こんにちは。お元気ですか? 東京在住の読書犬パグ、ぐりです。梅雨です。雨です。散歩ができない日はつまらないよね。でも、こうやって雨が降るから、助かる植物もあるんだろうなあ。アジサイみたいに、雨が似合うお花もあるしね。気分までジメジメさせずに、ポジティブシンキングを目指しています!
その意外性に惹かれた
さて、今日ご紹介するのは、小説『チルドレン』(伊坂幸太郎著 講談社 2004年)です。実は僕、この本に出合うまで、伊坂さんの作品て読んだことなかったんだ。でもこの本で一気に彼のファンになりました。なんでって? ひと言で表すとするならば「意外性」かな。
『チルドレン』は5つの短編で構成されている本。一つひとつが独立したストーリーでありながら、実は登場人物や背景などが緩やかに連続している、というスタイルです。全編を通じて登場するのが、陣内という家裁調査官なんだけど、この人がとてつもなく突拍子のない人物で、面白すぎるの。だってね、凶器をもった銀行強盗に真正面から歯向かったり(「バンク」)、自分の周りの時が止まっていると主張し、それを証明するために初対面の相手にいきなり話しかけたり(「レトリーバー」)。家裁調査官としての行動も時々ぶっ飛んでいるように見えるんだけれど、でもなぜか、すべてがOKな方向に進んでいくのです。
めちゃくちゃな提案からの…
たとえば、陣内は家裁調査官の少年係として丸川明という少年を担当します。そして、彼がアルバイトをしている居酒屋に、武藤と時々飲みに行く。明はそれがあまり気に入らないんだけれど、だけど、どこかちょっと気になるんだよね。明は、自分の父親が働いている時のある姿を見て、幻滅。おまけに母親は浮気。その後自分は他校の生徒と喧嘩になり高校退学と、なかなか大変な人生を歩んでいます。家裁で陣内と面接し、今は「試験観察」という期間で、調査が延長され、時々家裁で担当係(つまり陣内)と面接するという形になっています。まだ処分が出ていないわけで、これは担当の係にも結構負担な形らしいんだけれども、陣内は何か意図があって、明を試験観察にしたんだね。
一方、武藤は少年事件担当から家事事件担当に移り、夫婦の離婚や遺産分割などの家庭問題の調整を担当しています。そして、ある夫婦の離婚調停の担当をしているんだけれど、陣内はいきなり、その夫のほうに、自分の出演するライブに来るように誘えと、武藤に言うんだ。もう、めちゃくちゃだよね? そして、明にもそのライブに来い、と言う。わけわかんないでしょ?でもね、でもね、でもね(ぐふふ)。ここからが伊坂作品の真骨頂。「そうなの?!」という展開が待っているから、ぜひ本書でご確認ください!
陣内自身が語り手となる物語はなくて、全て陣内の近くにいる人、友人の鴨居、永瀬、優子、家裁調査官の後輩・武藤などの言葉で紡がれていきます。みんな、陣内の言動に間違いなく振り回されているんだけれど、でもなぜか彼を切り捨てることはできない。むしろ、そんな陣内に惹きつけられていく様子がうかがえるところがまた楽しいの。
盲導犬べス
どこに犬が出て来るのか? そうでした。銀行強盗事件に巻き込まれた陣内と鴨居は、そこで同じく人質となった永瀬という男性と知り合いになります。永瀬は実は生まれつき全盲で、今は盲導犬と一緒に暮らしているの。その盲導犬はべスといって、ラブラドール・レトリーバーの雌。賢くて、理知的な雰囲気を醸し出している(ように文面から僕は感じた)犬で、永瀬の友人(恋人か?)である優子は、ちょっとべスに嫉妬している(笑)。その2人と1匹の間柄もなんだかほのぼのしていていいんだなあ。
このべスが、ハーネスを外している時と、している時の違いが上手に描かれていて、情景が浮かぶようでした。きっと綿密な取材を重ねて書かれた作品なんだろうな、と思わせられたよ。
読みどころ満載の小説。ぜひ、手に取ってみてくださいね。
Featured image by Günter Hentschel / Flickr
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