抗がん剤治療と犬の被毛〜クルクル毛の犬は脱毛しやすい(研究)

サイエンス・リサーチ
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抗がん剤治療の副作用に、脱毛があります。治療が終わると回復するものではありますが、外見が変わることによる精神的苦痛は大きく、患者にとっては大きなストレスの原因になっています。

抗がん剤治療による脱毛は、人間だけのものではありません。この副作用は犬にも発生するのです。米大学の研究者らは、抗がん剤治療を行う犬の脱毛について調査を行い論文として発表しました[1]

ヘアカット犬種は脱毛の可能性

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image by AHLN / Flickr

研究を行ったのは、タフツ大学獣医学科の研究者ら。附属の動物病院で抗がん剤治療を受ける150匹について症例を評価し、脱毛、肌の黒ずみ、被毛の変化について集計を行いました。

治療に使用されたのは、抗悪性腫瘍薬のドキソルビシン(doxorubicin)。国立がん研究センターのWebには「DNAやRNAの合成を妨げることなどにより、がん細胞の増殖を抑え[2]」ると説明されている薬です。

調査対象となったのは150匹。7種類の被毛をもつ犬たちが参加しました。集計と統計分析の結果、28匹(19%)について脱毛が確認され、発症には2つのパラメーターが関連していることがわかりました。関連していたとされる要因は、被毛のタイプと累積投与量でした。

被毛のタイプについて、脱毛が見られたのはカーリー(curly coated)とワイヤーヘアー(wire-haired)。カーリーの代表選手は日本でも人気のプードルで、ワイヤーにはブリュッセル・グリフォンやワイヤーフォックステリアなどがいます。ざっくりと言うならば、ヘアカット犬種かそうでないかが脱毛するかしないかの分岐点になるようです。研究リーダーのFalk氏は「ヘアカットを必要とする犬は脱毛の可能性があり、一時的にではありますが、裸に近い状態にまで脱毛が進む可能性もあると家族に伝えることが多い」とコメントしています。

人の脱毛のメカニズム解明に繋げたい

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image by Peter Allen / Flickr

抗がん剤治療をすると何故脱毛するのか?この原因は現在のところ、はっきりとはわかっていません。毛包内にある毛母細胞が障害された結果だ[2]とする説明が、現在のところ一般的なもののようです。

「抗がん剤は急速に分裂する細胞をターゲットにしている。一方、成長する髪の毛包は、体の中でもっとも活発に分裂する細胞だ」とFalk氏は説明します。ヘアカット犬種たちの毛包は、活発に細胞分裂を繰り返すが故に治療薬に攻撃され無力化されているのかもしれません。これに対して「ロットワイラー、ラブラドール・レトリバー、ゴールデンレトリバーやジャーマンシェパードのようなストレートヘアの犬の毛包は、それほど活発ではない」とのこと。研究では2種の被毛の犬はストレート毛の犬に比べ、22倍も高い割合で脱毛したことが確認されています。

脱毛を起こすもう一つの要因は、累積投与量です。治療の過程でドキソルビシンの投与量が累積した犬は、より多く脱毛を経験することになったということです。

研究者らは、脱毛を経験した犬について治療終了後の生検を行うという新たな研究に挑もうとしています。彼らが目指すのは、抗がん剤による脱毛のメカニズムを解明し副作用を抑えること。犬はもちろん、治療による脱毛で苦しむ人々の心を救うことにも繋げたいということです。

h/t to Chemo and Furry Coats | Tufts Now

Featured image credit Niko Helle / Flickr

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Falk, E. F., Lam, A. T., Barber, L. G., & Ferrer, L. (2017). Clinical characteristics of doxorubicin‐associated alopecia in 28 dogs. Veterinary dermatology, 28(2), 207.
[2] ドキソルビシン:注射:[国立がん研究センター がん情報サービス]
[3] 脱毛:日経メディカル

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