【犬本紹介】『永遠に生きる犬~ニューヨーク チョビ物語』~日本人女性とハスキー犬、マンハッタンに住む

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みなさんこんにちは! 東京の読書犬・パグのぐりです。秋は運動会シーズン。我が家の幼稚園児Sちゃんもそうなの。お天気がよくなることを祈るばかりです!

あの、ミケとチョビにあこがれて…

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Featured image credit 永遠に生きる犬 ニューヨーク チョビ物語 (講談社文庫) | amazon.co.jp /

さて今月は、海外を舞台にした犬の物語をご紹介しますね。『永遠に生きる犬~ニューヨーク チョビ物語』(竹内玲子著 講談社文庫 2015年)です。副題にもある通り、舞台はニューヨーク・マンハッタン。そこで暮らす竹内さんと、パートナーのチョビの物語。

竹内さんは1980年代後半に渡米。以来ずっとニューヨークで暮らしています。ある時、友人2人と一緒に行ったショッピングモールのペットショップで出会ったのです。シベリアン・ハスキーの子犬と。当時竹内さんの家には、シェルターで出会い、引き取った猫、ハナちゃんがいたのですが、竹内さんはある漫画の設定にあこがれて、ぜひシベリアン・ハスキーを飼ってみたいと思っていたの。

そう、勘のよい方なら気づいたはず。その漫画とは、以前このコーナーでもご紹介した『動物のお医者さん』です!あの物語の中のミケとチョビにあこがれていたんだって。ハナちゃんはちょろっとミケに気質が似ていた、というのもあってね。

まあそれで、出会ってしまったハスキーの子犬。もうどうしても飼いたいと、悩みもしたけれど、結局家に迎えます。漫画と同じ、チョビと名づけられた女の子です。それからは大変。大型犬だからきちんとしつけもしなくてはならないし、家で一緒に暮らしていくにはいろいろな工夫も必要でした。そんな過程がおもしろ詳しく書かれています。

ニューヨーカーはドッグフレンドリー

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Featured image credit Tom A La Rue / Flickr

あこがれていた猫とハスキーのパートナーシップでしたが、ハナちゃんにはストレスが大きすぎたようです。

初対面で往復ビンタをくらったというのに、全くなんにも感じていないふうのチョビは、無言でハナちゃんを踏みつけた。(中略)黙ってハナちゃんの顔をパクッと口に入れてみるチョビ。

「ギエエエエエッ!」

ハナちゃん、もう必死のパンチ。見ているほうは最高に面白いけど、ハナちゃん的には地獄を見た瞬間である。(p.132-133)

竹内さんはこれではハナちゃんが快適に暮らせないと、打開策を考えます。結果的には親友がハナちゃんに惚れて、ハナちゃんも彼になつき、お引越し。快適な生活を手に入れました。そしてチョビは竹内さんの溺愛のもとですくすくと大きくなるのです。

ニューヨークの人たちって、どんな感じなんだろうなーと思って読んでいると、どうもかなり、ドッグフレンドリーな人が多いようです。お店も、一緒に入店できるところが多いんだって。すごいよねえ。日本は盲導犬とか介助犬は入れても、一般的な僕たちのような犬が入れるお店はほとんどないよね。だから驚きました。店員さんもチョビのことを大歓迎してね。「なんてスイートなの!」とか、歯が浮いちゃうようなセリフを心の底から言ってくれるんだって。いいなあ。

感動的な獣医師の対応

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Featured image credit Irene Mei / Flickr

お散歩やドッグラン事情、そして、動物病院事情も詳しく書かれています。チョビはお腹が弱くてね。竹内さんのお家にきた当初も下痢。少しの環境変化にも敏感に反応して、胃腸に不調が出るのはハスキー犬の特徴なんだって。この本を読んで僕、初めて知ったよ。

さて、ハスキーは言わずと知れた大型犬。大型犬の寿命は小型、中型犬よりも少し短いのはよく知られていると思います。10歳を過ぎれば、もうかなりの高齢犬になる。チョビもそうだけれど、お腹が少し弱い以外はハイパー元気な女子(老女?)で、散歩でもご飯のおねだりでも、全力、というのは変わらなかったらしい。

なんだけど、16歳を過ぎて、竹内さんはチョビに普段と違う何か、を感じるようになるのです。それが何かははっきりわからないのだけれども、でも前と違う、と。そして不安は的中するのです。そのあたりからエピローグまで、涙なくしては読めない内容になっています。そして、そこに出てくる獣医師の、チョビに対する愛情はまたすごいの。腫瘍専門の医師に診察してもらうことになったチョビ。

チョビもスイートな彼をいたく気に入ったようで、昨日まで呪われたヤギみたいな声でわめきちらしていたくせに、突然上品なプリンセスのような態度になってドクター・ハミルトンにこびを売りまくった。

 ドクターもドクターで、
「オー。なんてスイートなんだ。噂には聞いていたんですよ、とっても高齢なのに愛らしくてスイートなハスキーがいるって。キミのことだったんだねえ」

と、歯の浮くようなお世辞を言ってチョビをさらに舞い上がらせた。(p.311)

ね。すごいでしょ。深刻な場面が続くのに、時々こんな英文和訳(?)が出て来るからくすっと笑っちゃうんだ。

その後チョビは天国へ行くんだけれども、その時の、お世話になっていた獣医師たちの対応は素晴らしい。病院から後日送られてきた品物、そこに書かれたメッセージは本当に心を打つとともに、これだけの愛情を一頭の患畜に注げる、ニューヨークの文化に衝撃を受けました。お店に同伴できたり、道ばたで初対面でも最大の賛辞を惜しみなく犬たちにくれるニューヨーカー。きっとそういう街だからこそ、動物病院もこういう対応をしてくれるんだろうなと思ったよ。


海外で生きるってきっと大変なことも多いんだと思う。でも、そこには必ず人々の愛情があって、犬たちのぬくもりがあって、友情があって。国は違っても、そういうことは不変なんだなーって思った。竹内さんの、踊るような筆は、読み出したら読者を離さない力を持っていて、僕も一気に読んじゃった。笑いあり、涙ありの、ノンフィクション。ハンカチ用意して、読んでみてくださいね。

Featured image credit Tom A La Rue / Flickr


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竹内 玲子
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