夏の夜空、ドーンとおなかに響く音と共に光り輝く花火。綺麗ですよね。が、しかし、ワンコにとっては少々事情が違うらしく、「きゃーっ、何の音??」「助けて―っ」とパニックを起こしてしまうワンコも少なくありません。
ある研究によると、3頭に1頭のワンコは花火や雷などの音を嫌うとのこと。多くの犬は大きな音を嫌うのですね。では、世のワンコたちはどんな音が苦手なのでしょうか?そして、それらの音が嫌いなワンコはどんな反応を見せるのでしょうか?
ワンコにとっての”騒音”とは
- 花火
- 雷
- 音楽。特に大音量で聞いているとき(クラシック音楽はワンコを落ち着かせる効果があるといわれています)
- 道路工事などの音
- 車やバス、電車、飛行機など乗り物の音
「私、怖いんです‼︎」「私、緊張しているんです!」のボディランゲージ
- 震える
- 何度も自分の上唇をぺろぺろ舐める
- 何度も欠伸をする
- パンティングする
- 逃げようとする
- うろうろし始めたり、きょろきょろし始めたリする
- 隠れる
- 人の膝の上に乗ろうとしたり、人に寄り添いたがる
- 動きが止まる
- 吠える、遠吠えする、唸る
- 失禁する
- 涎を垂らす
- ごはんもトリーツも食べない
騒音苦手ワンコには、こんなことを試してみて
花火や雷などの大きな音を怖がるワンコには、こんなことを試してみましょう。
- 窓とカーテンをきっちり閉め、室内は明るくします
- 大きな音が聞こえにくい浴室などに、飼い主さんと一緒に一時避難してみるのも効果的かもしれません
- クラシックミュージックをかけたり、遊んだりして、ワンコの気を紛らわせてあげましょう
- ワンコが怖がっている間は、飼い主さんがそばにいてあげましょう。ただし、なだめるのではなく、いつも通りに行動してください。怖がるワンコに「大丈夫だよ」「よしよし」などと特別に甘い声でなだめるのは実はマイナス効果といわれています
- 騒音が怖くて失禁してしまったり、逃げ回って物を壊してしまったり、恐怖のために吠えたてているワンコを叱ることはタブーといわれています
そんな“大きな音が苦手なワンコ”に朗報です!アメリカのZoetis社から花火などの騒音による不安症を緩和させるお薬、SILEO®が発売されました。騒音起因性不安症の治療薬として、初めてFDAの認可を受けた動物医薬品です。
騒音起因性不安症の治療薬SILEO®
How to administer SILEO correctly | Normandale Veterinary Hospital | Minnesota / YouTube
・どんなお薬なの?
SILEO®の主成分は、デクスメデトミジンというα2アドレナリン受容体作動薬で、抗不安効果や鎮静・鎮痛効果があります。
SILEO®は、専用シリンジに入ったジェル状のお薬で、ワンコの頬と歯茎の間に適量を注入すると、口の中の粘膜から吸収されてゆっくりと効果を示します。
花火などの騒音イベントの30~60分前に、もしくは騒音が始まってワンコが恐怖サインを見せ始めたらすぐにSILEO®を投与すると、ワンコの不安を軽減させる効果がみられます。
・どのくらい効くの?安全なお薬なの??
ヨーロッパ各国やアメリカ、オーストラリアなどの主要都市では、大晦日の夜、年越しを祝うために大規模な花火が開催されています。この花火の音が原因で、軽度~重度の不安症に罹ってしまうワンコが毎年続出しています。
この花火に起因する不安症に対し、 SILEO®がどの程度効果を示すのか、またその安全性を調査するため、ドイツとフィンランドの動物病院17軒が協力して、実験・研究が行われました。
対象となったワンコは、2歳以上、体重2kg以上で、過去に花火による急性不安症を示したことのあるワンコたちです。大晦日の花火の前にSILEO®を投与し、ワンコの行動から各飼い主さんが不安症状改善効果について判定を行いました。対象ワンコを通常投与量のグループと投与量2倍のグループ、対照グループとに分け、各グループの対象薬を2時間ごとに数回~5回投与しました。その結果、SILEO®を投与したグループのワンコでは、不安症状の改善がみられました。フィンランドの動物病院で実施した実験では、SILEO®を投与したワンコ24頭中、17頭に症状改善効果が認められています。
気になる副作用についてですが、数頭のワンコに、嘔吐と失禁がみられましたが、副作用のためなのか、花火による恐怖のためなのか、確認することはできませんでした。
SILEO®の主成分、デクスメデトミジンは、抗不安効果の他にも、強い鎮静効果があるため、鎮静薬として使用されています。上記の実験では、対象ワンコのうち数頭に軽度の鎮静効果がみられています。
・どこで手に入るの?
SILEO®は現在のところ、取り扱っている動物病院で購入するか、海外から個人輸入するしか入手方法はありません。SILEO®を個人輸入される場合には、必ず獣医師の指示に従ってご使用されることをおすすめします。というのも、SILEO®は不安症に効果的なお薬ではありますが、心臓や呼吸器、肝臓や腎臓に異常のあるワンコには危険なお薬でもあります。トレーニングやサプリメントなど、他の方法では改善することのできない、騒音に対して中程度~重度の不安症を示すワンコに適したお薬です。
「お薬をあげるほどではないかな」「うちは、ちょっと怖がる程度だから」…でも怖がるワンコに何かしてあげたい!という方には、ワンコを落ち着かせてくれるサプリメントやトレーニング、ツボ(指圧)などの選択肢もあります。それらについては次回、ご紹介させていただきます。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Zoetisus社、SILEO®について
[2] Zoetisus社、SILEO®添付文書
[3] Korpivaara, M., Laapas, K., Huhtinen, M., Schöning, B., & Overall, K. (2017). Dexmedetomidine oromucosal gel for noise-associated acute anxiety and fear in dogs—a randomised, double-blind, placebo-controlled clinical study. Veterinary Record, vetrec-2016.
[4] Effect of dexmedetomidine oromucosal gel for alleviation of canine acute fear and anxiety associated with noise at sub-sedative doses – A pilot study.
Featured image credit CRYSTAL ROLFE / Flickr
爆発音からワンコを守れ〜「花火と犬」「雷と犬」は最悪の組み合わせなんだよ | the WOOF
夜空に広がるカラフルでキラキラした花火って、本当にキレイでうっとりしてしまいますよね?あのドーンという大きな音でさえ、ワクワクドキドキする気持ちを盛り上げているようです。 ところが、多くのペットたちにとっては、花火の夜は悪夢以外のなにものもないのです。 動物の聴覚は人間よりもずっと敏感です。ですから、私たちにとって少し大きいくらいの音は、動物にとっては耐え難いほどのものすごく大きな音なのです。