イギリスとブラジルの動物行動科学者は、大きな音と犬の痛みとの関係を調査し、筋骨格痛を伴う犬の方が騒音に対する感受性が高いことを発見しました。
研究者らは、「大声または突然の騒音に恐怖や不安を示す犬は、獣医師に定期的に痛みの評価を受けるべき」としています。
論文は、Journal of Frontiers in Veterinary Scienceに掲載されています。
研究を行ったのは、ブラジルとイギリスの動物行動学者ら。ヒトでは、痛みがある状態と恐怖に関連した回避行動に関連があることがわかっていますが、犬については十分な研究がありません。大きな音に敏感な犬と疼痛の間にも関係がある可能性もありますが、これまでにしっかりと調査されていなかったのです。
研究者らは、騒音によって犬が緊張すると隠れていた痛みが顕在化したり、すでに炎症を起こしている筋肉や関節に余分なストレスをかけることで痛みが悪化したりする可能性があると考えました。そして大声や騒音が痛みと関連づけられるようになり、特定の場所や状況を回避する行動につながるのではないかとも考えました。
主任研究員のAna Luisa Lopes Fagundesは、次のように述べています。「この研究の目的は、筋肉や関節に痛みがある場合とない場合の一般的な騒音感受性の犬の症状の兆候を調べることでした。慢性的な痛みがある犬は、騒音から受ける影響がまったく異なるものになると考えました。音にギョっとすることが筋肉を緊張させ、結果として騒音に伴い痛みを感じるようになるのかもしれません」
研究者らは音への感受性が高い20匹の犬を対象に、臨床記録などを分析・評価して、痛みと騒音の関係を調べました。
20匹の犬は、すでに筋骨格痛と診断されていた10匹(臨床例)、および診断されていない10匹(対照例)の2つのグループに分けられました。両グループに属する犬は、年齢および去勢の状態、品種などが類似している犬が選ばれたそうです。
雷雨、自動車の発進音、飛行機、銃声、バイク、花火などの騒音に直面した犬の様子から、次のことがわかりました。
- どちらのグループの犬も騒音への感受性は高い点に変わりはなく、震えや物陰に隠れようとするなどの行動がみられた
- すでに痛みがあると診断された臨床例の犬は、騒音を経験した場所に避けようとする傾向が強くみられた
- 臨床例の犬は、他の犬を避ける傾向もみられた
- 大きな音への敏感さ(Noise Sensitivity)がみられるようになる時期は、臨床例は対照例に比べて平均して4年遅かった
- 臨床例の犬では、疼痛治療および行動習性により、騒音に対する行動の改善を示した
この結果を受けFagundesは次のようにコメントしています。「これらの結果は、年齢を重ねてから問題行動があらわれた場合はいつでも、疼痛関連を含む医学的問題を注意深く評価しなければならないという主張と一致します」
いずれに研究についても同じことが言えますが、一つの結果がすべての犬に当てはまる訳ではありません。騒音に対する不安や恐怖は、より深い行動問題の兆候かもしれません。いずれの場合においても、獣医師に相談することが最善の対応であることに変わりはなく、そのうえで行動訓練なり治療なりの次のステップに進むようにすべきです。
一方で、すでに痛みがあることがわかっている場合は、できるだけ大きな音にさらされないように配慮してあげると良いのかもしれません。静かな環境の方がゆっくり休めるというのは、疑いの余地はありませんものね。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Lopes Fagundes, A. L., Hewison, L., McPeake, K. J., Zulch, H., & Mills, D. S. (2018). Noise sensitivities in Dogs: An exploration of signs in Dogs with and without Musculoskeletal Pain Using Qualitative content Analysis. Frontiers in Veterinary Science, 5, 17.
[2] Dogs with noise sensitivity should be routinely assessed for pain by vets
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