人間同士でも「薬の共有」は危ないもの。症状が同じだと考えたとしても、他の人に処方された薬をもらって飲むのは、かなり危ないことです。
動物病院で、人間用薬がペットに処方されることはありますが、それは個体の症状に合わせた成分を含む薬を正しい用量で飲むから良いのであって、単純に「この症状だからこの薬」のようには割り切ることができないものです。
アメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)の下位組織に当たるASPCA Animal Poison Control Center (APCC)によれば、同センターに寄せられる緊急電話(年間)の約四分の一は人間用薬に関するものだそう。犬が口にする原因は、落ちた薬を拾う場合や犬がいたずらするなどの’事故’の他に、飼い主が与えるケースもあるとのこと。いずれにせよ最悪の場合は死に至ることもあると警告しています。
犬には危険な10の人間用薬(成分)
APCCはこのたび、ペットにとって危険な10の人間用薬(成分)を発表しました。同組織が受けた緊急電話の多い順番にリストされています。
1. イブプロフェン(Ibuprofen)
鎮痛剤、解熱剤としておなじみのイブプロフェンです。市販されている鎮痛剤には、甘みを付加するコーティングが施されることが多く、これが多くのワンコを惹きつけます。ペットが口にすると胃潰瘍や肝機能障害を起こすことがあります。
2. トラマドール(Tramadol)
トラマドールもまた鎮痛剤の一つであり、様々な種類の疼痛に対する緩和が期待されているもの。犬の鎮痛薬として注目されており、動物病院などで投与・処方されることがある薬剤です。疼痛を軽減できる効果が確認されている一方で、呼吸器系や循環系への影響を含む様々な影響が確認されており、慎重に投与・観察をすべきとされる薬です[2]。
3. アルプラゾラム(Alprazolam)
アルプラゾラム(Alprazolam)は、抗不安薬および筋弛緩薬の一種の処方を要する薬。ペットが口にすると、眠くなったり身体の安定を欠くような症状が出ることが多いのですが、稀に活発さを増してしまう個体もあるそうです。寝る前に飲むためにとベッドサイドに置いてあった薬剤をペットがパクリしてしまうことがあると言います。ペットが大量に摂取すると、血圧が下がり倒れてしまうこともあるそうです。
4. アデラール(Adderall®)
Adderall®とは、ナルコレプシーやADHDの治療に用いられるアンフェタミンの商品名。日本では、アンフェタミンは覚せい剤取締法で覚せい剤に指定されているため、医療用途として正式に認められたアンフェタミン製剤はない[3]ので、犬が誤飲した!という事案は起こりそうにありません(多分)。ペットが口にすると心拍や体温が急上昇し、興奮や痙攣、発作を引き起こすことがあります。
5. ゾルピデム(Zolpidem)
ゾルピデムは睡眠導入剤に用いられる化合物。マイスリーという商品名で処方されています。こちらも、ベッドサイドに置かれたものをペットがパクリしてしまう事例が多いそうです。猫が口にするとぐったりして眠くなる一方、他の動物だと非常に興奮したり心拍数が急上昇するそうです。
6. クロナゼパム(Clonazepam)
クロナゼパムは、抗てんかん薬、筋弛緩薬であり、抗不安作用も有する薬物です。ランドセンやリボトリールという商品名で発売されています。ペット動物が口にすると、フラフラしたり眠くなったりします。多量に摂取すると血圧低下によりぐったりしたり倒れたりします。
7. アセトアミノフェン(Acetaminophen)
タイレノールという商品名で有名なアセトアミノフェンは、解熱鎮痛剤の一つで、発熱や寒気、頭痛などの症状を緩和します。猫はこの薬剤に非常に敏感に反応しますが、犬やその他のペット動物にとっても肝臓にダメージを与える薬剤です。
8. ナプロキセン(Naproxen)
ナプロキセンは、鎮痛、解熱、抗炎症役として用いられる非ステロイド性抗炎症薬で、ナイキサン、サリチルロン、ナロスチンなどの商品名で発売されています。犬も猫も非常に過敏に反応する薬剤で、ほんのすこし口にしただけで胃潰瘍や肝機能障害を引き起こすと言われています。
9. デュロキセチン(Duloxetine)
デュロキセチンは抗うつ剤の一つで、日本では2010年からサインバルタの商品名で知られているものです。ペット動物が口にすると、興奮、吠え、震えや失神などを引き起こします。
10. ベンラファキシン(Venlafaxine)
ベンラファキシンは抗うつ剤の一つで、商品名イフェクサーで知られています。理由はわかっていませんが、猫はこの薬が好きだとAVMAは伝えています。ペット動物が口にすると、興奮、吠え、震えや失神などを引き起こします。
薬の取り扱いには十分すぎる注意を
Featured image credit Jörg Schubert / Flickr
人間用薬の誤食による不幸な事故を未然に防ぐために、以下を心に留めておいてください。
- 人間用の薬は肉球の届かないところに置くこと
- ペットにとって薬のパッケージを噛み千切るのは簡単なこと。だから「パッケージに入っているから大丈夫」は大きな間違い
- 薬を落とさないように注意する。落としたらすぐに拾うこと
- 動物用に処方された薬以外を口にした時は、すぐに獣医師の診断を仰ぐこと
- 獣医師の処方なしで人間用薬を投与しないこと
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] 10 “Poison Pills” for Pets
[2] 犬の麻酔・疼痛管理におけるトラマドールの適応 北海道獣医師会
[3] アンフェタミン – Wikipedia
Featured image credit Jörg Schubert / Flickr
犬が食べると毒になるものリスト2015(米ASPCA)〜第1位は人間用市販薬 | the WOOF
アメリカ動物虐待防止協会(ASPCA: The American Society for the Prevention of Cruelty to Animals)は3月3日、”犬が食べると毒になるものリスト(the Top Pet Toxins of 2015″を発表しました。