皆さんこんにちは! 天国在住の読書犬、パグのぐりです。
いや~、地上はスギの花粉が終わって、やれやれと思ったらなんと、ヒノキの花粉が飛び始めたとか…。気が抜けませんね。新緑の美しい写真が、地上での飼い主だったNさんから送られてきます。過ごしやすい気候なんだろうなと。お花見のシーズンは終わったけれど、ピクニックにぴったりの季節ですね。
日本版・母を訪ねて三千里
さて、今回は久しぶりにDVDをご紹介します。そろそろDVDをご紹介したいなあと、いくつか犬が登場するDVDを見ていたんだけど、出会いましたよ、とっておきの作品に。『ぼくとママの黄色い自転車』(監督 : 河野圭太 出演:武井証、阿部サダヲ、鈴木京香他 2009年)は、原作が新堂冬樹さんの『僕の行く道』(双葉社、2005年)だそうです。この本は、僕はまだ読んだことがなく、DVDを先に観ました。
ストーリーは、大きく言うとお母さんを探して少年が冒険をするお話。「母を訪ねて三千里」という物語がありますが、ちょっと似ているかも。主人公の沖田大志は小学生。建築家の父、一志と二人で暮らしています。あ、あと「アン」というジャックラッセルテリアも一緒に。このアンは、いつも大志と一緒。きょうだいのいない大志にとっては唯一無二の親友であり、きょうだい同然の存在です。
人との出会いで成長する
大志のお母さんは、パリでファッションデザイナーになる勉強をしていて、今は一緒には住んでいません。お母さんからは定期的に手紙が届き、大志はそのエアメールを大事に缶に入れてとってあるのです。でもある時、ひょんなことから、大志はお母さんが本当にパリにいるのだろうか、と疑いを持つようになります。
そして、大志はお母さんに会いに行く旅に出ます。アンと一緒に、黄色い自転車に乗って。最初は新幹線に乗って行く予定だったのですが、いろいろあってそれは叶わなくなりました。ではどうやって長距離を移動したのでしょうか? どうぞ本編にて確認してみてください。
その道の途中で、大志はいろいろな人に出会います。中でも僕の印象に強くのこっているのが、柄本明さん演じる正太郎というおじいさんです。孤独に押しつぶされ、先だった妻を追おうとしていた彼が、大志と出会い、変わっていく。大志と正太郎がお互いに話をしながら、それぞれの家族を想うシーンは感動的です。そして、ちょっと本筋とは関係ないのだけれど、このあたりのシーンを見るとうどんが食べたくなります。
「ママは、本当にいるのだろうか」。大志は旅の途中からうっすらと、想像したくないけれど、もしかして最悪の事態もあるのでは、と心に葛藤が生まれます。でも、初志貫徹。会いに行くのです。
父親の一志は大志がキャンプに行ったと聞かされていたのですが、それが嘘だったと知り、息子の安否を確かめるべく奔走します。そして、その合間あいまに、一志と妻、つまり大志の母親との日々の回想シーンが挟み込まれるのですが、それが切ないのです。本当に切ないの。Nさんなんて、切なすぎてボロボロ泣いたって。「だってね、ぐり。私このDVDを、下の子の小学校の入学式の日に観たんだよ。もうね、泣くなと言われても無理だわ」と。とある事情で家を出ざるを得なくなった大志の母親。でも息子を想う気持ちは誰よりも強い。その気持ちをどう表現しているか、ぜひ映像で確かめてみてください。
豪華な俳優陣
大志の父親役の阿部サダヲさんは、僕の好きな俳優さんの一人です。自然体で、ちょっとだけ気弱な役を演じたらピカイチだと思います。この作品の中でも、妻と息子を想う強い気持ちを、どこか強がるような演技で見せる一方、息子と二人の生活を、このまま続けていいのだろうかと、ふと気弱になる。その両面を実に鮮やかに演じられています。もちろん、妻役の鈴木京香さんも、思い悩む母親を、見ているこちらが苦しくなるほどに迫真に迫る演技で表現しています。
この物語は、主人公は子役の方が演じていますが、その周りを固める俳優陣が実に豪華です。先ほどの主人公の両親をはじめ、柄本さんもそうだし、主人公の叔母役の西田尚美さんだって素晴らしい。だから、どの場面でも何かじんわりとしみこんでくる味わいがあるのです。そして、犬のアンも。どうしてこんなに素晴らしいタイミングでこの演技ができるの?!と思う場面がたくさん出てきます。そしたら、このアンの演技指導をしたのは、以前このコーナーでも著書を紹介した、有名なドッグトレーナーの宮忠臣さんでした。
さあ、大志はお母さんに会えたのでしょうか? もし会えたのならば、それは嬉しい再会だったのでしょうか? それとも…
家族、親子のことを考えさせられる物語。ぜひご覧になってみてくださいね。
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Featured image creditAlex DeLarge/ Flickr