イエローの犬〜優性と劣性、そして黄色の濃淡の違いはどうつくられる?

犬のカラダ
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連載第2回目となる今回は、犬のイエローの毛色についてのおはなしです。

『優性ブラックと劣性ブラック』の回を覚えておられるでしょうか?イエローの場合も同じように、同じイエローの毛色でも優性イエローと劣性イエローは別々の遺伝子の働きにより決定されています。また、イエローの濃淡や、毛色の混ざりなど、見た目の違いも遺伝子によって決められています。

今回は犬種の例をあげながら、その違いについてみていきたいと思います。

イエロー、レッド、フォーンなど呼び方はさまざま

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イエローの毛色をもつ犬というと、真っ先に思い浮かぶのはイエローラブと呼ばれるラブラドール・レトリバーでしょうか。

しかし、イエローのカテゴリーは、白っぽい色や全身が同色のものだけに限りません。パグやグレート・デーンのフォーン、シェットランド・シープドッグやコリーのセーブル(胸のあたりが白で身体がオレンジっぽい毛の犬)などもイエローのカテゴリーに入ります。これらは優性イエローの毛色です。

一方の劣性イエローには、イエローラブやゴールデン・レトリーバーがいます。このほかに一見茶色にも見えそうなくらい深いレッドのアイリッシュ・セターやハンガリアン・ビズラ、これらの毛色に白斑が入ったブリタニー・スパニエルのホワイト&オレンジ、バセット・ハウンドやクランバー・スパニエルのレモンなどもここに入ります。レトリーバーやスパニエルなどのガンドッグ系に多くみられます。

優性イエローと劣性イエローの両方の毛色をもつ犬種に、ダックスフントやプードルがあります。彼らのレッドと呼ばれる毛色も、カテゴリーはイエローです。

優性イエローと劣性イエロー


image by BIGANDT.COM / Shutterstock

犬の毛色はメラニンによって作られています。メラニンには2種類あって、ひとつが赤~黄褐色の色素であるフェオメラニン、もうひとつが黒~茶褐色をしているユーメラニンです。イエローの毛色を作り出しているのは、赤~黄褐色の色素フェオメラニンです。

イエローとひとくちに言っても、遺伝的な観点からは大きく「優性イエロー」と「劣性イエロー」の2つに分けることができます。この違いは、見た目からわりと簡単に判断できるものです。優性イエローはフェオメラニンの毛色に混ざってユーメラニンの着色もあらわれてくる場合が多く、劣性イエローはフェオメラニンのみの毛色です。

優性イエローの毛色は、もともとはオオカミの毛色(ウルフカラー)を作り出す遺伝子に変異(DNA配列が変化する)が起きているために作られています。変異が起きていないときにはウルフカラーとなるこの遺伝子には、DNA配列の変異の違いにより4種類のタイプがあることが分かっていて、その中で最も優性な形質であるのが、優性イエローになります。

劣性イエローの毛色は、もともとは黒~茶褐色のユーメラニンを体に拡張する指示を出す遺伝子に変異が起きたためにつくられているものです。DNA配列が変わり、本来の「ユーメラニン拡張する」という働きをすることができなくなったかわりに、「フェオメラニンだけを拡張する」働きを獲得したものと考えられています。そのため、フェオメラニンだけの体毛を持つのです。

さてここで劣性イエローに関する小ネタを3つほど。「へー、そうなんだ」と「フムフムフム」と読み進めてください。

・劣性イエローの毛色はラブやゴールデンの功績もあり身近な毛色に感じますが、犬種全体でみるとそれほど多くはありません。犬種界では優性イエローの方がメジャーな毛色といえます。

・キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは犬種特有の毛色の呼び名を持っています。レッド単色をルビー、ルビー&ホワイトをブレンハイムまたはブレナムといいますが、どちらも劣性イエローの毛色です。

・劣性イエローではない両親から、突然劣性イエローの子犬が生まれることがあります。

ミニチュア・ダックスの毛色で考えてみよう


image by Evdoha_spb / Shutterstock

ここまで読んでいいただいて、優性と劣性の違いはなんとなーくわかっていただけたと思います。では、ミニチュア・ダックスを例に見ていきましょう。優性と劣性の両方をもつミニチュア・ダックスを並べて比較することで、理解が深まると思います。

