犬はヒトの言葉が分かるのか?ワンコは飼い主さんのことを理解しようとしているよ

サイエンス・リサーチ
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「お散歩に行くよ!」と言ったら嬉しそうに尻尾を振ったり、叱られたらしょんぼりと落ち込んだり…。

イヌと暮らしていると「ウチの子は人間の言葉が分かる!」と思う瞬間がありますよね。ワンコたちが人間の言葉を本当に理解しているのか、その質問に答えた米国の興味深い番組をご紹介しましょう。

米国の非営利・公共放送ネットワークであるPBSの短編デジタル番組” Does My Dog Know What I’m Thinking?”では、何と1000語以上のボキャブラリーを持つボーダーコリーのチェイサーが登場します。これは人間の4歳の子供に匹敵するボキャブラリーですが、それ以上に驚かされるのがチェイサーが動詞と名詞の区別もできるということです。飼い主さんが出す「口の形をしたおもちゃを持って来い(Take lips)」「羊の人形を足で触れ(Paw Lamb)」「ABCのおもちゃを鼻でさわりなさい(Nose ABC)」の命令を完璧にこなしています。

言葉を理解? それとも声色?

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チェイサーは人間の言葉を理解しているのか、それとも声色に含まれる感情を読んでいるのか、それともその両方なのか疑問が残りますね。

英国のサセックス大学で行われた実験では、イヌを2台のスピーカーの間に置き2種類の人間の声を聴かせる実験を行いました。人間は言葉の内容を理解しようとするときには左脳を使い、声の特徴を聞き分けようとするときには右脳を使うことが知られています。犬も同じように認知をするのかを二人の研究者が実験で確かめようとしたのです。

結果、犬にとって「おいで」のような馴染みのあるコマンドをあまり抑揚つけずに聞かせると、犬は右側のスピーカーを向くこととなり、犬が左脳を使っていることがわかりました。逆に、外国語や語順を変えた犬にとって意味のない言葉を感情タップリ発したときには、左側を向く(右脳を使う)結果となりました。犬たちもわたしたちと同様に、意味をとろうとするときは左脳を、特徴をとらえようとしているときは右脳を使うことを示す結果になったといえます。犬たちがどの程度、人間の言葉を理解しているのかはわかりませんが、少なくともわたしたちの言葉に耳を傾けようとしているし、わたしたちと同じように声に込められた感情を理解しようとしている、と言うことができそうです。

馬も計算ができる?!

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Courtesy of Oskar Pfungst.

人間の言葉を理解すると考えられ、研究の対象になったのは、ワンコだけではありません。1900年代の初め頃、計算ができると有名になった「賢いハンス」と呼ばれた馬がいました。ハンスは「2+3」と書かれたカードを見ると、5回前足を鳴らし正解を伝え、一見算数ができるように見えました。

ただ後の研究でこの馬は算数ができたわけでなく、指示を出す人の行動、例えば正解に近くなるとわずかに顔を上げる、また正解のときに息を大きく吐くなどの微細な行動をヒントに答えていたことが分かっています。

動物は言葉の意味は理解しないのかもしれません。でも、意思伝達の方法はさまざまにあることを、ハンスの事例は教えてくれます。

人の目の動きを追って理解しようとする犬たち

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人類の進化を発見したダーウィンは、著書『人及び動物の表情について』の中で”心的な能力において人間と動物のあいだに根本的な差異はない”と記しており、人間と動物が連続的に身体的、機能的な特徴を共有していると唱えています。この説にはっきりした答えは出ていませんが、2008年に行われた研究からは、イヌが人間の目の動きを追いかけて情報を読み取ろうとしている[1]ことが判明しました。人間の幼児並みのコミュニケーション能力だといいます。だからワンコは可愛いのかもしれませんね。

人間は日頃、無意識的に、相手の顔の右側の表情を見て相手の気持ちを読むことが分かっています(left gaze bias)。これは相手の顔の右側(相対している自分から見ると左側)により感情が出るためであると言われており、これが”left gaze”と表現される所以です。驚くことにワンコたちも人間の顔の右側を見て心の動きを読んでいることがわかっています[2]

ちなみに、ワンコが顔の右側を見るのは人間に対してだけで、他の犬を見るときは違うのですから、いかに純粋に人間の気持ちや言葉を知りたいと思っているかが分かります。

人間もまたイヌの気持ちがわかる

ハンガリーの大学では人間に様々な犬の声を聞かせて、怒っている声、喜んでいる声とイヌの気持ちを読む実験を行いました。イヌの声を聞いて全部の気持ちが分かるわけではありませんが、人間もまたワンコの声である程度犬の気持ちが分かることも確認されました。

大切なのは相手の言葉に耳を傾けること

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ただ相手の気持ちを理解したいという思いは、ワンコ側の一方的なものではありません。人間だって、ワンコたちの「ことば」を理解したいのです。米国の動物学者であるテンプル・グランディンは『動物感覚―アニマル・マインドを読み解く』の中でこう述べています。

人間は、今よりもじょうずに、動物に「話しかけ」て、動物の言い分を聞き分けるようになるはずだ。動物と話ができる人はできない人よりも、たいていは幸せだ

ワンコと人間。お互いにとって一番大事なことは、たとえ全てがわからなくても相手を理解しようと耳を傾けること。その姿勢がある限り、イヌも人間もお互いの一番のパートナーで居続けるのではないでしょうか?


[1] Clever Canines: Dogs Can ‘Read’ Our Communication Cues | Animal Intelligence
[2] What is Left Gaze Bias? How Does It Relate to Dogs? | Canidae Blog

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