【犬本紹介】『天空の犬』一人の女性警察官と山岳救助犬の物語

本・映画・テレビ
この記事をシェアする

皆さんこんにちは!お元気ですか? 僕は読書犬パグのぐりです。今はお空のWOOFOO出張所にて勤務中。

こちらは梅雨もないのでじめじめが苦手な僕は快適に暮らしていますが、地上はそろそろ梅雨入りでしょうか?そういえば地上での飼い主だったNさんは、梅雨時になるといつも手に湿疹が出ていて「まいるわー」と言っていたっけ。今年は出ないといいね。

さてさて、今月も面白い本があったのでご紹介しますね。

犬が大活躍の小説

天空の犬: 南アルプス山岳救助隊K-9 (徳間文庫)

今回僕が読んで、これは!と思ったのは『天空の犬 南アルプス山岳救助隊K-9』(樋口明雄著 徳間文庫 2013年)です。山岳救助犬が登場する小説。舞台は南アルプスの北岳。日本で富士山に次いで2番目に高い山です。この山の、山小屋にある警備派出所には、日本で初めての山岳救助犬が待機しています。あ、皆さん、これは小説なのでフィクションですからね。

主人公はこの派出所に着任した新人の星野夏美、28歳。彼女はボーダーコリーの雌犬、メイと一緒に山を登ってきました。メイは救助犬としての訓練を受け、夏美をハンドラーに、一緒に活動をしているのです。

救助犬メイと夏美は、この現場に来る前、ある辛い体験をしています。詳細は本書で確認してくださいね。そしてこの辛い体験によって、しばらく仕事に就けなかったのですが、その後警察の仕事に復帰すると、異動の内示が出たのです。まったく予想していなかった山岳救助隊への。

山での救助といえば、男の世界と思っていた夏美。そんな場所で果たして自分は働けるのだろうか、と当初は戸惑っていましたが、よし、行こう、と決心します。

結局、異動に従うことにしたのは、山というイメージに、漠然とながらも心を解き放てるような何かを感じたからだった。(p.81)

そう、夏美は過去の辛い経験を払拭するために、山に行ってみようと思ったの。でも実は、本格的な登山もしたことがなかったから、当初の訓練は過酷でした。

魅力的な同僚たち

1510 1 thewoof

image by perlaroques / Flickr

山岳救助隊は、遭難者が出るとすぐに救助に向かいますが、それ以外の時はひたすら訓練をしています。いざというときに、適確な行動がとれるように。その訓練の中には、自分よりも重い同僚を背負って山を歩く、というものもあります。そう、救助した人を背負って山を下りることはよくあることだからです。

夏美たちは女性の身でありながら、自分よりも二十キロも重たい男性隊員を直に背負って雪の急傾斜地を歩かねばならない。つらくてもつらいとはいえない。へたり込んだり、泣き顔を見せたりしたら、杉坂知幸副隊長や深町敬仁、進藤諒大ら男性隊員から容赦ない叱咤が飛んでくる。(p.147)

とまあ、すごく過酷なわけです。こうした訓練と共に、ハンドラーである夏美はメイとの訓練も重ねます。

訓練に救助に、大変な日々とはいえ、個性豊かな同僚たちが陰に日向に夏美を支えてくれます。まず、隊員の中で夏美以外の唯一の女性、神崎静奈。ジャーマンシェパードのバロンを相棒に、スリムな体形ながら、軽々と救助訓練をこなすパワフルな女性です。でも、この神崎。どこかつっけんどんで、冷たい雰囲気をもっていて、最初のうちは夏美もどこかおっかなびっくりしながら接していました。が… 二人の関係性が物語中盤から徐々に変化していくのもこの小説の魅力の一つ。楽しみに読んでみてください。

他の男性隊員も個性派ぞろい。体調の江草恭男は普段はおだやかで、皆の信頼も厚い50代山男(役職は警部補)。ですが、ひとたび理不尽な行動をとる登山者に向き合うと… どうなるのかは、こちらも本でご確認を。

他にも、過去の救助活動で、同じ巡査であった兄の茂幸を亡くしている杉坂、その事故現場にいて、あることがきっかけで辞職を考えている深町、巡査でりながら医師免許を持つ関真輝雄と、誰が主人公になっても物語が盛り上がりそうな面々が脇を固めます。

シリーズも人気

1510 2 thewoof

image by Marius Lengwiler / Flickr

この小説は、夏美の成長物語でもあるのですが、スタートの時点から山に訪れる一般の登山者ではない人物たちが、不穏な影を落としています。夏美をはじめとした隊員たちも「何かある」と思いはするのですが、なかなかそれが「何」なのかはわかりません。

ですが、物語後半で、いよいよその「何」かが解き明かされていきます。それは、国全体にかかわるほど、大きなことにつながっていて。前半も面白いのですが、後半、このストーリー展開からは目が離せませんでした。僕、一気に読んじゃった。

この小説は、シリーズになっていて、他にも何冊も“k-9”を柱にした本が出ています。一番最近出たのは『レスキュードッグ・ストーリーズ』(樋口明雄著 山と渓谷社 2017年)。短編が12本収録されていますが、どれも読みごたえがあります。特に、山岳救助隊で働くもう一人のハンドラー、進藤と相棒の川上犬・カムイとの物語を描いた「相棒(バディ)」は圧巻です。

著者の樋口明雄さんは、現在、八ヶ岳と南アルプスに挟まれた土地で暮らしていて(詳しい経緯は『レスキュードッグ~』の「後記」に)、北岳にも毎年のように登っているそう。だからこそなのでしょう。山や自然の描写がまるで目に浮かぶように具体的なのも、魅力の一つです。

ぜひぜひ、手に取ってみてくださいね。〈南アルプス山岳救助隊K-9〉シリーズは、どれから読んでもわかりやすい書き方になっていますが、『天空の犬』がシリーズの最初なので、これから読むと、より内容が楽しめると思いますよ。


天空の犬: 南アルプス山岳救助隊K-9 (徳間文庫)
樋口 明雄
徳間書店 (2013-11-01)
売り上げランキング: 30,041

the WOOF イヌメディア > すべての記事 > イヌを知る > 本・映画・テレビ > 【犬本紹介】『天空の犬』一人の女性警察官と山岳救助犬の物語

暮らしに役立つイヌ情報が満載の「theWOOFニュースレター」を今すぐ無料購読しよう!

もっと見る
ページトップへ