犬は飼い主に幸せと健康をもたらす存在ですが、残念ながら常にプラスの影響を与えてくれるわけではありません。4本脚の可愛い家族は、人間を病気にする細菌も運んできます。
人が犬からの細菌に感染し病気になることは多くはありませんが、軽度の皮膚感染症から重篤な疾患までさまざまな病気を引き起こす可能性はあるのです。これらは「人畜共通感染症(人と動物の共通感染症、動物由来感染症)」と呼ばれています。
人畜共通感染症はたくさんあるの?
VCAによれば、動物から人間に伝染する可能性がる病気は100以上。犬、猫、鳥、馬、牛、羊、山羊、そしてウサギなど、家畜やペットは全て、病気を人間に広める可能性がある存在です。しかし、実際に感染が起こることはめったにありません。国立感染症研究所のページには31の疾患が掲載されていますが、動物からの感染により発症した例は一般的ではないのです。
ただし、病気や薬の作用により免疫システムが脆弱になっている人などは、リスクはわずかに高くなります。たとえばエイズ/ HIV感染者、化学療法または放射線療法を受けている人、高齢者や慢性疾患のある人、先天性免疫不全のある人、臓器または骨髄移植を受けたことがある人、妊娠中の女性などがこれに該当します。
イヌからヒトに感染しうる病気
人獣共通感染症の最もよく知られているのは狂犬病ですが、犬から人という経路では他に以下のような疾患があります。
- 白癬(ringworm)
- サルモネラ症(salmonellosis)
- レプトスピラ症(leptospirosis)
- ライム病(Lyme disease)
- カンピロバクター感染症(campylobacter infection)
- ジアルジア感染(Giardia infection)
- クリプトスポリジウム感染症(cryptosporidium infection)
- トキソカラ症(roundworms 回虫症)
- エキノコックス症(Echinococcosis =サナダムシ感染)
- 疥癬(scabies)
- 狂犬病(rabies)
深刻な病気を引き起こす可能性のある病気は?
悪名高き狂犬病は、ヒトではほぼ死に至る病です。日本での狂犬病は1957年以降は発生しておらず、輸入症例では2007年にフィリピンで犬に噛まれて発症した例が報告されています(多臓器不全で死亡)[2]。日本では過去の病気のように扱われる狂犬病ですが、全世界では毎年数万人が狂犬病によって死亡していると言われており、現在も猛威を振るう恐ろしい病です。発症してからは有効な治療法がなく、致死率はほぼ100%ですが、適切な予防措置により予防が可能な疾患です。
サルモネラ菌やカンピロバクター菌、ジアルジア菌による原虫病などの特定の感染性生物は、重度の胃腸炎を引き起こす可能性があります。一般的には感染した動物の糞に汚染された手指を介して感染します。
レプトスピラ症は、極めて深刻な肝臓や腎臓の病気を引き起こすことがありますが、犬から人間への感染はまれです。一般的には、感染動物の尿中に排出された病原体に汚染された水や土壌から感染します。
回虫およびサナダムシは肝障害を引き起こす可能性がありますが、やはりまれです。感染した犬の糞便を直接処理すると、感染しやすい人に回虫の感染を引き起こす可能性があります。ヒトへの感染は、感染した犬の糞便中に放出された卵と接触したことに起因する可能性があります。
白癬および疥癬は、直接の物理的接触を通して比較的容易にうつります。
どうしたら予防できるの?
「我が家の愛犬に虫が見つかった!もう捨ててしまわなければ!」と考える必要はありません。「赤ちゃんができたけど、犬とは一緒に住めないの?」と悩む必要もありません。日常の一般的な注意により、感染を予防することは十分に可能です。
たとえば、以下のような予防をすることで、リスクは格段に低くなります。
- 愛犬に病気の兆候が確認されたら、すぐに獣医師の診察・治療を受けましょう。
- 愛犬が病気の場合は特に注意して、接触した後は必ず手を洗うようにしましょう。
- 愛犬を清潔に保ちましょう。入浴やブラッシング、マッサージなどで身体に触れることにより、皮膚病変を早期に発見する可能性が高まります
- 必要なノミ・ダニ駆除薬を使用し、フィラリアなどの予防薬を与えましょう
- 犬、猫、その他の動物が排尿または排便した可能性のある場所で庭仕事をするときは、手袋を着用しましょう
- お散歩ではウンチを拾い、その場所をしっかりと清掃しましょう。ウンチに直接触れないよう工夫しましょう
- 動物を触ったあとは、必ず手を洗うようにしましょう
- 犬用の食器やベッドなどは、人間家族のものと分けて洗い、保管場所も別にしましょう
- ベッドは定期的に、頻繁に洗いましょう
私の病気を愛犬にうつすこともあるの?
病気は、動物から人間にうつるのではなく、人から犬にうすることもあります。白癬、ムンプス(おたふく風邪)、ノミが一般的な例です。 さらに、カンピロバクターおよびサルモネラ感染による腸炎は、感染した家族から家族の犬に伝染する可能性があります。詳しくは、『ヒトが犬にうつす可能性のある6つの病気』をご確認ください。
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