受動喫煙は犬の健康にも悪影響(1)〜環境たばこ煙に含まれる有害物質は多くの疾患を引き起こす

健康管理
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受動喫煙が恐ろしいことは、最近では多くの人に知られていますが、犬の健康をも脅かすことがあることはご存知でしょうか。

「煙は上に吐き出しているんだから、足元にいるワンコに害はないんじゃない?」「外で吸ってきたんだからOKでしょ」という意見もあるかと思いますが、犬たちにも受動喫煙(間接喫煙または二次喫煙ともいう)による健康被害はあるのです。

受動喫煙ってなんだろう

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タバコより、棒の方がいいよ! image by Grant / Flickr
受動喫煙とは、非喫煙者が喫煙者のタバコの煙を吸わされること[1]ですが、より正確にいうと”喫煙により生じた煙を発生源とする有害物質を含む環境たばこ煙(ETS)に曝露され、それを吸入すること”です。間接喫煙、セカンドハンドスモークともいいます。

受動喫煙により起こると報告されている病気は、すぐに現れる症状から、長期的な影響まで様々です。多くの研究から、受動喫煙と疾患やほかのリスクとの関連が明らかになってくるにつれ、日本でも禁煙の推進と分煙化の動きが広まりました。妊婦さんや子供に対する配慮を広げるほか、厚生労働省の旗振りで職場における受動喫煙を防止する動きも益々広がっています。

研究では、タバコの煙には20ほどの発がん性物質が含まれていることがわかりました。受動喫煙によって、一酸化炭素、ホルムアルデヒド、ヒ素、ベンゼン、クロム、ニッケル、そして塩化ビニルなどの4,000以上の化学物質を、吸い込む恐れがあるとも言われています[2]

この受動喫煙ですが、人間だけでなくペット動物の健康にも悪影響を及ぼすことがわかっています環境たばこ煙の有害物質は床面に滞留しやすく、体高の低いペットたちが被害に遭いやすいという話もあります。犬、猫、うさぎ、鳥といった小さな家族に苦しい思いをさせているのは、環境たばこ煙なのかもしれないのです。

犬の健康を脅かすタバコの有害物質

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タバコを吸いたくなったら、棒をかじればいいんだよ image by Jean Flanagan / Flickr
「多くの研究結果が、犬の肺の組織は受動喫煙により変化することを示しています」と語るのは、Texas A&M College of Veterinary Medicine & Biomedical Science (CVM)のWilson-Robles准教授(当時)。「この”変化”は、繊維症(肺胞に傷ができること[3]や肺組織が前がん状態(臨床的にがんができる確率が高いと考えられる病的状態[4]から、悪性腫瘍まで様々です」

よく「タバコを吸うと肺がんになるよ!」なんて言いますが、吸う人だけでなく吸わない人も、そして吸わない動物たちも、環境たばこ煙にさらされることでがんになる恐れが高まるようです。

米国最大の動物愛護団体である米国動物虐待防止協会(ASPCA The American Society for the Prevention of Cruelty to Animals)は、環境たばこ煙”ペットにとって毒になるもの”と位置付けています。

受動喫煙に含まれるニコチンは、猫や犬の神経系に影響する。環境タバコ煙(ETS:environmental tobacco smoke)は、多量の発がん性物質が含まれていることが示されており、これは人間のみならず動物たちにも危険である
–Dr. Sharon Gwaltney-Brant, medical director of the ASPCA’s Animal Poison Control Center:

受動喫煙により起こるとされる病気など

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棒、大好き。サイコー! image by Michael Simmons / Flickr

1970年代にはすでに、タバコの煙が犬の肺に悪影響であるという研究結果が複数発表されています。現在であれば大問題になりそうな、犬たちにタバコを吸うことを教え込んで肺組織の変化を調べる実験もありました。犬が自らタバコに火をつけてスパスパという状況は考えづらいので、ペットへの影響を考えるのであれば受動喫煙の研究を紐解く方が適していそうです。

2007年の研究では、喫煙者のいる家庭で暮らす犬の尿からコチニンが検出されたことが報告されています。コチニンはタバコ属に含まれるアルカロイドで、高用量を投与すると重度の興奮や呼吸困難が現れる有害物質です。非喫煙家庭の犬からは検出されなかったことから、犬が受動喫煙のリスクにさらされていることがよくわかります[5]

受動喫煙で犬たちは、どのようなリスクに晒されているのでしょう。人間と同様に、肺がんのリスクが高まることが研究によりわかっています。このほか、目や喉の痛みを感じたり、アレルギーに悪影響を及ぼしたりもするようです。受動喫煙により引き起こされる病気なととして、以下のものが挙げられます。

  • 咳やくしゃみ
  • 呼吸器系の障害、気管支炎、(猫)喘息
  • 唾液の分泌過剰
  • 嘔吐、下痢
  • アレルギーの発症・悪化
  • 肺がん・鼻腔がん
  • (猫)口腔がん、リンパ節腫瘍

空気清浄機などは、ニオイを取るという意味では効果を発揮しますが、有害物質の除去に対してはあまり効果を発揮しないそうです。愛犬に有害物質を吸わせたくないのなら、禁煙するのが最も良い解決方法であることには、疑問の余地はありません。

「うん、うん。タバコはダメだよね。わかるよ。でも、外で吸うのもダメなのかな?」という質問には、三次喫煙の事も考えてみてね!というのがthe WOOFの答え。次回は、三次喫煙に関する記事を配信します。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] 受動喫煙とは – 時事用語 Weblio辞書
[2] How Does Second-hand Smoke Affect Your Dog? – The Dogington Post

[3] 塩野義製薬 | 特発性肺線維症について(IPF)
[4] 前がん状態(ぜんがんじょうたい)とは – コトバンク
[5] Roza, M. R., & Viegas, C. A. A. (2007). The dog as a passive smoker: Effects of exposure to environmental cigarette smoke on domestic dogs. Nicotine & tobacco research, 9(11), 1171-1176.

Featured image from Mark Wyman / Flickr

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