おデブか否かは遺伝子が決める〜ラブラドールが食いしん坊なのには理由があった

サイエンス・リサーチ
この記事をシェアする

太りやすい犬種として知られるラブラドール・レトリバー。どうやら彼らが食いしん坊なのは、遺伝子の変異が関係しているようなのです。

ケンブリッジ大学の研究者はラブラドール・レトリバーを対象にした調査を行い、彼らの肥満及び食欲が遺伝子の変異と関わりを持っていることを明らかにしました。

ぽっちゃり犬の代表選手、ラブラドール

719 1

ごはん、まだ〜? image by Christopher Penn / Flickr

ラブラドール・レトリバーといえば、世界で一番愛されている犬として有名。 犬種別犬籍登録頭数について、日本では17位[1]とそれほど高い順位ではありませんが、イギリスやアメリカなどでは常にトップの座に輝く大人気犬種です。愛嬌のある明るい性格や、賢くてしつけのしやすいところが人気の理由のようです。

良いところだらけのラブラドール。唯一、欠点と呼んでも良いところは、”太りやすい”という点です。調査によれば、米国在住ラブラドールの約59%は肥満なのだとか。

え〜!ぽっちゃりワンコだって可愛いじゃない!と言いたいお気持ち、よくわかります。愛するワンコの”タルタル”を見ると幸せになっちゃう気持ちもわかります。しかし、人間の肥満が病気を招くように、犬の肥満だって健康の阻害要因であり命を縮める要因なのです。心臓病、糖尿病、がんなど、命を脅かすような病気の原因になることだってありますし、足腰にかかる負担から怪我や痛みの原因になることだってあるのです。犬の肥満は、だから太らせてはダメ。ダメなのですが、それでも太ってしまうのがラブラドールの悲しいところ…。

どうして食餌制限をしているのに太ってしまうの!とお嘆きの飼い主さん。もしかしたらそれは、遺伝子変異のせいなのかもしれません。太ったラブラドールには、満腹感の脳への伝達を阻害する変異した遺伝子を有する個体が多いことが、今回の調査でわかりました。

この研究の成果は、論文として発表されています。

食いしん坊すぎるラブラドールの謎

719 2

ごはん、今日、もらってないよ〜 image by dreambird / Flickr

研究を行ったのは、ケンブリッジ大学の研究機関(the Wellcome Trust-Medical Research Council Institute of Metabolic Science)。研究者たちは、英国在住のラブラドール・レトリバー310匹(飼い犬及び介助犬)をリクルートし、調査を行いました。

「(ラブラドール)だけが肥満になりやすい犬種というわけではありませんが、彼らが”食欲に支配された犬”であることは有名です」と語るのは、論文の筆頭著者であるラファン氏(Eleanor Raffan)。太りやすい犬なら他にもいるけれど、食欲が異常なまでに旺盛なのはやっぱりラブラドール。なぜ?なぜに食欲がそんなに旺盛なの?という謎を、明らかにしようとしたというわけです。

調査は3方向から行われました。獣医師は犬の体重測定を行い、身体のコンディションを数値で評価します。一方、研究者は3つの肥満に関連すると想定される遺伝子について調査し、飼い主たちは、食欲や犬たちの食に対する態度について質問票に回答するという形です。

これらの調査の結果、ラファン氏ら研究者たちは、肥満犬はPOMC遺伝子に変異(欠失)が多く見られることを発見しました。変異したPOMC遺伝子を有する犬は、食に対する欲求が極めて高いこともわかりました。

POMC遺伝子の変異で満腹感が感じられない

719 5

もうそろそろ、ごはんじゃな〜い? image by Bill Selak / Flickr

POMC(プロオピオメラノコルチン)が変異すると、食欲のスイッチを切る機能が壊れてしまうのだと言います。脳が満腹だと感じるのを阻害するのだそうです。

この結果を受けて、さらに411匹(38犬種)についても調査を行ったところ、調査対象のうち約1/4(23%)のラブラドールが、1つの変異した遺伝子を持っていることがわかりました。また、POMC遺伝子に変異が見られたのはフラット・コーテッド・レトリバーのみだということもわかっています。遺伝子の変異が複数あると、食への情熱はさらに燃え上り、肥満になりやすくなるのだとか。この特徴をもつフラット・コーテッドも体格が良いコが多く、食欲も旺盛だったそうです。ちなみに、変異した遺伝子を持つ犬たち(ラブラドールとフラット・コーテッド)は、平均して1,9kgほど体重が重いということです。

ハングリーな犬は出世しやすい!?

719 3

ごはん、くれるなら、やりますよ! image by smerikal / Flickr

食いしん坊で残飯漁りばっかりというなら困ったものですが、一方で食いしん坊は仕事ができるという面もあります。おいしいもの欲しさに、仕事、トレーニングに精を出すという側面があるのです。

そのことは、介助犬には変異した遺伝子を持つ犬が多いということに現れています。介助犬として働くラブラドール81匹のうち76%がPOMC遺伝子に欠失が見られたそうなのです。ラファン氏は「これには驚きました。食欲が旺盛だと介助犬育成プログラムに合格しやすいと言えるかもしれません。(育成プログラムは)昔からフードを使ったトレーニングを行いますから」とコメントしています

出来る犬になってくれるのは嬉しいけれど、やっぱり肥満になるのは困りもの。一方で、お腹すいた〜とひっきりなしに食べ物をせがまれるのも、これまた困りものですよね。

食いしん坊ラブに出来ること。まずはバランスのとれたドッグフードを与えることでしょうか。人間の食べ物をおすそ分けするのは控えましょう。与えるならば、獣医師さんに相談の上、カロリー低めのお野菜にするのも選択肢の一つ。そして、たくさんの”仕事”を与えること。食いしん坊ワンコは優秀ワンコ。フードをチラつかせてトレーニングに精を出し、競技会やイベントなどで活躍するという道もあるのです。

ワンコたちには健康で長生きしてもらいたいもの。ラブラドールにはそうした”特別なコ”もいるんだ〜ってことを頭に入れて、今以上に可愛がってあげてください。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] 一般社団法人 ジャパンケネルクラブ(JKC) – 2015年(1月~12月)
[2] Genetic variant may help explain why Labradors are prone to obesity | University of Cambridge
[3] Raffan, E., Dennis, R. J., O’Donovan, C. J., Becker, J. M., Scott, R. A., Smith, S. P., … & Summers, K. M. (2016). A Deletion in the Canine POMC Gene Is Associated with Weight and Appetite in Obesity-Prone Labrador Retriever Dogs. Cell Metabolism, 23(5), 893-900.
[4] Why Labrador retrievers are more interested in food than other breeds — ScienceDaily

Featured image from Jaromir Chalabala / Shutterstock

今日のあなた必要なのはこのラブラドールです。本当です【動画】

「明日から会社か〜。行きたくな〜い」とか、「課題進んでない。お腹痛くなってきた」とか、「食べ過ぎた。やる気しね〜」とか、いろいろ憂鬱な皆さん、こんにちは。 今日のあなたに必要なのは、こちらのラブラドール動画です。登場するのは、イエロー・ラブ、すなわちイエローの毛色を持つラブラドール・レトリバーのステラちゃん(Stella)。

the WOOF イヌメディア > すべての記事 > イヌを知る > サイエンス・リサーチ > おデブか否かは遺伝子が決める〜ラブラドールが食いしん坊なのには理由があった

暮らしに役立つイヌ情報が満載の「theWOOFニュースレター」を今すぐ無料購読しよう!

もっと見る
ページトップへ