犬といえば肉球マークと骨マークのイメージがありますよね。犬が骨にかぶりつく野生的な姿を微笑ましく思う人も、多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ところで犬は、骨を”食べて”も良いのでしょうか?栄養上のメリットは、何かあるのでしょうか?
食事の一部としての骨
今回この記事で扱うのは、食事の一部としての骨です。レクリエーションや歯固めのために与えられるオモチャの骨や、骨型のオヤツは別記事で扱います。
狩猟をしていた時代の犬は、生の骨も食生活の一部でした。現代の犬はその頃の犬とは様々な面で異なりますが、身体の器官や機能については大きく変わってはいません。歯、胃、腸、肝臓、腎臓、心臓などの機能と役割は、その頃とほぼ同じだと考えれば、現代の犬にとっても骨が食事の一部であってもおかしくはりません。
骨には犬が求める栄養素が含まれており、それは現代ワンコの健康にも良い効果をもたらします。ただし、全ての骨が安全かといえばそうではなく、骨に含まれる栄養素が他ではとれない特殊なものかといえばそういうことでもありません。
骨に含まれる栄養素
骨の成分についての有益な情報が、『The Nutritional Aspects of Bone Composition』(T. J. Dunn, Jr., DVM)にまとまっていました。骨の成分評価(乾燥させて重量基準によって行われた評価)について、以下の記述があります。
- 「骨の無機マトリックスは、リン酸カルシウムを主成分とする微結晶構造を有している」(W.B. Saunders Co.、p.112)
- 人骨の65〜70%はリン酸カルシウムであり、残りの30〜35%のうちのほとんど(95%)はコラーゲンである(Orthopaedics: Principles and Appications, Samuel L. Turek, M.D., J. B. Lippincott, 1985, 2nd Edition)
- コラーゲンは犬と猫ではほとんどが消化不良(Canine and Feline Nutrition by Case, Carey and Hirakawa, 1995, page 175)
すなわち、骨の70%はミネラルで、カルシウムとリンの良い供給源になりますが、そのほかの栄養素は補給できません。
骨を与えても安全か?
なんらかの理由で、犬にカルシウムとリンを補給したいとしましょう。その場合に、骨を与えても良いのでしょうか?まず気になるのが、犬にとって骨が安全かという点です。
調理済みの骨は、かなり危険な”食べ物”です。焼いた肉や燻製になった肉の骨は脆くなっており、胃腸管を通過するとき内臓に傷をつける可能性があります。アメリカの食品医薬品局(FDA)は、2010年11月1日から2017年9月12日までに、商業的に入手可能な燻製または焼いた骨を食べた後に病気になった犬は90匹、うち15匹の犬が死亡しているとの報告を受けています[2]。
未調理の骨は、破損のリスクは低くなりますが、飲み込むことでの窒息や閉塞、さらには歯の損傷のリスクがあります。また、骨が長時間放置されている場合、サルモネラ菌のような植物媒介最近に侵食されている可能性があり、感染のリスクが高くなります。
カルシウムを補給したい場合には、必ず獣医師に相談をしてから与えるようにしましょう。栄養素はバランスさせることが大切であり、一つ二つを突出させると逆効果や副作用に繋がる恐れがあります。カルシウム過剰は他のミネラルの吸収を抑制しますし、リン過剰は腎機能の低下をもたらします。
調理済みにせよ生にせよ、骨をそのまま与えるのは危険です。
どうしても骨を与えたい場合は、骨を完全に粉砕して粉末状にして与える方法がベストです。骨のような噛みごたえのあるものはオモチャで代替できますし、ミネラルの補給は肉や魚などに含まれています。市販の骨粉末やサプリメントなどを利用するのも良いでしょう。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Exercise Caution When Giving Your Dog a Bone – American Kennel Club
[2] Can Dogs Eat Bones? Raw & Cooked Bones for Dogs | petMD
[3] The Nutritional Aspects of Bone Composition | petMD
Featured image creditRoberto Nickson (@g)/ unsplash
愛犬に与えるべきでない5つの危険なオモチャ | the WOOF イヌメディア
犬のオモチャでは、運動欲求や知的欲求を満たすものであり、退屈を忘れさせるもの。問題行動の抑制に繋がるものでもあり、贅沢品ではなく必需品です。 ただ、適切なものを与えなければ、思いもよらない事故にもつながります。 硬すぎません? image by Alan Levine / Flickr …