときには、その犬種がどんな気質をもつ犬であるか、しっかり調べた上で決めましょう。
6. 活動レベルと運動の必要性
犬は犬種が何であるかに関わらず、毎日の運動を必要とします。ただし、必要とされる運動の量や質は、犬種によって異なります。ジャーマン・シェパードなどの働き手として活躍してきた歴史をもつ犬は、単に身体を動かすだけでなく、頭を使うような”仕事”を必要としますし、グレイハウンドなどの走り屋は、全力疾走のようなハードな走りが必要です。一方の愛玩犬チームは毎日の一定時間のカジュアルなお散歩でも十分に満足してくれるでしょう。
どの程度の運動を必要とするのかは、犬を選ぶ上で非常に重要なポイントです。活動量が十分でなく、退屈やストレスを感じた犬は、破壊的になったり吠えたりの問題行動をしばしば起こします。非常に残念なことに、犬の問題行動を回避できなかったため、放置されたり安楽死させられたりすることは少なくありません。あなた自身があまり運動を好まないのなら、一緒にお散歩できるゆったりした犬を選択した方がうまくいきます。
7. 被毛の質や抜け毛
毛の問題は、犬を選ぶ上でかなり重要です。アレルギーの問題、掃除の問題、そしてグルーミングの問題に関わるからです。
アレルギー傾向がある家族がいるのなら、いわゆる”アレルギーを起こしにくい犬種(Hypoallergenic dog)”を検討の上位にあげると良いでしょう。プードル、マルチーズ、ビションフリーゼなどは、犬アレルギーの症状を起こしにくいと言われます。ただし、「絶対にアレルギー症状を起こさない犬」は存在しません。
家を完璧に綺麗に保ちたい人にとっては、抜け毛の多い犬はあまりお勧めできません。年に2回の換毛期があるダブルコートの犬を検討するなら、併せて優秀な掃除グッズもそろえたほうが良いでしょう。注意しなければならないのは、ダブルコートの短毛ワンコ。長毛(ロングヘア)であれば見つけやすく掃除もしやすいけれど、短毛だと家具の隙間に入り込み、掃除が難しくなってしまいます。
カットを必要とする犬かどうかも、検討の上では大切です。犬の中にはトイプードルやマルチーズのように、どこまでも限りなく伸び続ける毛をもつ犬もいます。飼い主さんの好みによっても変わって来ますが、1〜2ヶ月に1回は全身のカットが必要です。例えばトイプードルのカット代はかなり安いところでも5千円。1ヶ月に1回カットするなら年間6万円かかります。また健康上の理由から、こまめにブラッシングして毛を整えておくことが推奨されるます。日常的にケアの時間が必要です。
8. 犬の年齢
犬を初めて飼う人は「子犬の方が育てやすい」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、成犬を迎え入れた方が楽だったということは少なくありません。
成犬を迎える良さは、すでに気質や行動特性が固まって安定していることです。犬の現在の姿や行動があなたの現在の生活スタイルに合致するかを予想しましょう。これが大きく外れることはないところが、成犬を迎える上での良い点です。
一方の子犬は、もう少し想像を巡らせなければなりません。成犬になった時にどんな姿になるのか、どんな気質でどれほどのエネルギーレベルを備えるのかは、正確にはわかりません。また子犬は、特に最初の6ヶ月間の訓練とケアが重要です。可能な限りの時間と労力を注ぎ込んで、犬育てをしなければならないのです。
シニア犬は、エネルギーレベルが低いので、ゆったりと穏やかな生活を求めている方にぴったりです。ただし、難点も多くあります。健康上の問題を抱えることが多く、お世話の必要性も出費の可能性も高いです。最後までしっかりと責任をとる覚悟があるのなら、ぜひ保護施設などを訪ねてみてください。優しく温かなシニア犬が、あなたが来るのを待っています。
9. 先住犬の存在
すでに犬家族のいるご家庭なら、先住犬の意見を聞くことをお忘れなく。「犬同士だから仲良くできる」「慣れれば楽しいはず」という予想が覆されて、苦労を背負った家族の話はあとを絶ちません。2匹目以降を迎えいれるときは、試験的なお泊まりをするなど、先住犬との相性を確認する機会を持ちましょう。
犬が複数いれば、労力も2倍かかると考えましょう。犬の相性が良い場合でも、散歩や食事、運動や訓練などは別にすべき場合もありますし、相性が悪い場合は全て別ということもありえます。2匹の飼育に十分なスペースがあるか、時間的余裕があるか、そして金銭的余裕があるかをじっくり検討しましょう。
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子犬が我が家にやってくる!心構えとはじめの数日を乗り越えるためにすべき7つのこと | the WOOF イヌメディア
Happiness is a warm puppy. 幸せというのは、あたたかい子犬のことである これは、スヌーピーを描いたことで有名なチャールズ・M・シュルツの名言です。子犬を迎えるのは、まさに幸せを迎えることと同じといっても過言ではありません。