日本一有名なヒーロー犬?!『南極物語』のタロとジロ
イヌの映画はたくさんあるけれど、一番のヒーロー犬といえば『南極物語』のタロ&ジロではないでしょうか?
今から22年前、1983年に公開された『南極物語』は、南極観測隊の犬ゾリ用に極寒の地へ連れていかれた樺太犬15頭が置き去りにされてしまう実話を基にしたストーリー。悪天候のため撤収を余儀なくされた隊員が1年後に迎えにいき、生きていたタロとジロと再会を果たす場面は、ハンカチなくしては見られません。
「どうして見捨てたのですか? なぜ犬たちを連れ帰ってくれなかったのですか」という衝撃的な映画のキャッチコピーもあってか、観客動員数は約1200万人、興行収入も当時歴代最高の60億円を記録。1997年に「もののけ姫」に破られるまでの15年間、興行成績のトップを守り続けました。
主役の樺太犬は、もともとはアイヌ民族のイヌゾリ犬や猟犬として活躍していた犬で、映画の舞台となった昭和30年代でも、北海道にわずか1000頭程しか生息していなかったという貴重なワンコ。昭和40年代までは車や機械に代わるお仕事犬として活躍しましたが、1970年代頃にはほぼ絶滅したそうです。従順で忍耐強く、すぐれた方向感覚を持つイヌとして知られていました。映画製作時にすでに希少犬種となっていたことで、映画でのタロとジロはエスキモー犬が演じたそうです [1]。
戦後の復興過程の日本を舞台に、野生味を残した荒々しい樺太犬と人間の絆、犬同士の力関係、そして何よりも人間の迎えを待って極寒の地で健気に生き延びたのが幼い兄弟犬だったという事実…。様々な要素が加わり、今でも見応えは満点。昨年83歳で亡くなった主演・高倉健の抑えた演技は素晴らしく、代表作の一つでもあります。イヌまでもたくましかった昭和の時代を振り返りながら、もう一度改めて鑑賞してみたくなる作品です。
最愛の飼い主を待つこと9年『ハチ公物語』のハチ
そして昭和を代表するワンコと言えば、新たにお披露目された銅像として上野博士との再会を果たしたハチで決まりでしょう。1987年に『ハチ公物語』として映画化され、20億円の興行収入を上げるヒットを記録しました。2007年には海を渡って、リチャード・ギアを主演に『HACHI 約束のイヌ』としてリメイクもされました。
リメイク版の舞台は米国・東海岸の街ですが、主人公は秋田犬。この映画の日系3世の監督は、日本を訪れた際に渋谷駅前に立つハチ公像の逸話を知り、自分のイヌに「ハチ」という名前を付けて可愛がっていたそう。その愛犬が亡くなったのを機に映画化を思い立ち、愛犬家の監督らしく飼い主とイヌの関係が温かく描かています。
実際のハチは、1923年(大正12年)に秋田県大館市で誕生。生後まもなく秋田犬を飼いたがっていた東京帝国大学の上野教授の元に送られます。秋田犬は大きな体と穏やかな性格が特徴で、ぶさ可愛い顔で有名になった「わさお」君も秋田犬です。ハチは上野博士が亡くなり一時浅草に預けられたときも、渋谷駅まで8キロの道を毎日通ったといい、9年間渋谷駅で博士を待ち続け、13歳でその生涯を終えました。
新しいハチ公像誕生のこの機会に、『ハチ公物語』を観てはいかがでしょう。飼い主を一途に思い続けるハチの姿に、いままで以上に泣けるかもしれませんよ。
ハリウッドのセレブ犬
個人的には、イヌが登場する映画でのお気に入りは、リーズ・ウェザースプーンが主演した『キューティ・ブロンド』と、その続編の『キューティ・ブロンド ハッピーMAX』。恋人にフラれたおバカなブロンド美女(エル)が、一念発起してハーバード大学に進学。全身ピンクで固めた典型的なLA娘の飼い犬として、同じくピンクの洋服を着て登場するのがスチームコート・チワワの「ブルーザー」です。弁護士の卵として奮闘するエルの欠かせない相棒です。
続編では、ブルーザーは準主役級の扱いで、エルが自分の結婚式にブルーザーの母親を招待しようとしたところ、実験動物にされていたことが判明。憤った主人公が、動物実験を規制する法律を作るために、立ち上がります。ブルーザーがなんとゲイ犬だったり、ドッグパークが重要な社交場として登場したりと、コミカルな中にも米国の社会が垣間見られ、普通のラブコメ以上に見応えは十分。何より愛犬のチワワを連れたスーパーポジティブな主人公を見ると、元気が湧いてきます。
大きなスクリーンで見るのも良いですが、愛犬と一緒におうちでワンコの登場する作品を鑑賞なんていうのもオツなもの。
映画を観ながら愛犬との絆を感じる・・なんていうのも、いいものですよね!