マーブル模様の犬~マールとベルトン、ローン、そしてブルー

犬のカラダ
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マール、ベルトン、ローンというと、何やら聞きなれないカタカナが並んでいる!?と思われるかもしれませんが、これらはすべて犬の毛色をあらわす言葉です。いずれも2色か3色の毛が不均一な感じに混ざり合い、ときにブラックやブラウン、レッドやオレンジなどの大小さまざまな斑点がみられることもあります。

マールってなあに?


image by Andrea Wong / Shutterstock

これらの毛色の中でもっとも一般的に知られている毛色はとマール(Merle)ではないでしょうか。マールはいわゆる大理石のようなマーブル模様をした毛色です。ブラック系の場合はブルー・マール、レッド系はレッド・マールとも呼び分けられています。

マールという毛色の知名度を上げたのはダックスフンドの功績が大きいように思いますが、ダックスフンドに限ってはマールではなくダップルと呼ばれているんですよね。メジャーな毛色として足を突っ込んだ感じのマールですが、実際のところマールの毛色のバリエーションを持つ犬種は一握りしかいません。シェットランド・シープドッグやボーダー・コリー、ラフ・コリー、ウェルシュ・コーギー・カーディガンなどの牧羊犬や牧畜犬に多く見られるのが特徴です。


image by Andraž Cerar / Shutterstock

上の写真はボーダー・コリーです。ブルー・マール(右)はブラック&ホワイト(左)に、マールとなる遺伝子変異が働きかけることで生ずる毛色です。このように、不規則に黒毛の部分が薄められるのが特徴で、そこがブルーに見えることからブルー・マールと呼ばれるのです。

過去にはチワワやポメラニアンなどでもマールの毛色を持つ個体がいましたが、現在はスタンダードとして認められていません。なぜなら、マールという毛色は慎重に繁殖を行わないと、視覚や聴覚などに問題を抱える可能性がとても高くなるからです。JKCのホームページでは「マール(及びダップル)同士の交配は避けてください。高い確率で致死や、難聴のような健康欠陥が生じるためです」と記載されています。

ベルトンってなあに?

では、次に、知る人ぞ知る毛色、ベルトン(Belton)へと話をうつしましょう。

ベルトンはイングリッシュ・セターの毛色にのみ使われる言葉です。有色の毛色と白毛が混ざり合って模様を作りだしています。有色の毛色によりブルー・ベルトン(毛色はブラック)、レバー・ベルトン、オレンジ・ベルトン、レモン・ベルトン(オレンジより薄い)、ブルー・ベルトン&タン、レバー・ベルトン&タンのパターンがあります。


image by Dorottya Mathe / Shutterstock

ブルー・ベルトンのイングリッシュ・セターです。有色の毛は黒ですが、白毛と混ざり合うことでブルーっぽく見えるので、ブルー・ベルトンといわれます。


image by Vera Zinkova / Shutterstock

上の写真はボーダー・コリーのブルー・マールです。これに比べるとイングリッシュ・セターのブルー・ベルトンは、有色の斑点が全身に細かく散らばっているのが分かります。これは「ティッキング」と呼ばれるパターンで、マールとは異なる遺伝子背景があることが分かっています。

ティッキングとは白い毛の領域(白斑といいます)に有色の小さな斑点が入るパターンのことをいいます。イングリッシュ・セターは長毛犬種なので、小さな斑点がくっきりせずにマーブル模様のようにも見えがちでしょうが、ブルー・マールは黒い毛が不規則に薄められて作られるマーブル模様なので、白斑領域に小さな斑点が入ることはありません。その違いはマズルや足先部分の白毛領域に小さな斑点があるかどうかを見れば一目瞭然です。

ティッキングについては『白黒“ブチ”の犬〜斑点、ティッキング、ハルクイン』もあわせてご覧くださいね。

ローンってなあに?

3つ目のローン(Roan)はティッキングと似ているようでちょっと違います。ティッキングは白毛(白斑)部分に小さな有色斑が散らばるようなイメージなのに対し、ローンは有色毛と白毛が混ざりこむようなパターンです。イングリッシュ・コッカー・スパニエル、アメリカン・コッカー・スパニエル、ブリタニー・スパニエルなど鳥猟犬に多くみられます。

ローンを持つ場合はティッキングも同時にあらわれてくる場合が多くあります。ローンとティッキングは同じ遺伝子が影響を及ぼしているとも別の遺伝子だとも考えられていますが、まだ遺伝子そのものは同定されていません。


image by Vaneska88 / wikipedia

上の写真は、ブルー・ローンのイングリッシュ・コッカー・スパニエルです。ブルー・ベルトン同様に有色の毛は黒ですが、白毛と混ざり合うことでブルーっぽく見えることから、ブルー・ローンと呼ばれています。


image by Ellen Levy Finch / wikipedia

オーストラリアン・キャトル・ドッグにもブルー・ローン(またはブルー)と呼ばれる毛色があります。ただし毛が短いため、これまでに紹介してきた毛色とは少し見た目が違うと感じられるかもしれませんが、ティッキングやローンの遺伝背景により作られているものです。

ブルーはブルーでも青にあらず

マール、ベルトン、ローンのところで、それぞれの”ブルー”をご紹介しました。ボーダー・コリーのブルー・マール、イングリッシュ・セターのブルー・ベルトン、イングリッシュ・コッカー・スパニエルのブルー・ローンなどなど。

でもちょっと待って。「ここに出てくる”ブルー”って青じゃないよね」と不思議に思いませんでしたか?

そう、犬の毛の色でいう”ブルー”とは、普段私たちが目にする青ではなく、青みがかったグレー調の毛色を広く指す言葉なのです。

ここで、せっかくですのでブルーの犬をご紹介しましょう。まずはブルーの犬で有名なのは、ナポリタン・マスティフとグレート・デーンでしょうか。

こちらの写真は典型的なブルーともいえる、ナポリタン・マスティフとグレート・デーンです。これらのブルーと呼ばれる毛色は黒と白の毛が混ざってグレーっぽく見えるわけではなく、単色です。


image by Eric Isselee / Shutterstock

黒&白の印象が強いボーダー・コリーには、ブルー&ホワイトの毛色もあります。


image by Gem Russan / Shutterstock

ケリー・ブルー・テリアやベドリントン・テリアも同様にブルーと呼ばれる毛色を持ちます。いずれも生まれたときの毛色はかなり濃い色で、成長と共に薄まってブルーへと変化していきます。


image by / Flickr

ボーダーコリーなどのブルーと、ケリー・ブルー・テリアやベドリントン・テリアのように生まれた後に少しずつ薄まっていき作られるブルーの毛色は、それぞれにまた違う遺伝子の影響によるものです。そしてこれら2種類のブルーは、マール、ベルトン、ローンのブルーとも別の遺伝背景になっています。詳しくは「ブルーとグレーイング」を参照ください。


犬の毛色の呼び名はとかく見た目でつけられてきているので、同じブルーと名の付く毛色でもこれだけのバラエティがあるのです。面白いですよね!

さて次回は、白い毛の犬のおはなし。毛色の項の最後は、さまざまなタイプの白の毛についてお話をさせていただきます。

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