この原稿を書いている今日は、東京で初雪!
今年は雪、早かったですね~ “犬は喜び庭駆け回り♪”という歌の通り、ぞんぶんに遊んだ友だちも多かったのではないかなあ。僕はね、寒いの、ちょっと苦手なので、どっちかというとこたつで丸くなる派かな。あ、猫じゃないですけど(笑)。
さて、今年ももうすぐ終わります。お正月休みは皆さんどんな予定でしょう。年の終わり、または年の初めに、犬の本でほっこり、というのはいかがですか? おすすめ本を今年も取り揃えてみました。お気に入りが見つかりますように!
『異類婚姻譚』〜ちょっとだけ、ホラー
本谷有希子さんの作品は初めて読みました。芥川賞受賞作がこの『異類婚姻譚』です。タイトルにもなっているこの作品も、不思議な雰囲気と具体的な描写が相まって独特な世界を作っているのですが(ある夫婦のお話です)、僕はその次に収録されている、〈犬たち〉が本当に面白かったのです。
主人公の女性は、人里離れた山の中の小屋を知人から借りて、そこで切り絵の複製づくりをしています。その山小屋には、なぜか彼女が来た時から白い犬が何匹もいました。彼らは、水は飲むのですが、餌を食べたり排泄しているところを絶対に女性には見せない。不思議。でも散歩には一緒に行くし、町に買い物に降りるときも、車の助手席に飛び乗ってきたりするのです。ある時、買い物のために町に降りた女性は、そこで会った地元の男性からこんなことを言われます。
「犬にはくれぐれも用心しなよ。」
いったいどういう意味なのか? そしてそのおじさんたちが配っていたビラには、また町民がいなくなった、という内容が書かれていたのです。犬を見たら必ず通報しろ、とも。
女性は不思議だなと思いつつも、犬たちとそれまで通りに暮らします。でも…。
最後は少し、ホラーな雰囲気になるんです。これがたまらなかったなあ、僕には。すごく寒い季節の話なの。だから、年末に読むと気候もぴったりマッチして、より臨場感のある読書が楽しめると思います!
『おひとりさま、犬をかう』〜犬が人生をかえる
著者は少女漫画家としてデビューし、小説も書いている折原みとさん。彼女とリキというゴールデンレトリーバー(メス)との、13年間の暮らしが描かれたエッセイです。
折原さんが「犬が飼いたい」と思ってから、実際に飼い始めるまでは、実に20年かかりました。もともと動物大好きだった著者。小さい頃は捨て犬を拾ってきて、親に「うちでは飼えないから戻してきなさい」と言われてしまいます。よくあるシーンですね。その時に彼女は「犬を自分の意思で飼えるようになるために、早く大人になりたい」と思ったそうです。その後、小鳥を飼うも、悲しい結果に。そして、小動物でさえこうなのだから、犬を飼うなんてとてもまだ自分には無理、とブレーキがかかる。でも、あることをきっかけに、神奈川の海の近くに一軒家を建てて、とうとう犬ライフを実現することになるのです。
おひとりさまでの引っ越し。でも、リキがいてくれたから、すぐにご近所さんとも打ち解けました。そして、作品にも犬や海がどんどん出てくるようになったそうです。犬を飼い始めて、著者の夜型生活は一変、完全朝型生活に。そして数年後にはなんと、犬同伴可能なカフェを八ヶ岳に開いてしまうのです。犬が、人の人生を変えることってやっぱりあるんだね。
漫画家の方が書いているからか、読みやすくて面白いの。そして、あとがきの最後の最後に書かれているオチにはほんとに笑っちゃいました(失礼!)。年末、ボーっとしたい時にすらすらーっと読める、おすすめ本です!
⇨ 『おひとりさま、犬をかう』折原みと 講談社文庫 2012年
『犬とキャンプ!』〜犬にも「野遊び」を
この夏からキャンプにはまりはじめたNさん一家。僕も興味を持ち始め、キャンプと名の付く本を読みまくっていたら見つけたのがこの『犬とキャンプ!』でした。
監修しているスノーピークはキャンプ用品を中心に、「野遊び」に必要がグッズを次々と開発、商品化している会社です。社長の山井太さんは、年間最低でも30泊、多いと60泊するというベテランキャンパー。スノーピークは会社の前に広大なキャンプ場を持っていて、一般の人たちと共に、社員もそこでよくキャンプをするんだって。そうすることで本当に必要なものはなにか、商品の使い勝手はどうか、など、いろんなことをそこで考えられるそうだよ。すごいよねー。
さて、この山井さん、数年前からコロスケというトイ・プードルを飼い始め、犬とのキャンプにも以前より興味が出てきたとのこと。「野遊び」は人の五感をフルに使う魅力的な遊びですが、人間よりも野生に近い犬たちにとってもそれは必要なこと。都会で暮らす犬たちも、野山でのびのびと過ごすことで、元気になれるのです。
というわけで、この本は、じゃあ犬と楽しくキャンプするためにはどうしたらいいの?と言う質問に、とっても丁寧に答えてくれています。キャンプ場からテント、愛犬も飼い主も疲れないスケジュールの提案や、取り分け可能な料理のレシピまで。かゆいところに手の届く内容で、素晴らしいの。そして、犬を飼っていない人でも、キャンプをやってみたいと思ったら、この本を読むと初心者向けのキャンプ入門書にもなっていますよ。
寒い季節はちょっと難しいけれど、冬の間にこの本を読んで作戦をねって、春から夏、秋にかけてのキャンプシーズンを楽しんでみるっていうのもいいかも!
