読書犬”ぐり”はこれを読む!『パーフェクト・ブルー』 〜大企業の闇を元警察犬が暴く

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推理小説好きの読書犬・パグのぐりです。こんにちは。

推理小説、お好きですか? 飼い主さんに影響されて、一時は、ひたすら篠田節子さんの作品を読みまくり、最近は家に東野圭吾さんの小説があふれかえっています。そして、宮部みゆきさん。この方の作品も立て続けに読んだ時期がありました。引き込まれるストーリーが多くてね。

今日は、その宮部みゆきさんの『パーフェクト・ブルー』(宮部みゆき著 東京創元社 1992年)をご紹介します。

元警察犬・マサが語るストーリー

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表情豊かで愛嬌もあるジャーマン・シェパード image by Ronnie Meijer / Flickr

この小説が面白い理由の一つは、語り手が犬である、ということ。元警察犬だったマサは、引退してから蓮見探偵事務所に引き取られました。そこでは蓮見加代子さんが、父である所長さんと一緒に働いていて、マサもいろいろな現場に同行しています。

物語は、いきなり物騒な場面から始まります。東京湾近くの工場団地の一角で、「あるもの」が燃やされたのです。それは…

そして、数日後、同様の場所で人が焼き殺されます。被害者は高校野球界のスーパースター。マサと蓮見事務所員さんたちは、諸岡進也という10代の男性を探して、家に連れ帰ろうとしていた時、偶然その現場に居合わせ、進也と共にこの事件の解決にかかわることになります。

うーん。推理小説の紹介って難しいですね…だって、ちょっとでも答がわかるようなことを書いてしまったら、誰も本を楽しむことができないし。だからといって、情報が少なすぎても、なぜおすすめだかがわからないし。あ、ぼやいちゃってすみません。

この、『パーフェクト・ブルー』というタイトルは何かというと、上記の殺人事件をきっかけに、ある大手製薬会社の蛮行が明らかになるのですが、そこで登場する薬に関係するのです。そう、この小説は、企業の闇が一つの大きな軸になっています。それも製薬会社。人の命にかかわる重いテーマです。中盤からの企業側の人間と、蓮見探偵事務所の面々、そして諸岡進也との駆け引きが見逃せません。そして、真犯人は、最後の最後までわからず、本当の最後に読者はびっくりさせられるのです。さすが宮部さん。読者を絶対に離しません。

そして、マサの活躍も!さすが元警察犬、という場面が続出します。物語の終盤では、このマサがかなり重要な役割を果たしますよ。ご期待ください。

兄弟の絆

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絆、たいせつ image by Ronnie Meijer / Flickr

さて、もう一つ、この小説での見どころは、「兄弟」です。諸岡進也には克彦という兄がいるのですが、これがまたよくできた兄で、はたから見ると、ちょっと破天荒な進也は大きな葛藤を抱えているのではないか、と思えます。ですが当人たちにはそんなことはなく、固い絆で結ばれていました。それは、彼らの父親が進也に語った、次のような言葉にも表れています。

「今まで口に出して言う機会はなかったが、私はね、進也、克彦と同じくらい、お前のことを誇りに思ってきた。お前の一本気な気性が好きだった。

だが、私にとって何よりも大切だったことは、お前たち二人がいることだった。一緒にいることだった。

お前たち二人が、私と母さんといるときに、お前たちだけにしか分からない無言のサインで何かを通じあわせているとき、どちらか一方にしか話していないはずのことをいつの間にかもう一人も知っていることに気づくとき、私は本当に幸せだった」(p.337)

ね、いいでしょう?僕もきょうだいはいるんだけれど、小さいときに離れちゃったから、進也たちのこと、ちょっとうらやましかった。蓮見事務所の加代子さんにも、高校生の糸子さんという妹がいて、なかなかいいコンビなんだよ。僕の家族のNちゃんとSちゃん(飼い主さんの娘たち)姉妹も、2歳違いなんだけど、喧嘩をしょっちゅうしても、二人とも、相手がいないと落ち着かないんだ。そういう絶妙なきょうだい関係を、宮部さんは実に生き生きと書き込んでいます。さすがプロだなあ。だってご本人は女性なのに、男兄弟のことをここまで書けるなんてすごいと思った。

犬が一人称で語る推理小説って、あんまりないんじゃないかな。読んでいると時々、ふとマサが犬であることを忘れてしまいそうになるんだけれど、そうなりそうな頃にうまくマサが犬だってことが再確認できる描写が出て来るところもにくい演出だよね。ぜひぜひ、手に取ってみてください。オススメ推理小説です。


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Featured image by Zach Heller / Flickr

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