イヌの愛想は遺伝で決まる!?〜触れ合い行動に関連する遺伝子が同定される(研究)

サイエンス・リサーチ
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犬は人間と社会的なつながりを持つことで知られていますが、これに関連する複数の遺伝的基盤が同定されたとする論文[1]が発表されました。ビーグル犬を対象に全ゲノム解析を行った結果、ヒトに向けた社会的行動に関連する可能性のある5つの遺伝子候補が同定されたのです。

ヒトとの社会的接触を持とうとする犬には遺伝的特徴がある

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image by Brian Brewer / Flickr

研究を行ったのは、ジェンセン教授(Per Jensen)率いるLinköping 大学の研究チーム。500匹のビーグル犬を対象に、実験及び遺伝子検査が行われました。

研究の目的は、人間との社会的つながりを持とうとする遺伝的基盤を見つけ出すこと。Domestication(人間環境への適合、家畜化)に研究上の関心を抱いていたジェンセン教授らは、オオカミと犬とを隔てる「人へ向けた社会的行動」に着目し、この違いを引き起こす遺伝子を見つけ出そうと、今回の試みを行ったということです。

ビーグルたちは、実験協力のために同じ犬舎で育てられた犬で、トレーニングなどは受けていない犬。同一環境のもとで育てられたため、他から受けた影響が少ないと考えられます。

各ビーグルは、初対面の人間と共に設定された課題に臨みました。課題は透明なフタを外してオヤツを獲得するという簡単なものですが、課題のうちの1つは開けることができない’不可能課題’として設定されていました。

研究者らは、不可能課題に対峙した時の犬の様子をビデオに収め、人間とコンタクトしようとする時間と回数を記録しました。目的は、フレンドリーなコを選別すること。’解けない問題’に挑んだ時に、すぐに諦め人間に助けを求めようとする犬もいれば、狼っぽく自力での問題解決に挑み続ける犬もいたそうです。

この後、’フレンドリーな’190匹の実験協力犬のDNAサンプルが集められます。そして全ゲノム関連解析(Genome Wide AssociationStudy:GWAS)が実施された結果、人と繋がろうとする傾向が5個の遺伝子を含む2つのゲノム領域と強く関連していることがわかったのです。

人と繋がろうとする傾向は5遺伝子に関連している

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image by Waldo Jaquith / Flickr

同定された5つのうち1つはSEZ6L内の1つの遺伝的マーカーで、ビーグル犬がヒトのそばで過ごした時間とヒトとの身体的触れ合いのあった時間に関連していることが明らかになりました。また、ARVCF内の2つのマーカー候補はヒトとの触れ合いを求める行動に関連していました。5つのうち4つの遺伝子は、(自閉症、精神分裂症、攻撃性などの)社会障害に関連するといわれる遺伝子だったそうです。

今回の研究ではわかったのは、「犬を社会的にする遺伝子的変異体(genetic variants)がありそうだということと、この変異体は家畜化の過程で残ったものであろうということ」。ただし、当研究はビーグル犬のみを対象にしたものであり、さらなる検証が必要だといいます。先行研究ではこれらの遺伝子は確認されていないのだそうです[4]

他の犬種でもこのような結果になるのか、そしてオオカミではどうなのか。ジェンセン博士は、今後の研究により明らかにしていきたいとしています。「家畜化の過程で、彼らの行動がどのように進化してきたかを理解する手がかりになる。こうした遺伝子を持つオオカミをヒトが選んできたのか、そうではなく、イヌを家畜化する過程で遺伝子変異が起こったのか、わかるかもしれない」

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Genomic Regions Associated With Interspecies Communication in Dogs Contain Genes Related to Human Social Disorders, Mia E. Persson, Dominic Wright, Lina S. V. Roth, Petros Batakis & Per Jensen, Scientific Reports, 2016
[2] 【遺伝】イヌの愛想の良さに遺伝的基盤が存在している可能性 | Scientific Reports | Nature Research
[3] Understanding the genes behind dog sociability
[4] Gene linked to autism in people may influence dog sociability | Science News

Featured image credit Chawawat Chans / Flickr

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