今年も人間界ではインフルエンザが大流行。国立感染症研究所によれば、1月21日までの1週間に報告されたインフルエンザの患者数は、1医療機関当たり51.93人となり、国が統計を取り始めた1999年以降では最も多くなったとのこと[1]。まだまだシーズンが続くこの時期は、より一層の注意が必要です。
さて、気になる犬のインフルエンザですが、海外では猛威を振るい連日のようにメディアを賑わせていますが、現在のところ日本居住犬に発症の報告はありません(2018年1月現在)。ただし条件が揃えば我が国でも犬インフルエンザが問題となる可能性はあります。
犬のインフルエンザについて知っておきたい3つ+1つのこと | the WOOF
犬インフルエンザとは
現在同定されている犬インフルエンザ株は、H3N8型とH3N2型の2種類です。
H3N8犬インフルエンザは、2004年に呼吸器疾患に罹患したグレイハウンドで初めて確認されました。遺伝子配列がH3N8馬ウイルスに似ていたことから、馬から伝播したものと考えられ、これが犬に感染しやすくなる変異を遂げたものがH3N8犬インフルエンザです。現在までH3N8犬ウィルスの侵入は確認されておらず、日本で行った感染実験ではH3N8馬ウィルスは馬から犬へ伝播したものの臨床症状はみられていないとのことです。
H3N2犬インフルエンザは、2007年に韓国で確認されたもので、H3N2鳥ウィルスの犬への伝播が発端だと考えられています。アジアの広い地域で広がったH3N2犬ウィルスは、2015年にアメリカでも確認され、今年は2018年はH3N2型の犬インフルエンザの症例が多く報告されています[2]。現在までにH3N2犬インフルエンザは日本では確認されていません。
人のインフルエンザは犬に感染するか?
人のインフルエンザは犬にも伝播するようです[5]。しかし日本では、感染はしても発症例はなく、犬の間で集団感染した例もこれまでに報告がありません。症例では、アメリカでインフルエンザにかかった飼い主からの感染が疑われた犬の例があります。日本では血清疫学調査で過去の感染歴が示されたケースがありましたが、発症は記録されていないとのことです。
なお、犬インフルエンザが人に感染するデータ等は、今のところ発見されていません[3]。
米国では今年も流行、カナダでも確認される
犬のインフルエンザを観察しているコーネル大学獣医学部によれば、今年の犬インフルエンザの発症は、今のところ、カリフォルニア州、ケンタッキー州、オハイオ州、ミシガン州に集中しているとのこと。過去45日間で100件以上の診断がなされたそうです[4]。犬インフルエンザは人のインフルエンザと同様に、くしゃみや咳により犬から犬へ伝播するため、特定の地域で爆発的に伝播しやすいのです。
AVMAによれば、犬インフルエンザに曝露された犬はほとんどすべてが感染し、感染した犬の80%が発症しますが、ほとんどは安静と栄養を取ることで回復します。致死率は10%ほどだということです[3]。
予防には、感染した犬やウィルスに汚染されたものとの接触を避けるしかありません。また、犬が感染したら他の犬から隔離する必要があります。H3N2への感染の場合は21日間、H3N8型への感染の場合は7日間の隔離が必要とのことです[3]。
日本での犬インフルエンザは確認されていませんが、いつどんな形で侵入するかはわかりません。ただし、国内に持ち込まれて感染が起きたとしても、適切な対処により流行や定着を防止することは十分に可能です。今のところは心配しすぎることなく、「犬のインフルエンザってこういうもの」という知識を頭の隅に置いておく程度で良さそうです。
犬もノロウィルスに感染するのか?〜ヒトから犬にうつることはあるの? | the WOOF
寒い時期になると気になるのはノロウイルス感染症。年間を通して発生はみられますが、11月くらいから発生件数が増加し始め、12月から翌年1月が発生のピークとなる傾向があるそうです[1] 。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] インフルエンザ患者数 統計開始以降最多に 前週比112万人増 | NHKニュース
[2] Recent Dog Flu Outbreak Worries Pet Owners | Time
[3] Canine Influenza: Pet Owners’ Guide
[4] Recent Dog Flu Outbreak Worries Pet Owners | Time
[5] 堀本泰介. (2017). 犬インフルエンザ. 日本獣医師会雑誌, 70(3), 165-169.
Featured image credit Margarita Mindebaeva / Shutterstock