⇨ 『犬とキャンプ!』 スノーピーク監修 マガジンハウス 2016年
『ソロモンの犬』〜愛犬はなぜ暴走したのか?
タイトルの「ソロモン」は、あの有名な「ソロモンの指輪」に由来するのだと思います。この作品は推理小説。主な登場人物は大学生4人です。ひろ子、智佳、京也、そして主人公の秋内静。同じ大学で、ある理由(これも面白い理由なんだけど)で友だちになった4人は、大学教授の椎崎鏡子とその息子、陽介、そして陽介の飼い犬であるオービーとも知り合いになります。
陽介の父親は、鏡子の不倫がきっかけで家を出て行ってしまったんだ。鏡子は大学の仕事で忙しく、陽介はオービーを本当に大事に育てていたの。散歩も毎日ちゃんとして、餌やりもすべて陽介がしていました。でもね、ある日、オービーが急に道に飛び出して、その拍子にリードを握っていた陽介がトラックの目の前に引きずり出されてしまい…。
陽介は亡くなります。なぜ陽介が交通事故にあったのか? どうしてオービーはいきなり道に飛び出したのか? 偶然その現場近くにいた大学生4人組は、それぞれに悩み、理由を突き止めようとするのです。特に主人公の静は、大学の他の教員で生物学に詳しい間宮に犬の生態について聞き、謎解きを試みます。
この間宮がまたいい人なんだなー。僕はこういう人好き。専門家オタクっぽいところがあるんだけれど、なんとなく人間臭いというか。どうぞ本書で確かめて。そして終章で謎がすべて明らかになるのですが、オービーのとった行動の理由に、涙が出そうになるのです。
青春×犬。年末、時間があるときに一気読みしたい一冊です。
『心があったかくなる犬と飼い主の8つの物語』〜相手の良いところを探す
最後に漫画も一冊ご紹介しますね。なにしろ我が家には、パパのKさんが集めた大量の漫画がありますので、読み慣れているのです。
『心があったかくなる犬と飼い主の8つの物語』は、ドッグライフカウンセラーの三浦健太さん原作、中野きゆ美さんが漫画を描かれた作品です。以前このコーナーで、三浦さんの『犬のおもいで』(三浦健太著 角川書店 2012年)をご紹介しましたが、今回の漫画も三浦さんが実際に出会った犬とその飼い主さんの実話がベースになっています。いくつかは、前著で取り上げられたストーリーも含まれます。
ただ、読んでみて思ったのは、漫画になるとまたより一層その内容がリアルに頭の中に響いてくるなっていうこと。イメージがしやすいという面からも、おすすめの本です。中野さんの描く犬たちの表情もさることながら、一つひとつの物語の最後に書かれている文章も素敵でした。特に「ミッキー~汚名を晴らした犬」の章。ミッキーは原作者の三浦さんが実際に飼っていた犬です。動きがゆっくりで、それを欠点と言う人もいましたが、実はそれが生かせる場所があったというお話。その最後にこんな一文があります。
愛するということは、自分の気持ちを押しつけることではなく、相手の良いところを探し出し、見つめ続けることではないかと思うのです(p.88)
なるほど。Nさんは「子育てと同じかもー」と言っていましたが、大人同士の恋でも、子育てでも、そして犬との生活でも、これは基本なのかもしれないですね。
⇨ 『心があったかくなる犬と飼い主の8つの物語』三浦健太原作 中野きゆ美漫画 アスコム 2016年
Featured image credit Robert Larsson / unsplash
読書犬「ぐり」のオススメ本〜いぬ、イヌ、犬!年末年始は物語で犬にまみれる | the WOOF
みなさんこんにちは~読書犬、東京在住のパグのぐりです。これまでいろーんな犬の本をご紹介してきましたが、今回はスペシャル企画!! 年末年始にお休みをとられる方も多いかと思い、まとまった時間に読みたいあの本、この本を紹介しますヨ。 今回は大人向け。最初の2冊は実は児童向けなのですが、ぜひ大人にも読んでもらいたいな、と思ったので入れました。手に取ってみてくださいね。それでは、はじまり、はじまり~。