ワンワン吠え続けたり、威嚇するような行動をとったり、あるいはひたすらに脚を舐め続けたり…。愛犬たちはなぜそうした”問題行動”と呼ばれる行動をするのでしょうか。
ここでは、犬が困った行動をするときの代表的な10の原因をリストアップしています。これらの原因は行動に直接結びついていることもありますし、隠れていることもあります。複数の理由が絡み合っているかもしれません。「あれ、いつもと違うな」とか「ちょっと心配だな」「困ったな」と思ったら、まずは獣医師に相談してください。
1. 遺伝的傾向
行動の問題には遺伝的な原因があることもあります。攻撃的な行動から多動性の行動まで、犬が親から受け継いだ行動に影響されます。
犬の行動は遺伝だけでなく生育環境などにも影響されますから、良い環境で十分な社会化がなされていれば遺伝的傾向を克服できることもあります。しかし、どんなに良い社会化プログラムを受けたとしても行動上の問題が生じることがあり、これらは行動修正で対処することは難しいと言われます。
2. 健康上の問題
健康上の問題は私たちが考える以上に、多くの行動上の問題を引き起こします。私たちと同じように、犬も体調が不安定なときや痛みがるときは、不機嫌になったり攻撃的になったりする可能性があります。
犬の行動を変化させる可能性のある健康上の問題には、関節炎、股関節形成異常、膝蓋骨脱臼、歯の痛み、甲状腺の問題、てんかん/発作、耳の感染症、消化器の問題、皮膚や環境のアレルギー、感染症、難聴、失明、がんなどがあります。攻撃性や他の行動の問題が突然現れたら、まずは獣医に連絡してください。上記のような健康上の問題が原因で、犬が不安や痛みを訴えている可能性があります。
3. 不十分な社会化
社会化とは犬に、他の犬や人間、音、モノなどの様々なものをポジティブに経験させるプロセスです。犬は、幼い子犬から始まり、生涯を通じて人間社会に溶け込む必要があります。3~16週齢は最も重要な社会化期間(感受期)であり、この期間にできるだけ多くの経験をさせることで、自信があり行儀の良い犬になる傾向があります。逆に、この期間に十分な社会化が行われなかった犬は、さまざまなものに恐怖心を抱き周囲を攻撃しがちな政権になるおそれがあります。
4. 十分に訓練されていない
私たちと同じで、犬も正しい振る舞いがなんであるかを知らなければ、実行することはできません。「行儀のよい」とか「正しい振る舞い」は人間の概念であり、犬には「良い」と「悪い」の行動の違いを知り自然に行動することは期待できません。
飼い主が望むような振る舞いをしてもらうには、その行動をするように訓練する必要があり、毎日10分から15分(複数回に分けても良い)、とにもかくにも繰り返して、正しい行動を覚えてもらいます。毎日のトレーニングなくしては、犬が行動を学ぶことは期待できません。
病院や美容院での振る舞いについても、家で練習しておく必要があります。普段は自由奔放に振る舞うことが許された犬が、病院や美容院で行動を制限されれば、恐怖や不安やストレスで吠えたり噛んだりすることが考えられます。新しい場所でのどう振る舞って良いのか戸惑うのは犬もおんなじ。本番で落ち着いた行動ができるように、事前に様々な状況を想定した練習を積んでおくと良いでしょう。
5. 否定的な経験
社交性の高い犬でも、否定的な経験をすると行動上の問題を起こすことがあります。庭にいるときに他の犬に襲われたり、子ども尻尾を引っ張られたりするのは、犬の行動に悪影響を与えます。動物病院、トレーニングクラス、美容師などでの経験不足も同様です。古い理論(支配の原理など)に基づいた力に任せたトレーニングは、一時的には悪い行動を引っ込めるかもしれませんが、長期的には悪い行動のきっかけとなることもあります。
6. 報酬を与えている
飛びつきをやめて欲しいから抱っこしたり、ワンワンと吠えたから「やめなさい!」と怒鳴るなど、犬の行動に反応してはいませんか?もしかしたら犬たちは、あなたが反応してくれることが嬉しくて、その行動をしているのかもしれません。
やめて欲しいと思う行動があるならば、犬に反応するのはやめましょう。話しかけたり触ったり、アイコンタクトはせず、完全に無視して望ましい行動(黙る、座る)がでるのを待ちましょう。このとき、あなたは行動に一貫性を持たせなければなりません。昨日はOKしていたのに今日はダメとか、パパは抱っこするけどママは無視では、犬も混乱してしまいます。不安や混乱は問題行動を強化してしまうこともありますので、一度決めたら愛犬が学ぶまで頑張って続けましょう。
7. 生活の変化
生活習慣の変化は、犬にとってストレスとなり、問題行動を起こす原因となることがあります。転居、仕事のスケジュール変更、家族が増える・減る、新しいペットが加わるなどの大きな変化は大きなストレスになりえます。犬が変化への適応に苦労していることがわかったら、安心させるように環境を整えるなど、忍耐強く見守り導きましょう。
8. テストステロンの過剰分泌
ホルモンは犬の行動に大きな影響を与えます。特にテストステロンは雄犬をより支配的にし、より縄張り意識を持たせ、他の犬との争いに積極的にします。多くの場合、去勢により穏やかな性質になると言われますが、一方でもともと臆病な気質の犬では自信を高めるなどの良い影響を与える可能性もあると言われます。ホルモンが行動に影響することは間違いありませんが、去勢するか否かの決定にあたっては、その他の要因とあわせて総合的に判断する必要があります。
9. 刺激不足
犬が幸せでいるためには、運動が絶対に必要です。どの程度の運動が必要かは犬種や年齢によっても異なりますが、一般的には毎日2回、30分間ほどの運動が必要だと言われます。
また同時に、精神的刺激も不可欠です。パズルオモチャを使用したり、フードを隠して遊んだり、新しいトリックを学んだりすることは、肉体的な運動と同様に楽しく、犬を疲労させます。
10. 年齢による問題
子犬は、脳が発達するにつれて”恐怖”を学びます。最初の時期は一般に8~12週齢前後であり、もう1つの時期は5~6カ月齢前後と言われます。この時期には今まで平気だったものを恐れはじめ、困った行動もあらわれます。また、生後3ヶ月ごろからは歯の生え変わりが始まります。大人の歯に生え変わるまでの期間は、口の中などに違和感があるため、なんでも噛み噛みします。
シニアになると、目や耳が不自由になることや、関節炎などの痛みなどによって不安が引き起こされ、今までにはみられない行動を起こす犬もいます。この他、犬によっては認知症により夜鳴きするなどの行動がみられることもあります。
年齢特有の問題は、薬や治療、環境整備により緩和できることもあります。獣医師に相談し、より良い方法を探ってみてください。
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