私たちの大切なパートナーであるワンコには、できるだけ長く元気にそばにいてほしいものですよね。見た目にはものすごく元気なワンコでも、老いはひしひしと訪れているようです。

今回と次の2回に分けて、アメリカの統合獣医療ジャーナルに紹介されている“老齢動物に対する統合医療※とホスピスケア”から、ワンコのエイジングケアについてお話します。老齢とはいつからなのか、老齢期には何が起こるのか、元気シニアをつくるためには何をすべきか、といった内容です。

※ 統合医療とは：一般の病院で行われている手術や診療などの近代西洋医学に、鍼灸やマッサージ、漢方などによる治療―代替医療や伝統医療－などを組み合わせ、患者のクオリティオブライフをさらに向上させるための新しい医療体系です。

犬はいつ頃から”老齢”なの？

ワンコは何歳ごろから老齢（シニア）といわれるのでしょうか？アメリカのMetzger動物病院（Metzger Animal Hospital）で使われている年齢換算表によると、中型犬や大型犬では6歳から、小型犬では9歳から老齢といわれています。

老齢ワンコにはどんなことが起きるの？

老齢（シニア）期に突入したワンコたちは、どんな変化に直面するのでしょうか。シニア犬ならではの変化を以下にまとめておきます。

・失禁

失禁の原因は、加齢のほかに感染やエストロゲンの不足、肛門腺の異常、悪性腫瘍（癌）、寄生虫感染、膀胱結石などがあるので、まずはこのような病気ではないかを検査してもらう必要があります。

老化による失禁に対するホリスティックアプローチとして、以下のものがあります。

・ごはんをローフードに変えてみる：市販のドライフードを食べていると、飲水量が多くなるため、尿量も増えてしまいがちです。ローフードには水分が多く含まれているので、飲水量が少なくなり、失禁が軽減したという報告があります。

・ダブルウォーキング：散歩にでると腸が刺激を受けて便意をもよおすワンコが多いのですが、1回目の散歩では外界の刺激が多すぎて、トイレを忘れてしまう高齢ワンコもいるようです。そのため、1回目の散歩が終わったあとすぐに2回目の散歩に出かけると、落ち着いてトイレを済ますことがあるそうです。

・のどの老化

日中は咳をしないのに、朝方だけ淡が絡むような咳をするようになった…。そんなサインがみられたら、動物病院でチェックしてもらいましょう。のどの奥にある喉頭という部分に異常が生じているかもしれません。甲状腺機能低下という病気にかかると、喉頭麻痺という症状を発生することがあるので、まずは、甲状腺機能に異常がないかを確認してもらうことが大切です。老化による喉頭の異常には、鍼灸が効果的といわれています。

・ドライノーズ

ワンコの鼻が乾燥する原因には、自己免疫性疾患や栄養的に何かが不足している場合があります。健康な高齢ワンコでも鼻が乾燥することがあります。ドライノーズの原因が病気ではなく加齢による場合には、ヴァセリンを乾燥した鼻につけてあげると効果的だそうです。その他にも、シアバターやココナッツオイルでも効果があるそうです。ココナッツオイルは、1日1回適量（13 ～22 Kgのワンコに対して小さじ1杯）をごはんに混ぜて与えることにより、ドライノーズやふけ、被毛の向上、胃腸機能の増進に効果があるといわれています。

プラスティック製のフードボウルやドリンクボウルに鼻や口の皮膚が接触することで刺激になることがあるため、セラミック製の容器に変えてみるとよいかもしれません。

・嗅覚の低下

ワンコの食欲低下は、歯の異常や全身性疾患、悪性腫瘍（癌）など様々な病気により起こります。しかし、病気ではなく健康なのに食欲が減退したら、その原因は嗅覚の低下かもしれません。高齢ワンコ、特にこれまでに呼吸器疾患に罹ったことがあるワンコや抗炎症性薬剤を長く服用しているワンコなどは、においがしなくなって食べ物への興味が薄れている可能性があります。

そんなワンコには、食べ物のにおいをアップさせるため、こんなトリックを試してみると効果的かもしれません。

• ごはんを少し温める
• ごはんに温かいお湯を少しかけてミックスする
• ごはんにチキンスープ（人用のチキンスープではありません。チキンを煮た塩分などの入っていないスープです）をかける
• バニラアイスを少量トッピング
• サーディン（スプリングウォーターに入ったイワシの缶詰）をミックス

食欲低下といっても、朝食だけを摂りたがらない高齢ワンコもいるようです。これは腸をきれいにするための自然行動ではないかと考えられています。体重が減ることなく、朝食だけを摂らない場合は、あまり心配することはないかもしれません。

人間と同様に心と身体の衰えに直面するシニア犬たち。いつまでも活発ないきいきシニア犬でいてもらうために、私たちに何ができるのでしょうか。

次回は健康シニア犬をつくる食餌、エクササイズ、そしてマッサージについてお話しさせていただきます。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。Web上の文献については、筆者が文献を参照した時期も記載しておきます。
[1] 日本統合医療学会、“統合医療とは” （2016年3月29日参照）
[2] 統合医療情報発信サイト、“統合医療とは”（2016年3月29日参照）
[3] William D.Fortney、犬と猫の老齢医学、丸尾幸嗣訳、東京、インターズー、2005
[4] Barbara Royal, Integrative Approach to Geriatric and Hospice, Integrative Veterinary Care Journal,2014, （2016年3月29日参照）
[5] Allen M. Schoen,Veterinary acupuncture Ancient art to Modern Medicine, 2nd Ed, Mosby,2001
[6] Sandi Rogers, Canine Myofunctional therapy textbook, National college of traditional Medicine,5th ed,2008

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