犬の需要と寿命の関係〜チョコレート色のラブラドールの寿命は10%短い(研究)

サイエンス・リサーチ
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最近発表された研究によると、チョコレート色のラブラドールのレトリーバーは、黒や黄の同犬種と比べて健康上の問題が起こりやすく、若くして死ぬ可能性が高いそうです。 研究者はこの原因を、需要によって引き起こされる遺伝的ボトルネックによるものだと説明しています。

チョコラブの寿命は10.7年、黒と黄色は12.1年

シドニー大学の研究者による最新の研究によれば、チョコレート色のラブラドール・レトリバーは、黒または黄のラブに比べて寿命が10%短く、耳の感染症や皮膚疾患、関節の病気など健康上の問題を起こしがちです。

研究は、VetCompassプログラム(イギリスの患畜犬データベース)の患畜記録の分析により行われました。研究者らは33,320の母集団から2,074を無作為抽出し、健康上の問題と死亡率が評価しました。なお、対象犬の被毛の色は、44.6%が黒、27.8%が黄色、23.8%がチョコレート色でした。

分析からわかったことは、以下のとおりです;

  • 平均寿命は、被毛の色により違いがあった。黒と黄色のラブラドールが12.1年、チョコレート色では10.7年
  • チョコレート色のラブラドールは、黒や黄色の同犬種に比べ、耳の炎症の罹患率が2倍高く、何らかの種類の皮膚炎に罹患する可能性が4倍高い
  • チョコラブはホットスポット(皮膚の炎症)を起こす確率が他に比べて2倍高い
  • 死亡原因は被毛の色に関わらず、筋骨格系疾患および癌が最も一般的
  • この品種の一般的な問題は、耳および関節の状態、および肥満にあった
  • この品種の8.8%が過体重または肥満(VetCompassデータベースに登録されている犬種の中で最も高い割合)

選択的育種が遺伝的な帰結をもたらした?

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image by Ingo Di Bella / Flickr

本研究の目的は、ラブラドール間の違いを示すことではなく、一般母集団を対象に死亡率や疾患についてを説明するところにありました。それだけに被毛の色による違いがみえたことは、研究者にとっても驚きだったそうです。

研究を率いたシドニー大学のPaul McGreevy教授はこう述べています。「色に関連する傾向には驚かされました。これまでに(被毛の色で種類がわかれる)パグやキャバリア・キングチャールズ・スパニエルではこういった結果はみられませんでした」

ラブラドールについて、被毛の色による死亡率や疾患状況に違いがみられるのはなぜか。McGreevy教授は、色の違いを決定する遺伝子が悪さをしているわけではなく、遺伝子プールの範囲が狭いことが原因ではないかと推測します。

チョコレート色のラブラドールを作出するには、両親犬がチョコレートを発色させる遺伝子を持っていなければなりません。このため 、遺伝子プールの範囲は狭くなりがちで(多様性が失われた状態)、遺伝的ボトルネック(遺伝子頻度が元とは異なるが均一性の高い集団ができること)がもたらされやすくなるのです。こうした遺伝子プールが狭い状態が、耳や皮膚の感染に関与する遺伝子を引き継ぐ原因になっているというのです

”理想的”とされるチョコレート色を生み出すことはとりわけ難しく、交配に見合う血統を追求することは非常に困難です。人気のチョコレート色の犬を生み出すために、「ブリーダーは、病気の傾向がみられる系統からも繁殖するよう動機付けられるかもしれない」とMcGreevy教授は述べています。

ラブラドール・レトリーバーが品種として認められた1800年代半ばには、黒が好ましい色とされており、黄色またはチョコレートは認められていませんでした。チョコレート色が認められ、一般にペットとして受け入れられはじめたのは1960年代になってからですから、現在の人気を確立するまでに、それほど長い時間は経過していません。

急速な人気と人々の需要が、過剰な繁殖を引き起こし、病気になりやすい犬を生み出しているのではないか。そうした見方もされているようです。

すべてのチョコラブにこの傾向あるかは不明

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image by Wade Austin Ellis / unsplash

ラブラドール人気の高いオーストラリアで、イギリスのデータを使って行われたこの研究は、とりわけチョコラブの飼い主たちに衝撃をもって迎えられています。

ただ、この研究はすべてのチョコラブが早死にすることを意味するものではないと、McGreevy教授は指摘します。研究の対象がイギリスで治療を受けたラブラドールに限定されていることに、そして病気治療を受けた犬に限られているからです。

たとえば他の地域に住む犬(血統が異なる犬)を対象にしたり、病気治療を受けていない犬を含めれば、他の結果が出ることも考えられます。もし他の地域に住む犬で別の結果がでたならば、本研究は特定の繁殖系統の過剰使用を意味するものといえるでしょう。

犬全体をみると、ラブラドール・レトリバーは他の同サイズの犬と比べて極端に寿命が短い品種ではないことを忘れてはなりません。

研究から学ぶべきは、犬の健康に配慮して交配する良質なブリーダーを選ぶこと、そして犬種の潜在的な健康問題を知り対策することがとても大切だということではないでしょうか。このことはラブラドドールに限らず、全ての犬について(全ての飼い主について)言えることです。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Paul D. McGreevy, Bethany J. Wilson, Caroline S. Mansfield, Dave C. Brodbelt, David B. Church, Navneet Dhand, Ricardo J. Soares Magalhães, Dan G. O’Neill. Labrador retrievers under primary veterinary care in the UK: demography, mortality and disorders. Canine Genetics and Epidemiology, 2018; 5 (1) DOI: 10.1186/s40575-018-0064-x
[2] NEWStat | Study: Coat color could mean reduced longevity, increased health risks in some Labrador retrievers

Featured image creditNick Weinrauch/ Flickr

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