わかってますよ!あなたのお顔〜人間の顔を見たとき、犬の脳はどう働くか(研究)

サイエンス・リサーチ
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犬を叱りつける時にしかめっ面をしてみたり、上手にお散歩できている時にはニッコリと笑いかけてみたり。声だけでなく表情でも愛犬に気持ちを伝えようする飼い主さんは、きっとたくさんいらっしゃいますよね。そして「このコ、私の顔とか表情って、わかっているのかなぁ」と疑問を持つ方も、多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな方々に朗報です!人間の顔を見たときの犬たちの脳は、人間の脳が行う情報処理と似た複雑な処理が行なわれているようだという調査結果が発表されました。ということは、もしかしたら犬たちは、私たちが期待しているように表情をも読み取ることができるのかもしれないのです。

顔の認識は”高度に洗練された過程”

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image by © 2016 Cuaya et al. / PLOS ONE

調査を行ったのはメキシコ国立自治大学(Instituto de Neurobiología, Universidad Nacional Autónoma de México, Querétaro, México)の研究者たち。犬たちの協力を得て、彼らの脳の活動をfMRIを使って視覚化し、論文として発表しました[1]

顔の認識には、すごく高度な処理過程が必要だってご存知でした?『心理学辞典』(1999年、中島義明ら)によれば、顔認識は、顔という共通した基本構造を持つ非常によく似たパターンについて微妙な差異を見分け、しかも瞬時に同定する行動に洗練された過程なのだそう。だから、この過程には他の視覚パターンの認識と異なる特殊な機構が関与すると考えられているのです。

例えば大脳側頭葉に顔のパターンに反応する細胞が存在することや、脳の損傷によって顔の認識にのみ障害を受ける”相貌失認”の臨床例があるというのが、この”特殊な機構”の存在を裏付けていると言われてます。

ということは、犬の脳にもそうした”特殊な機構”があれば、その人の顔を特定し表情の違いを読み取れるると言えそうですよね。

犬の脳も人間の顔を見るときは特別な動きをする

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image by © 2016 Cuaya et al. / PLOS ONE

調査協力犬は7頭の家庭犬。内訳はボーダー・コリー5匹、ゴールデン・レトリバーとラブラドール・レトリバーがそれぞれ1匹ずつ。fMRI(functional magnetic resonance imagingの略。MRI(核磁気共鳴も参照)を利用して、ヒトおよび動物の脳や脊髄の活動に関連した血流動態反応を視覚化する方法の一つ[2])を実施するために、拘束しなくても機械の中で起きたままでじっとしていられるよう訓練を行ったそうです。

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image by © 2016 Cuaya et al. / PLOS ONE

彼らに50枚の人間の顔の写真と、50枚の日用品の写真を見せ、その時の脳の反応を撮影しました。後頭皮質(occipital cortex)は、どちらの写真を見た時にも反応しましたが、人間の顔の写真を見た時には同時に両側側頭葉(the bilateral temporal cortex)にも反応が見られたそうです。ちなみに後頭皮質は視覚の作業に特化した部位で、何かを見たときには反応を見せる部位です。そして側頭葉は複雑な刺激を処理する働きをする部位で、ここが動くということは顔を他の物体とは別の特別な処理を必要とする対象と認識している可能性があるのです。

研究者たちはこの結果が「犬の側頭葉の一部が、解剖学的にも機能的にも人間を含む他の種と同様であることを示唆している」と語っており、犬たちが人間と同じように顔認識を行っている可能性があることを示しました。

あなたの顔=うれしい!

研究者たちはさらに、人間の顔写真を見せた時には脳の尾状核(caudate nucleus)にも反応があることを発見しています。日用品写真を見せた時は、尾状核における反応はほとんどありませんでした。尾状核とは大脳核の一つで、ドーパミンの受容体が豊富なところ[3]。「嬉しい」「楽しい」に反応するので”報酬系”なんていう呼ばれ方もしています。研究者たちは、犬たちが人間の顔と報酬とを結びつけているのかもしれない、と語っています。

ただし、これは進化の過程で発達したものかもしれず、犬たちが特別であるかはわかりません。また、人間の顔と報酬とが結びついているのかは、7匹のワンコデータのみでは結論付けられず、その点を踏まえておくことも必要です。

それでも、犬好きさんにとっては、嬉しい結果ではないでしょうか。どうせ一緒に過ごすのならば、「このコ、私のこと本当に理解してる」と思った方が楽しいもの。トレーニングやしつけも、楽しく行った方がうまくいきそうにも思います。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Cuaya LV, Hernández-Pérez R, Concha L (2016) Our Faces in the Dog’s Brain: Functional Imaging Reveals Temporal Cortex Activation during Perception of Human Faces. PLoS ONE 11(3): e0149431. doi:10.1371/journal.pone.0149431
[2] fMRI – Wikipedia
[3] 犬もヒトと同じ 『現代ビジネスブレイブ グローバルマガジン』—「ニューヨークタイムズ・セレクション」より | The New York Times | 現代ビジネス [講談社]

Featured image from Soloviova Liudmyla / Shutterstock

ウレシイ、寂しい、がっかり ・・・犬のキモチは顔の表情からわかるらしい(米研究) | the WOOF

遊んでいると笑顔を見せてくれたり、「じゃあお留守番ね」と言ったとき、「はぁ?なーに言っちゃってんの?」みたいな顔をされたり。 犬って表情豊かだなぁと思うこと、たくさんありますよね。わたしたちはどの程度、ワンコ達の表情からそのキモチを理解できるのでしょうか。

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