「泣いていたら犬が慰めてくれた」というのは、割とよく聞く犬ネタですが、本当のところどうなのでしょう。
調べてみたら、「犬は飼い主だけでなく見知らぬ人であっても、泣いている人を慰めようとする」という結論に至った論文がありました。
犬は泣いている人に接近する
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ロンドンのゴールドスミスカレッジのDeborah CustanceとJennifer Mayerは、犬は突然泣き出した人を慰めようとするか、そしてその人が飼い主であるか全くの見知らぬ人であるかによって違いがあるのかを、実験によって確認しました。
実験協力犬は8ヶ月齢から12歳の18匹の中型犬。彼らの行動が環境の影響を受けないようにと、実験は自宅で行われました。執筆者の一人であるメイヤー氏が犬の家を訪れ、犬を無視して会話を始めます。2分間の会話を挟んで、メイヤー氏の泣き真似、飼い主の泣き真似、見知らぬ人のハミングが行われます。これに対する犬の様子はビデオテープで撮影され、研究の目的を知らされていない複数の評価者がこれを評価しました。
結果、犬は会話をしている人やハミングしている人より、泣いている人に接近する傾向があることがわかりました。
見知らぬ人の涙にも反応する
実験状況にハミングが含まれていた理由は、ハミングが犬にとって珍しくて興味深い行動だったからです。もし犬が興味から人に寄っていくのなら、ハミングをする人に引き寄せられたでしょうが、犬はハミングというヘンテコ行動をする人より涙ぐむ人に近寄って行ったのです。
どうやら犬は好奇心からではなく、「泣いている」という状況を理解して人に接近しているようなのです。実験参加犬の18匹のうち、15匹は泣いている人に近づき、そのうちの13匹は服従の姿勢を見せました(残りの2匹は警告または遊びへの誘いを見せた)。その反応は、相手が飼い主であろうと見知らぬ人であろうと、大きな違いはなかったそうです。
「相手が誰かに関わらず、犬は近づいていきました。自分のニーズではなく、人の感情に反応していたのです。これは犬に共感のような慰め行動をすることを示唆しています」とメイヤー氏は述べています。
もっとも若い実験参加犬のラブラドール・レトリバーは、メイヤー氏の泣き声を聞いた直後に氏に接近し、彼女の肩に前脚をかけたということです。
共感か、それとも単なる学習か?
「それじゃあ、犬は人のニーズを理解できるってこと?」と問いたくなりますが、この実験からはそこまで言及することはできません。実験から言えるのは、「犬は泣いている人に寄っていく傾向があるようだ」ということで、犬がどうしてそうするかという点は謎のままなのです。
一つ考えられるのは、泣いている人に接近すれば報酬(愛情やナデナデ)がもらえることを犬が知っていたという可能性です。ただ、もし報酬目的なら、より積極的に飼い主に近づいていく結果になったようにも思えます。
もう一つの考えられるのは、人間の感情に敏感な個体が選択され繁殖されてきた可能性です。研究者の一人は「私たちの感情的手がかりに敏感に反応した犬は仲間として認められ、繁殖されてきたのかもしれない」と語っています。
犬たちがなぜ涙にくれる人に接近し、穏やかに接するのかはわかりません。しかし、犬たちは泣いている人間に”慰め行動”をするというのは、どうやら飼い主の欲目ではなさそうですよ。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Custance, D., & Mayer, J. (2012). Empathic-like responding by domestic dogs (Canis familiaris) to distress in humans: an exploratory study. Animal cognition, 15(5), 851-859.
[2] Companion Animal Psychology: Will a Dog Comfort a Crying Stranger?
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