ワンコの聴力は私たち人間の約5~10倍といわれています。そんな優れた聴力も加齢により低下していきます。
こんな変化がみられたら、聴力の低下を疑って
- 寝ているときに人が近づいてもなかなか起きない
- 名前を呼んでも反応しない
- 人が近づくと、驚くことがある
耳が聞こえにくくなったのかな?と思ったら、まずは動物病院で診察してもらいましょう。いろいろな耳の病気によっても聴力の低下は起こります。耳の病気ではなく、加齢による難聴が疑われる場合には、脳幹聴覚誘発反応検査(BAER)で聴力をチェックすることができます。ただし、現在のところ、この検査を受けられる動物病院は少ないため、事前に動物病院へ確認することをおすすめします。
耳が遠くなってしまったワンコ、どんなことに注意すればいいの?
・事故に注意
お散歩の時には、必ずリードを付けましょう。車や自転車の音が聞こえにくくなるため、事故に巻き込まれないよう、飼い主さんがリードでコントロールしてください。
・脅かさないように
ワンコの後ろからそっと近づいて触れようとすると、驚かせてしまうことがあります。そんな時は、普段大人しいワンコでも、恐怖のために噛みつくことがあります。そのため、ワンコに近づくときにはワンコの視野範囲内から、できれば手を動かすなどの動作をしながら近づくと、ワンコは認識しやすくなります(聴力の低下が起きているワンコでは、視力の低下も起きている可能性が高いのです)。
・動作付きのコマンド(号令)練習
聴力が低下すると、名前を呼んでも、指示を出しても確実には応答してくれなくなってしまいます。そこで、“お座り”や“待て”、“おいで”など、日常生活で必要な指示に関しては、いつまでもワンコが理解できるよう、動作付きのコマンドで訓練するとよいかもしれません。ただ、年老いてからの訓練には時間と忍耐が必要になります。そのため、ワンコが若いころに訓練しておくとよいかもしれません。
注意点:ワンコは動体視力はよいのですが、視力は悪く、30㎝以内の近距離にある物体をはっきりみることはできないといわれています。さらに、聴力の低下したワンコでは、視力も低下している可能性があるため、大きな動作を含むコマンドの使用をオススメします。
ケア&予防に経穴(ツボ)のマッサージ
病気や加齢により衰えてしまった聴覚をもとに戻すことはとても難しいことですが、経穴(ツボ)を刺激することにより、機能を賦活する効果がみられることがあります。ここでは、難聴に効果的な主要経穴5カ所をご紹介します。
※ 以前、配信した『大きな音を怖がる愛犬のストレスを緩和する〜指圧マッサージ』にマッサージに関する基本的事項をまとめています。参考にしてください。
上の図に示すように、難聴に効果のある経穴は、耳の付け根の下側にあります。この周辺をマッサージして経穴に刺激を与えてみましょう。
耳の付け根あたりは、あまり触り慣れていないと、ワンコは嫌がるかもしれません。まずは、頚や背中のマッサージからはじめ、ワンコがリラックスしてきたら、顔のほうに少しずつ手を伸ばしてみましょう。頬のマッサージからはじめ、徐々に耳の付け根あたりに移動します。ワンコが受け入れるようであれば、耳の付け根下方にある経穴周辺を重点的にマッサージしましょう。
難聴になってしまったワンコには、2~3日ごとに行います。難聴予防には、週に1回程度で十分でしょう。ただし、耳の感染や掻痒などがある場合には、マッサージは禁忌です。
次回は、視力変化についてお話させていただきます。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Zanghi, B. M., Kerr, W., Gierer, J., de Rivera, C., Araujo, J. A., & Milgram, N. W. (2013). Characterizing behavioral sleep using actigraphy in adult dogs of various ages fed once or twice daily. Journal of Veterinary Behavior: Clinical Applications and Research, 8(4), 195-203.
[2] Deafness and Hearing Loss in Dogs
[3] Veterinary Acupuncture: Ancient Art to Modern Medicine, 2e (2001) Allen M. Schoen DVM MS