嗅覚?それとも”母”の直感?8キロ離れた場所から低血糖を感知した糖尿病探知犬

お仕事ワンコ
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犬たちの嗅覚は非常に優れていることは、皆さんもご存知のとおり。

嗅細胞の数が多いこと、鼻の構造、脳における匂い分析エリアの大きさなどにより、犬が匂いを嗅ぎ分ける能力は人間の1000倍から1万倍優れていると推定されています[1]。彼らの嗅覚は、遠隔地の匂いを嗅ぎ分けることも可能で、3-4キロ先の匂いなら感知できるという専門家もいます。

でも、その距離がもっともっと離れていたらどうでしょう。たとえば8キロほど離れている場所なら?それでも犬は、匂いに含まれるメッセージを受け取ることができるのでしょうか。

低血糖リスクを知らせる糖尿病(低血糖)探知犬

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image by Sadie’s Hero / Facebook
”8キロ離れた家族の命の危機を知らせた”と語られているワンコがいます。米国ユタ州に住むラブラドール・レトリバーの”ヒーロー(Hero)”がそのコ。ヒーローは、ダウン症と糖尿病を患う4歳のセイディ(Sadie)を支える糖尿病探知犬(低血糖探知犬)です。セイディは、インスリンを作るすい臓のランゲルハンス島が働かず、インスリンが全く(またはごくわずかしか)作られなくなっているタイプの糖尿病[2]であり、血糖値を安定させることが困難です。

血糖値が正常値から外れた時は、インスリン摂取を行うなどの措置が必要です。しかし、血糖値の低下は突然に起こるので、そばについている家族ですら気づくことは難しいとのこと。

そこでこの”命に関わる異常”を感知し、家族に知らせてくれる犬たちの登場です。彼らは低血糖の患者が発する匂いやサインを嗅ぎ分け、それを行動で家族に知らせるよう訓練されています。

おとなしい犬が警告を発し続けた

頑張っているセイディに寄り添うヒーローも、そんな厳しい訓練を積んだ探知犬。彼は、その時が来たらキュンキュンという鳴き声を発したり、家族の腕に肉球やマズルを乗せることで「異常があるよ」と警告します。血糖値が100を下回ると左腕にポン、200を超えてくると右腕をトン。状況に応じて警告の仕方も異なるというから驚きです。

そんなヒーローが昨年末のある日、警告を発するようにキュンキュンと鳴き続けるという事件が起こりました。普段なら「良い仕事をしたね」で済むところですが、その日その時、セイディは家から8キロ離れた学校に行っており不在です。鳴く必要はないはずなのです。「ヒーローは、とっても静かな犬。キュンキュン鳴くというのは、彼の”行動規範”には存在しないのです。ですがその日、彼は突然に鳴き始め、鳴き止むことはなかったのです」と母親のミシェルさんは語ります[3]

混乱した家族ですが「本当に、念のためにと思って」学校に電話をしてみることに。すると時を置かずして血糖値の急激な低下によりセイディは倒れてしまいます。糖値が低い状態は糖尿病性昏睡を招き、最悪の場合死に至ることもあるといいますが、措置が早かったため、セイディは一命を取り留めました。

匂いで警告したのか、それとも”母”の愛なのか?

ヒーローは、8キロ離れたところからセイディの異常を嗅ぎ分けることができたのでしょうか。母親のミシェルさんも、セイディが通う小学校の先生も、信じられないと口を揃えます。

糖尿病探知犬の訓練所Tattle Tale Scent Dogsのオーナーであるオウエンズ氏(KC Owens)によれば、犬たちは彼らが持つ何億もの嗅覚受容体により、およそ2マイル先(3.2キロ先)までの匂いは認識できると語ります。じゃあ、8キロならどうなのでしょう?”何か”が起こったのではないかというのがオウエンズ氏の見解。「説明は難しいですね。神の領域かな。”母の直感”なんじゃないかと思います。犬たちは私たちの理解を超えた能力や感覚を持っていますからね」[3]

危険を感知したのか、虫の報せか、それとも”母”の直感か?いずれにせよ、彼が家族にとっての”ヒーロー”であることは、間違いがないようです。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] スタンレー・コレン. (2014). 犬と人の生物学: 夢・うつ病・音楽・超能力.
[2] 糖尿病 病気の基礎知識|アステラス製薬|なるほど病気ガイド
[3] Alert dog for diabetes senses blood sugar drop miles away, warns family | KUTV

Featured image from Sadie’s Hero / Facebook

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