食事に風味を与えるネギ類は、犬に毒性があり、危険です。ほんの少量をなめても健康上の問題を引き起こす可能性があります。
「ネギ類」ってなんだ?
ここでいう「ネギ類」とは、アリウム属に分類される植物のうち食用として栽培されるものを指しています。アリウムは、北半球に300種以上が分布する植物群で、玉ねぎやニンニクなどの食用のものから、ギガンテウムなどの鑑賞種まであります。
コロコロと丸っこい形のアリウム属の植物はすベて、犬と猫に有毒です[1]。すなわち私たちの台所に普段から転がっている以下の食用アリウムには注意が必要だということです。
- 玉ねぎ(Allium cepa)
- 長ネギ(Allium fistulosum)
- ニラ(Allium porrum)
- にんにく(Allium schoenoprasum var. foliosum、もちろんニンニクの芽もNG)
- あさつき(Allium schoenoprasum var. foliosum)
- らっきょう(Allium chinense)
これらは犬に有毒な化合物を含み、犬の体に中毒症状を起こします。毒性は調理(加熱)によって減少することはなく、粉末形態でも症状を誘発する可能性があります。
中毒症状はどのように起こるのか
アリウム属には、多様な有機スルホキシドが含まれています。刻んだり咀嚼することによって傷がつくと、有機スルホキシドは有機硫黄化合物に変換されます(これが臭気や風味の元になります)。有機硫黄化合物は胃腸管を通して吸収され、反応性の高い酸化剤に変換されますが、これが赤血球中の抗酸化代謝能力を超える量になると溶血(赤血球の破壊)が起こります。
赤血球の仕事は酸素を運ぶ役割ですが、赤血球が破壊されその仕事ができなくなると、臓器や組織が低酸素状態となります。したがって、アリウム属を口にした犬は、貧血(溶血性貧血)、メトヘモグロビン血症、低酸素症になる可能性があります。
犬の赤血球における抗酸化活性は低いため、人に比べ敏感に反応します。体の中での影響は摂取後1日以内に起こるのが一般的ですが、数日後に発症することもあります。
どの程度の量が毒になるのか?
アリウム属の摂取は、その形態に関わらず発生します。食材そのもの、絞り汁、栄養補助食品、粉末調味料、乾燥食材、加工食品は、いずれも犬には毒性があります。
犬は玉ねぎの毒性に非常に感受性が高いと言われ、犬の体重1kgあたり15〜30g(※)で臨床的な血液の変化が生じます[1]。
食材を一度に大量に(犬の体重の0.5%以上)摂取した場合だけでなく、少量を反復的に与える場合も、犬の健康に悪影響を及ぼします。
日本原産の犬は、アリウム属の毒性への感受性が遺伝的に高いと言われています。
症状、診断、治療
アリウム属の中毒症状には、以下のものがあります[2]。
- 活動量の低下
- 倦怠・嗜眠(ぐったりしてかなり刺激しないと起きない)
- 運動失調(歩き方がおかしくなる)
- 貧血(歯茎の色が悪いことで確認できる)
- 嘔吐・下痢
- 心拍数や呼吸数の増加
- 血尿(赤色、黒色の尿)
- 唾液が異常に分泌する
アリウム属の中毒症の診断は、飼い主への聞き取り(これまでの健康状態)、現在の犬の状態、および顕微鏡検査の組み合わせによって行われます。
解毒剤はありません。摂取後すぐに治療するしかありません。治療では、胃腸の洗浄や毒素の除去(嘔吐の誘発や活性炭の投与等)、貧血の治療(輸血や補助酸素療法)などが行われます。中毒症状のある犬を家で嘔吐させたとしても、十分な対応とはいえませんので、必ず動物病院に連れていきましょう。
※訂正とお詫び:配信時に玉ねぎの感受性について「犬の体重1kgあたり15〜30g」が正しいところ「犬の体重1kgあたり15〜30kg」と間違えて表記しておりました
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Toxicology Brief: Allium species poisoning in dogs and cats
[2] Are Onions and Garlic Bad For Dogs? | petMD
[3] Onions and Dogs: A Lethal Combination – Dr. Sophia Yin
Featured image creditBoulderPhoto/ shutterstock