ミニチュア・ダックスのイエローに分類されるのはレッドと呼ばれる毛色です。レッドには、黒い差し毛が混ざるシェーデッド・レッドと、黒毛がまったく混ざらないクリア・レッドの2種類があります。

シェーデッド・レッドの黒い差し毛の程度は、全身に入ることもあれば、耳先や尻尾の先などにわずかにみられる程度のこともありさまざまです。程度にかかわらず差し毛があるということは、2種類のメラニンがみられるということです。そのような個体は優性イエローです。

一方で、劣性イエローのクリア・レッドと呼ばれる毛色は黒毛がまったく混ざりません。数本というレベルで混ざることはあっても、だいたいは黒っぽい毛はありません。黒い毛が混ざっていなかったら、ほぼ劣性イエローといえるでしょう。

ほぼ。ほぼほぼ。

しかし、残念ながら黒い毛の有り無しだけでは、優性イエローと劣性イエローのいずれであるかを確実に判別することはできません。優性イエローの場合でも、たまにユーメラニンの毛色が混ざってこない場合もありますし、子犬時代に生えていた黒い毛も、成長と共に消えていくことがあるからです。すなわちすべてのクリア・レッドの犬が、劣性イエローの毛色であるとは限らないのです。

見た目の違いから毛色遺伝子の違いをある程度推測することが可能です。しかし、優性イエローと劣性イエローの違いは遺伝子検査をしなければ確定するのは難しいということを頭の片隅に入れておいてくださいね。

黄色の濃淡はどのようにつくられるのか


image by OlesyaNickolaeva / Shutterstock

先ほどの例にあげたミニチュア・ダックス以外にも、両方の遺伝子背景からなるイエローの毛色を持つ犬種が身近にいます。フレンチ・ブルドッグ、ポメラニアン、プードルです。この中でもポメラニアンはとても分かりやすいので、写真を使って復習してみましょう。

ポメラニアンの代表的な毛色ともいえるオレンジには、“生まれた時には黒い毛が混ざっていて、成長するにつれて黒毛が減っていくタイプ(黒毛は残るかほとんど残らない)”、もしくは“生まれた時からオレンジ一色”のいずれかのタイプがあります。そう、すでにピンときた方もいるでしょうが、前者が優性イエローの毛色になり、後者が劣性イエローの毛色です。


image by EpicStockMedia / Shutterstock

ここでちょっとポメから離れて、ラブラドールやゴールデンを思い浮かべてみてください。ラブやゴールデンの毛の色は、濃い黄色からかなり白っぽい色まで連続していて、はっきりとどこからが白でどこからが黄色と区別できるようなものではありません。このような状況を説明するために、フェオメラニンの濃淡を決める働きを持つ遺伝子が想定されています。その遺伝子の働きにより、イエローの色調が個体ごとに異なるのだろうと考えられているのです。

ポメラニアンについても同様に、その遺伝子の働きによりオレンジの色素が強められるとレッドに近い色合いになり、逆に弱められればクリーム、さらにはホワイト(いずれも黒い差し毛が入る可能性はあります)というようにますます色が薄められるというような仕組みになっていると仮定されています。

ポメラニアンのご家族さんはぜひ、毛色をじっくり観察してみてください。フェオメラニンの毛色にちょっとしたユーメラニンの黒毛や茶毛が混ざっているかどうかをチェックしてみるだけでも、毛色の見方が変わってくるのではないでしょうか?毛色は見た目に分かりやすく、かつ、それほど複雑ではない遺伝形式によって決定されているものなのです。


ちなみにホワイト・シェパードも劣性イエローの遺伝子を持っているのですが、黄色い個体がいないのはフェオメラニンの濃淡を決める遺伝子が毛色をより薄める作用をしているからだろうと考えられています。

遺伝子のはたらきは本当に様々で、どのような毛色が犬種内に存在するのかによっても様々です。見た目だけで確実に予想するのはむずかしいものですが、毛色研究が進んだおかげでそれなりにかなりのことが分かるようになってきているのです。

Featured image creditsanjagrujic/ shutterstock

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