犬は時間の経過がわかる〜ゴハン時間の遅れも正確に把握している(研究)

サイエンス・リサーチ
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犬猫たちは、私たちが考える以上にしっかりと、時間をわかっているのかもしれません。

ノースウェスタン大学は23日、動物が時間を認識できる明確な証拠を見つけたと発表しました。研究者らは、脳の内嗅内皮質を調べることで、動物が待っている間に時計のようにオンになる一連のニューロンを発見したということです。


犬にも時間の感覚があることは、これまでの研究でも示されていたことですが、それがどのくらいの正しさで認識されているかは、まったくわかっていませんでした。
たとえば、犬が「昨日に比べて今日は、朝ごはんまでに2倍は長く待った」「いつもより長くお留守番をさせられている」などの認識ができるか否かは、誰も答えられなかったのです。

しかしどうやら犬たちは、時間の経過をかなり正しく判断しているようなのです。

今回発表された、ノースウェスタン大学の研究者による研究では、内側嗅覚皮質(MEC:the medial entorhinal cortex)が時間の長さという情報を処理することができることを発見しました。脳のニューロンが時計のように作動し、時間の経過を判断することができるというのです。

論文はNature Neuroscience誌に掲載されました。

嗅覚皮質とは、側頭葉の内側領域に存在して海馬と接し密に連絡する、記憶や空間認知に深く関わる脳の領域です[3]。これまでの研究から、内側嗅内皮質にある格子細胞(grid cell)が空間地図を作成すること、そして海馬の場所細胞がこの空間地図を元に自分の位置を認識して空間認知が行われることが示唆されています。

体験や出来事についての記憶をエピソード記憶といいますが、これには時間や場所、そしてそのときの感情が含まれます。研究計画の立案にあたりチームは、内側嗅内皮質が時間の把握に影響しているのではないかと仮説を立てました。エピソード記憶に含まれる空間情報を符号化しているのだから、時間に関する情報の処理においても何らかの働きをしている可能性があると考えたのです。

この仮説を検証するため、チームは”ドアストップ”と名付けた実験を行いました。マウスがバーチャルリアリティ環境で、実在するトレッドミル上を走るという実験です。

VRを使ったことにより、チームは実験設定を完全にコントロールできるようになります。足に触れる床の感覚や、目に見えるもの、周囲の音を変化させることも可能です。実験ではマウスは、途中に”閉じたドア”という障害物があるトラックを走ることになります。ゴールにたどり着き報酬を得るためには、閉じたドアの前で6秒待ち、ドアが開いたら再び走り出さなければなりません。

マウスたちはトレーニングセッションで、「ドアのある場所」と「ドア前で6秒待つこと」を学習させられます。床のテクスチャを変化させることで、マウスは「このあたりまで来たらドアがある」ということも認識できました。

そして本番セッション。トラック途中のドアは目に見えないように”消され”ます。しかし、どこにドアがあるのかを把握しているマウスらは、ドアがあるはずの場所で6秒間待ち、6秒後にゴールを目指し疾走しはじめたのです。

論文の筆頭著者であるJames Heysはこう説明しています。「ここでの重要なポイントは、ドアが消されているために、マウスにはドアが開いているか閉じているかがわからないということです」

もし物理的に存在するドアを使うなら、ドアの存在や匂い、開閉音などの手がかりによって、ドアが開いたことを判断できるかもしれません。しかしVR環境では、他の要因は全て取り除かれているというわけです

「与えられたタスクを効率的に解決する唯一の方法は、脳の内部の時間感覚を使うことしかありません」

研究チームはマウスの脳の活動を、二光子顕微鏡を使って観察し、ドア前で待つ間に空間認識時に活動するものとは別のニューロンが活性化していることを発見しました。「見えないドアあたりに到達したマウスの脳では、空間情報をエンコードする細胞が活動していることがわかりました。そして、ドア前で止まると、それらの細胞の活動は止まり、新たな細胞の活動がはじまるのです。これは大きな驚きであり、新たな発見です」

研究者が「タイミング・セル(timing cell)」と呼ぶこの細胞は、動物が動き回るときは活性化せず、身体を休める間にのみ活性化したそうです。Dombeck准教授は「タイミング・セルは、休息中に活性化するだけでなく、どのくらいの時間休んでいるかを実際にエンコードしている」と考えているそうです。すなわち動物たちは、時間の経過という情報を処理し、理解できている可能性があると言えそうです。


お寝坊飼い主さんには残念ですが、犬や猫は、朝食の時間が10分遅れたことをしっかり認識しているかもしれないのです(そして恨みに思っているかもしれません)。30分遅れを許してくれるのは、時間がわからないからではなく、心が広いからかもしれません(ありがとう!)。

「動物は時計を読めないから」などと舐めてかからず、遅れてしまったそのときは「ゴメン」と素直に謝ったほうが良いかもしれませんね。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] James G. Heys, Daniel A. Dombeck. Evidence for a subcircuit in medial entorhinal cortex representing elapsed time during immobility. Nature Neuroscience, 2018; DOI: 10.1038/s41593-018-0252-8
[2] Yes, your pet can tell time – Northwestern Now
[3] 佐藤豪. (2015). 海馬―嗅内皮質系の空間認知における前庭系の役割. Equilibrium Research, 74(3), 213-217.

Featured image creditANNA TITOVA/ shutterstock

犬は時間がわかるのか | the WOOF イヌメディア

夕方になると「ねぇねぇ」と前脚でカリカリしてくる犬たち。毎日同じような時間になるとご飯の督促をする犬は、まるで時間がわかっているようです。 犬は時間がわかるのでしょうか。時計を読んだり時間経過を計測できない犬は、どうやって”その時”がきたことを知るのでしょうか。

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