犬の健全な繁殖のために複数のスクリーニングを実施してほしい〜英国研究者が提言

サイエンス・リサーチ
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イヌの遺伝病を減らすなどの目的で、DNA検査を経たうえでの計画的な交配が行われています。

遺伝的にアフェクテッド(変異型/変異型)の犬をこれ以上増やさないことが遺伝病をなくす最も有効的な手段[1]であるという考え方に基づくもので、日本でも一般社団法人ジャパンケネルクラブ公益社団法人 日本警察犬協会では交配するイヌなどのDNA登録を求めています。

イヌの繁殖とは、犬質を向上させる目的で行われる行為であり[2]、そのためには犬種内での遺伝子上の多様性を守ることも重要です。外見や証明書等で正確な遺伝子情報を得ることは不可能あり、これを調べる技術として様々な検査ががあります。

ひとつの検査を行うだけでも遺伝病の犬の誕生を減らすことにつながるのでしょう。しかし、より良い結果を求めるのであれば複数のテストを併用したほうが良いそうなのです。遺伝子検査だけでなくヘルススクリーニング(適格検査)結果、血統書情報を活用することが、遺伝性疾患を減らして遺伝子の多様性を維持する道だとする研究論文を、エジンバラ大学ロスリン研究所(the University of Edinburgh’s Roslin Institute)の研究者たちが発表しました[3]

純血種犬は、犬種がもつ理想的な特徴を維持するために、何年もの間、同血族内の犬同士で交配されてきました。これは、身体や性質などの特徴だけでなく、遺伝性疾患や先天的な弱さをも受け継ぐことを意味します。例えば、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、その約半分が心雑音を発症すると考えられています。

DNA検査は、重度疾患を引き起こす遺伝子変異の特定に役立つものであり、病気の遺伝子をもつ犬の誕生を減らすものとして注目されています。しかし、計画交配をDNAテスト結果のみに基づいて行うことは、遺伝子プール(その集団がもつ遺伝子全体)を減らすことになり、近親交配を増やすことにつながると研究者たちは警告しています。また、テストされなかった他の遺伝子病の有病率を増やすことになりかねないとも語っています。

論文の筆頭著者であるファレル博士(Dr Lindsay Farrell)は、「犬が特定の遺伝子変異をもつ場合でも、絶対にその病気を発症するわけではありません。繁殖を決定する際、遺伝子検査と共に、ヘルススクリーニングと血統を確認したうえで検討すること必要です。これが、遺伝子の多様性をできるだけ保持できる方法なのです」という見解を示しました。

 

h/t to Dog DNA tests alone not enough for healthy pedigree, experts say — ScienceDaily


[1] 犬の遺伝病検査 - IDIDA JAPAN
[2] 中澤秀章. (2013). 犬の繁殖学. 一般社団ジャパンケネルクラブ, 『愛犬飼育管理士教本 2013年版』 (pp. 89–98).
[3] Farrell, L. L., Schoenebeck, J. J., Wiener, P., Clements, D. N., & Summers, K. M. (2015). The challenges of pedigree dog health: approaches to combating inherited disease. Canine Genetics and Epidemiology, 2(1), 1–14. http://doi.org/10.1186/s40575-015-0014-9

 
Featured image by Igor Zakowski via shutterstock

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