まっすぐかクルクルか〜遺伝子の組み合わせが巻きの強さを決めている

犬のカラダ
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サラサラとシルクのような毛も素敵ですが、クルリンと丸っこくなる巻き毛の犬も可愛らしいですよね。犬の中には”ドレッド”のように、縄状に伸びていく毛をもつ犬もいます。

こうしたユニークな毛質にも、遺伝子が影響しています。遺伝子の組み合わせによって、短毛か長毛か、ワイアーか否か、癖毛か否かが決まるのです。

今回は、クルクル癖毛やマキマキ巻き毛についてのお話です。

いわゆる癖毛カーリーヘア、癖の強さはさまざま

  • Poodle - Natalia V Guseva / Shutterstock

近年のプードル人気により巻き毛の犬はすっかり見慣れた存在となっていますが、犬種全体からすればそれほど多いわけではありません。プードルのほかには、カーリー・コーテッド・レトリーバー、チェサピーク・ベイ・レトリーバー、アイリッシュ・ウォーター・スパニエル、ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ、ラゴット・ロマニョーロ、ビション・フリーゼなどがいます。

また強い癖のため、毛が伸びるにつれて絡まりながら縄状になっていく(コードといいます)プーリーやコモンドール、そしてプードルの中にはコーデッド・プードルと呼ばれるタイプが縄状の被毛を持ちます。

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Barbet – image by Ysbrand Cosijn / Shutterstock

犬種に詳しい方はお気づきかもしれませんが、水辺で作業をするウォーター・ドッグ系の犬種に多くみられます。もともとフランス原産のバルベという犬(フランスのウォーター・ドッグ)がヨーロッパ各国のウォーター・ドッグたちの大元となっているといわれています。プードルもこのバルベを元に作出された犬種です。イタリアが原産のラゴット・ロマニョーロは現在、トリュフ探索犬として現地で活躍していますが、かつてプードルが鴨を回収する作業犬だったのと同様に、もともとは水場で鳥を回収する仕事をしていました。また、プーリーやコモンドールは牧羊犬で、外敵となるオオカミなどの攻撃から身を守るのにその被毛が役立ったといわれています。

巻き毛(カール)になるかウェーブになるか、癖の強さが個体によって異なる犬種がいます。ポルトガルのウォーター・ドッグであるポーチュギーズ・ウォーター・ドッグはこれら2種類の被毛をもちます。そこに着目し、カーリーヘアを作りだす遺伝子が探索されました。

ケラチンを作る遺伝子が癖毛に関わっている

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左がカーリーヘアタイプ、右がウェビーヘアタイプのポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ。Coat variation in the domestic dog is governed by variants in three genes. Science. 2009 Oct 2;326(5949):150-3. doi: 10.1126/science.1177808. Epub 2009 Aug 27.

カーリーヘアと関連していることが分かったのはKRT71(keratin 71)という遺伝子で、人やマウスでもこの遺伝子に変異があると巻き毛になることが知られています。KRT71はケラチンを作りだす遺伝子ファミリーの一員で、毛の成長期に毛包を形成する内根鞘という場所に特異的に発現しているタンパク質です。ケラチンは毛や爪、皮膚などを構成するタンパク質で、数多くの遺伝子がケラチン産生に関わっています。そもそも癖毛は毛包部分や毛の構造にゆがみがあるために作られ、ゆがみの強さが癖のつよさとしてあらわれてくるものです。

ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグの遺伝子比較からKRT71の変異が癖毛の原因になっていることがわかったものの、犬の巻き毛のすべてが変異したKRT71遺伝子で説明できないため、KRT71以外にも巻き毛に関与している遺伝子があるだろうと考えられています。とりわけ、縄状のコードを作るプーリーなどに関してはさらになる研究が待たれるところです。またKRT71遺伝子の遺伝形式については、現時点で不完全優性という見解が妥当ではないかと思います。

不完全優性とは完全に優性の形質でも劣性の形質でもなく、変異した遺伝子をひとつ持てばその形質があらわれ、二つ持つ場合にはより強くあらわれてくるというものです。たとえば、赤い花の色が優性、白い花の色が劣性の形質を持つ不完全優性遺伝する遺伝子があるとすると、赤赤、赤白、白白といういずれかの遺伝子の組み合わせを持つことになります。実際にあらわれてくる色は、赤赤=赤、赤白=ピンク、白白=白というようになります。カーリーヘアではどうなるかというと、癖癖、癖直、直直という組み合わせになるのですが、癖癖=巻き毛、癖直=ウェーブ、直直=直毛と考えられているのです。

カーリーとワイアー、そして毛の長さとの関係

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どちらもポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ。しかし毛の質が違うとまったく別犬種のように見えますね。この現象はワイアーヘアの遺伝子の作用の違いによるものなのです。J Hered. 2010 Sep-Oct; 101(5): 612–617. An Insertion in the RSPO2 Gene Correlates with Improper Coat in the Portuguese Water Dog

実はポーチュギーズ・ウォーター・ドッグにはカーリーでもウェービーでもない毛質を持つ個体がたまに生まれてくることがあります。写真右を見てください。

ワイアーヘアのところでお話しましたが、ワイアーの遺伝子は毛質を変えるだけでなく、口ひげなどの顔の毛も作りだす作用があることが分かっています。ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグはワイアーヘアとなる変異遺伝子も持っているため、顔の毛も同様にして癖毛が長く生えてくるのですが、変異遺伝子を持たないとこの写真のように顔に毛が生えないタイプとなることがわかりました。

顔に毛が生えずに癖毛である犬種には、カーリー・コーテッド・レトリーバーやアイリッシュ・ウォータースパニエルがいます。

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Irish water spaniel – image by Radomir Rezny / Shutterstock

ここでもう一つ思い出して欲しいのが毛の長短を決める遺伝子の存在です。カーリー・コーテッド・レトリーバーは癖毛&ワイアーなし&短毛という遺伝子の組み合わせを持つため、顔や頭の毛は短くつるんとしていますが、それ以外の部分は全身巻き毛に覆われています。

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Curly coated retriever – image by otsphoto / Shutterstock

アイリッシュ・ウォータースパニエルは癖毛&ワイアーなし&長毛という組み合わせになるため、体の毛は長いものの顔の毛は長くなりません。また、プードルやビション・フリーゼのように全身癖毛で覆われる犬種は、癖毛&ワイアーあり&長毛という遺伝子の組み合わせを持ちます。

つまり犬の毛質は、短毛か長毛か、ワイアーか否か、癖毛か否かの3つの遺伝子の組み合わせにより、そのほとんどが説明できることが分かったのです。たとえば、癖毛&ワイアーあり&短毛の犬種はワイアー・フォックス・テリアやエアデール・テリアのようになり、癖ナシ&ワイアーあり&長毛の犬種としては、シーズーやラサアプソ、ビアデッド・コリーなどが挙げられます。柴犬など、癖ナシ&ワイアーなし&短毛の犬種はたくさんいますが、この組み合わせはいずれの遺伝子も変異していない、野生型と呼ばれるタイプの遺伝子をそれぞれ持っているケースになります。

まるでちょっとしたパズルを解くような感覚でもありますよね。犬の毛質は少ない数の遺伝子の働きにより決定されている特徴なのです。

Featured image creditLim Tiaw Leong/ shutterstock

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