読書犬”ぐり”はこれを読む!『サブマリン』〜チワワが事件の鍵を握る?少年事件の裏側に

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不思議人物に再会!

サブマリン

こんにちは! 読書犬ぐりです。今日は前置きなし!いきなり本題に入っちゃいます。

とある日曜日の午後。書店を歩いていた僕は、平積みの本から目が離せなくなりました。そう、以前ご紹介した『チルドレン』(伊坂幸太郎著 講談社 2004年)の隣に『サブマリン』(伊坂幸太郎著 講談社 2016年)が平積みされていたのです。帯には「陣内さん、出番ですよ」の文字が…

また会いたい!あの、陣内に会いたい!と思ったのは、僕だけではないはず。前作『チルドレン』で不思議な、でも目が離せない、魅力的な家裁調査官・陣内に出会った読者は、『サブマリン』にも手が伸びてしまうのではないでしょうか。あ、少なくとも僕はそうでした。そして買いました。読みました。いやあ、よかった。前作に負けず劣らず、魅力的な作品になっています。あ、前作前作と言ってしまいましたが、本作から読んでも全く問題のない作りになっていますからね。

家裁調査官の陣内は、現在東京勤務。ある時19歳の少年が無免許運転で車を走らせ、男性をはねて殺してしまいます。その少年を担当しているのが、陣内の部下の武藤。そう、前作では新人だったあの武藤です。なんだけど、陣内は武藤の上司だからか、この事件にかなりかかわっている。その時点で、詳しい読者なら「何かあるな」って思うでしょう。そう、何かあります。

陣内の言動は相変わらず破天荒で、武藤は完全に振り回される役なのは前作と変わりません。武藤はもう一人、違う事件で保護観察になっている小山田という少年も担当しているのですが、彼にも、陣内が上司ということで同情される。だってね、小山田少年を陣内が訪問した時、「どこでもいいから座って」と少年が言ったら、陣内はどこに座ったと思う? なんと少年の膝の上に座ったんだって! おまけに「どこでもいいって言っただろ」と不愉快そうにする始末。すごい人だよねえ。いろんな意味で。

この小山田少年はめっぽうITに強くて、それゆえに、ネット上の情報から「これから事件を起こしそうな人」までも割り出せてしまうんだけれど、そのことが実は最初の交通事故にも絡んでくるのです。いろいろな伏線がありながら、それらが見事に集約されていく作りはため息ものでした。

本当に善悪の判断なんてできるのか?

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image by abeadev / Shutterstock

さて、一般的に、こうした19歳の少年の無免許運転、さらにそれによって人を殺してしまうような事件が報道されたら、「なんてひどい奴なんだ!厳罰を!あ、でも少年法で保護されるのか。そんなこと、許されない!」と息巻く人が多いはず。僕の飼い主のNさんも間違いなくその部類の人だよ。だけど、実は、その事件を起こした少年の生い立ちや、周りの人物像をこまかく紐解いていくと、この事件がそんなに単純なものではないということが分かってくる。この小説は、じわりじわりと、紐解き(謎解き)をしながら、「本当にこの事件は、殺人をした少年だけが悪いのか?」と僕の中に「?」を生み出させました。

つまり、読み物としてもとても面白いんだけれど、読んでいく中で、読者にもいろいろ考えさせる作りになっているのね。そうしたら、なんと、朝日新聞の5月11日夕刊3面に、この作品に関する著者のインタビュー記事が掲載されていて。伊坂さん自身のねらいもそこにもあったそうです。情報化されているといわれるこの時代に、一つの事件を単純な目線だけで見て善悪を判断してしまっていいのかどうか。深いテーマだなと思いました。深いからこそ、読み手を離さないのかもしれません。

エッセイ集に書かれたヒント

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image by abeadev / Shutterstock

さて、伊坂作品ですから、犬、出てきます。前作では、盲導犬のべスをパートナーとしていた永瀬は、パーカーを伴侶に再登場します。また、事故現場に居合わせた男性とその犬(チワワ)も出てきます。このチワワが事件の一つの鍵を握っているから、重要登場犬と言えるでしょう。犬たちの描写は今回も丁寧。そういえば僕、友だちのライチ君から「あのさ、伊坂さんの作品って、犬が出てくること多くない?」って言われて、なるほど確かにそうかもって、思ったのね。それで、どうしてかなあって他の伊坂作品を読んでいたんだけれど、エッセイ集にちょっとだけヒントが出ていたので紹介します。

3652~伊坂幸太郎エッセイ集~』(伊坂幸太郎著 新潮社 2010)は、2000年から2010年までの10年間に書かれた、著者のエッセイをまとめた本です。その中に「父の犬好き」という章があって、そこにこう書かれています。

「警察の犬」という表現が出てきて、てっきり警察犬のことかと思ったら、「警察に媚を売る、卑しい奴」のことで(たいがい、「警察の犬め!」のように使われる)、「『犬』をそんな意味で使わないでくれ」と憤りを覚えるくらいには、犬好きだと自覚しているが、実は犬を飼ったこともなければ、生態に詳しいわけでもない。(p.129)

だそうです。意外~。犬飼っている方かと勝手に思っていました。だけど、このエッセイ集の表紙にも、かわいい犬のオブジェ(三谷龍二さんの作品です)が登場しているから、本当に犬好きなんだと思います。それで、この章の主人公は伊坂さんの父上なんだけど、この方すごいです。いろんな意味で。ご一読ください。

それから、このエッセイ集には、なんと『チルドレン』をどうして書いたか、という文章も出ています(「調査官とチルドレン」p.121)。こちらも覗いてみてくださいね。


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