the WOOF専属ライター犬、ライチがお届けする世界の犬ニュース。今日はアメリカから、州で最初の”聴覚障害をもつK-9”となったゴーストのお話です。一度は安楽死リストに載ったピットブルはその才能を認められ、ワシントン州で麻薬探知犬として輝かしい一歩を踏み出すこととなりました。
ゴーストはかつて、安楽死の危機に直面していました。子犬時代にフロリダ州で放棄され、保護されたSwamp Haven Rescueで里親探しに邁進していましたが、彼に目を止める人がひとりもいなかったからです。
アメリカでもピットブルは、とくに保護施設では不人気犬種です。「何か問題があって施設にいるのだ」という先入観でみられることが、とても多いのです。Swamp Haven Rescueのリンジー・ケリーは、「もし彼がフワフワの白い犬だったら、はるかに良いチャンスに恵まれた」とコメントしています。
聴覚障害、高エネルギー、しかもピットブル。不人気要素を3つも持ったゴーストは、何ヶ月も誰からも見向きもされない日々を過ごしました。そしてとうとう安楽死リストに載せられてしまうのです。収容できる犬の数に限りがある以上、施設も苦渋の決断をせざるを得なかったのです。
それでもリンジーは諦めきれませんでした。ゴーストは確かに”少し問題のある”犬でしたが、賢いいい犬でもあったからです。リンジーは、「トレーニングが状況を変えてくれるかも」と考え、”問題のある犬”に専門的なトレーニングを施すワシントン州の施設、the Olympic Peninsula Humane Societyに、ゴーストの受け入れを要請します。この施設は耳の聞こえない犬のためのトレーニングプログラムを開発している特別な場所。ゴーストにぴったりの場所だったのです。
ワシントン州に落ち着いたゴーストの才能を最初に見抜いたのは、施設のSuzy Zustiak博士でした。家庭犬としてはハイパーすぎるゴーストは、きっと良いワーキング・ドッグになるとあたりをつけ、麻薬犬トレーナーであるバーバラ・ダベンポートにゴーストの能力測定を依頼したのです。
テニスボールで遊ぶゴーストをみたダベンポートは、ひと目でゴーストが訓練可能な犬であると判断します。ゴーストが際立っていた点は2つありました。「ゴーストは自分のオモチャを得ることに集中し、他のことに気をそらされることはありませんでした」「耳が聞こえない犬が典型的にもつ、恐怖反応が彼にはみられませんでした」
こうして、誰にも見向きされない子犬は、優秀な麻薬探知犬候補生となります。240時間のトレーニングプログラムの中で、手話や探索を学び、優秀な成績をおさめました。ゴーストの「聞こえない」という障がいは、仕事をするうえで少しの制限をもたらしますが、探知のために集中するうえでは利点にもなっているようです。「犬は集中力に優れていますが、私たちと同じように様々な音に注意を奪われてしまいます。ゴーストは難聴であるため、集中力をそがれることがないのです」
3歳になったゴーストは、ワシントン州矯正局のメンバーとして働いています。地域のために働く犬は、障害のある犬や「危険だ」と言われる犬であっても活躍ができることを証明し続けています。
日本でも、元保護犬のワンコたちが、新たな場所で新たな役割を受けて、活躍しています。もちろん、家庭の犬としてゆったり過ごすのが得意なワンコもいます。もし、素敵な4本脚のパートナーをお探しなら、地域の保護施設に一度足を運んでみてください。驚くほど可愛くて、驚くほど才能豊かなワンコがあなたの訪問を待っていますよ。