オーストラリアン・ナチュラルセラピーでハッピーライフ〜光子療法ってどんなもの?

健康管理
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オーストラリアで人気のあるセラピーをご紹介するこの連載。

連載の第2回目は、オーストラリアの光子療法に目を向けてみます。光子療法ってどんなもの?安全なの?こわくない?

そんなこんなを、オーストラリア在住の獣医師 ルール久枝さんにご紹介いただきますよ。

光子療法ってなに?

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いたいの、いやだぁぁ〜 © aspen rock / Shutterstock

光子療法は英語でPhotonic therapyもしくはRed light therapyと呼ばれている治療法です。ボーエンセラピーほど普及はしていませんが、オーストラリアの各地で光子療法セラピストもしくは獣医師がこの治療を実施しています。日本語だと光学療法、光学治療という言葉があてられることがあります。

光子療法とは、レーザーを用いて身体の表面に分布する経穴を刺激する治療法です。レーザーにはいろいろな種類がありますが、光子療法で使用するレーザーは660nmの波長で、赤い可視光線です。

ヒト医療では、レーザーを用いた治療が以前から行われていますが、1960年代には、レーザーを用いた経穴刺激治療法が実施されるようになりました。1990年代に、オーストラリアの獣医師であるマクラーレン氏(Dr.Brian McLaren)が動物に対する光子療法を研究し始め、レーザーの光がどのようにして組織に刺激を与えるかという修士論文を発表しています。そして同氏は光子療法用のトーチと呼ばれるレーザーを開発し、独自の光子療法診断法と治療法を確立して、馬や犬、鳥などに光子療法を実施しています。

この光子療法はオーストラリアの獣医師や動物セラピストに広まり、現在ではオーストラリア全土で光子療法セラピストが活躍しています。 

犬の経穴(ツボ)と光子療法の仕組み

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image from 和光貿易 Web

経穴は一般的にツボとも呼称され、メジャーなツボであればご存知の方も多いかと思います。

では、犬の経穴についてはいかがでしょうか?犬の経穴については、多くの書物に記されていますが、その数や部位などは、書物により若干の違いがあります。たとえば、1988年に出版された“中国獣医鍼灸学”という書物に記されている犬の経穴は76箇所ですが、2001年に出版された“Veterinary Acupuncture(獣医鍼灸学)”という本に記された犬の経穴は136箇所です。

光子治療では、どのような症状の犬に対しても、まずスタンダード経穴と呼ばれる12箇所の経穴を刺激します。その後、各病状に効果のある様々な経穴を刺激します。

経穴の解剖学的構造は完全に解明されていませんが、経穴の作用には皮膚の電気抵抗が関連していると考えられています。多くの経穴は、他の部位よりも電気抵抗が低い(電流が流れやすい)ことが明らかにされています。経穴に外的刺激が加わると、電気化学的エネルギーが皮膚のコラーゲン内に放出され、神経を伝って脳まで運ばれます。脳はこの刺激を受け、それに対する反応(治癒促進や炎症軽減など)を起こすための物質を放出します。そして身体では、治癒促進や炎症軽減などの反応が始まるのです。

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光子療法用トーチ © Hisae Rule

このように、皮膚に対する刺激は脳まで伝えられますが、すべての刺激に対して反応する必要はありません。たとえば、襟付きの服を初めて着たときに、頸に違和感を覚えることはないでしょうか?これは、頸の皮膚への刺激が脳に伝わっているためです。しかし、このタイプの服を毎日着ていれば、違和感はなくなるでしょう。これは脳がこの継続的な刺激は無視してもいいんだと判断するためなのです。 

同じように、関節炎などの痛みが2〜3週間以上続く場合には、脳はこの痛みから発せられる刺激に反応しにくくなります。そして関節炎の治癒は遅くなり、慢性化してしまうのです。

光子治療は、このような病状に対して、治癒を促進したり、炎症を抑えたりする効果を発揮します。

光子治療の利点

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※ 西オーストラリア州バッセルトンのビーチです。この区域では犬を放してもよいので、ビーチを走り回ったり泳いだりする犬をみかけます。波があまりなく、浅瀬が続いているので小型犬でも安心です © Hisae Rule

近年、日本や世界各国では動物に対する鍼灸療法が広く認識され、実施されています。

この治療法は、現代の獣医療だけでは担うことの難しい領域をカバーしてくれることがあり、補助的治療法としては有用な治療法だと思います。鍼灸治療では、鍼灸用のとても細い針を使用しますので、通常は針を刺入する際にあまり痛みを伴わないのですが、経穴の部位によっては、針を刺入する際に嫌がる犬が見受けられます。

針を使用しない経穴治療法である光子療法は、効果が得られるうえに犬も怖い思いをすることなく受けられる有用な治療法なのです。

どんな症状に効果があるの?

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また、とべたよ! © veet / Shutterstock

光子治療は、股関節炎などの関節炎、椎間板疾患などの外科的疾患の他にも、難聴や下痢、目の疾患、肝炎、膵炎、パルボウイルス感染症、腎臓疾患などの内科的疾患にも効果があるほか、攻撃性を抑えたり恐怖症を改善させたりという精神的なケアを行うこともできます。

光子療法の効果を得るためには、まずは正しい診断を受け、それに相応した経穴を治療することがとても大切です。また、光子療法だけではマネージメントすることが難しい病状もあります。その際には獣医師の指示に従い、他の治療と併用して光子療法を行うことも可能です。

※ アイキャッチの画像は、実際にルール氏が実施した光子療法;オーストラリアンケルピーとキャトルドッグとの雑種、4歳、雄。初めての治療。「治療開始後数分程度なので若干緊張気味ですが、片手で光子療法、もう片方の手でマッサージを行ったので、治療を受け入れてもらえました。この経穴はLI11というスタンダード経穴12穴のうちの一つです」(ルール久枝)


[1] Brian McLaren.The Science of Photonic therapy.Australia, Brisbane, Advanced Photonic Therapy,2011,p.2-5
[2] 竹中良二、高橋貢.中国獣医鍼灸学.文永堂出版,1988,p.204
[3] Allen M.Schoen.Veterinary Acupuncture Ancient Art to Modern Medicine.2nd ed.2001,p.19 and 127
[4] Advanced Photonic Therapy. (参照2015-5-26)

Featured image by Hisae Rule

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