料理上手で愛犬家の小説家の日常は?~『犬とペンギンと私』

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皆さんこんにちは! 僕は、読書犬パグのぐり。

天国で暮らし始めてはや8か月。だいぶこちらの生活にも慣れてきました。僕より少し前にこっちにきていた豆柴のしーちゃんは、この前、大好きなパパに再会できて大喜びしていたよ。地上のご家族は悲しみに包まれていると思うけれど、しーちゃんもパパも、こちらでは実に元気に、楽しく暮らしているから、安心してください。

リアルなお料理描写

犬とペンギンと私 (幻冬舎文庫)

さて、今回ご紹介するのは『犬とペンギンと私』(小川糸著 幻冬舎文庫 2017)です。著者の小川糸さんといえば『食堂かたつむり』が有名ですが、実は僕、まだ読んだことがなく…。食いしん坊のわりにそういうところのチェックが甘いって? その通りです。すみません。

なので、小川さんの著書は今回初めて読みました。

ひと言で表すと、本当に幸せな気分になれる本、です。内容は、小川さんの日常をつづった日記エッセイ。この本には小川さんとその家族の2014年の出来事がつづられています。

犬と、おいしそうなご飯と、楽しい旅が満載なんだもの。本当におすすめ。

小川さんは、お料理が好きで、きっととても上手なんだと思う。食べ物の描写が、まるで目の前にその料理があるような錯覚に陥るくらい、リアルなのです。

僕の一番のお気に入りは、親戚から送られてきた活き伊勢海老(なんと豪華な!)の料理。料理が好きといはいっても、さすがに生きた伊勢海老を調理するのは至難の業のようで、小川さんは早々に撤退。パートナーのペンギンさん(職業はミュージシャン)にその仕事は任されましたが、かなり難航したのです(「伊勢海老御免 3月18日」)。1回目に送られてきて、なんとかさばいて、おいしかったけれど、もういいです、と思っていたのに、なんと、年の後半にまた送られてきたのです!(「伊勢海老様 12月10日」)。でもその時は強力な助っ人が現れて、無事おいしい料理に変身。

今回は身を食べた後の殻をクツクツ煮て、スープもとった。(中略)たくさんできたので、最初はお味噌汁にし、2度目はリゾットにして食べる。このリゾットがまた、適当に作ったわりに絶品だった。最初に玉ねぎをオリーブオイルで炒め、次にお米を加え、透き通ってきたら伊勢海老のスープを注いで、ひたすらコトコト。最後に卵でとじて、パセリを散らして完成。海老の身なんか入っていないにもかかわらず、しっかりと伊勢海老が主張している。(p.345-346)

食いしん坊パグの僕は、もうここでノックアウトされました。あまりにおいしそうなんだもの。お料理上手な人って、Nさんのお友だちにもたくさんいるんだけれど、適当に作ったって言っても、それがものすごくおいしいから、きっとこの伊勢海老のリゾットも相当だったに違いない。

“コロロス”に陥るほどの愛犬家

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image by Derek K. Miller / Flickr

さて、この伊勢海老料理を食べたのは4人。小川さんとペンギンさん、そして針の先生とそのお嬢さん。この針の先生の家で飼われているのがトイプードルとシーズーのミックス犬
コロ。コロは時々小川さんの家にお泊りをする。小川さん夫妻はコロのことが大好きで、特にペンギンさんはその写真をいつも眺めているほどなのです。

だいたい週末にコロは小川家にやってきてお泊りをします。小川さんは犬を飼っていなかったのですが、コロの可愛さにどっぷりとはまり、途中、ベルリンへ2カ月半滞在したときなど、ペットロスならぬ、“コロロス”に陥るくらい。

このエッセイの中には、犬と人とのよい関係の作り方を、実にやさしい、平易な言葉で表現している個所がいくつかあります。たとえば、コロがトイレを失敗したことを振り返って。

“別にベタベタする必要はないけれど、コロはみんなと同じ空間にいることが幸せなので、その最低限の欲求を叶えてあげると、相手が嫌がることはしないのだ。

そんなことを気にとめながら今日も一日コロといたら、午後、コロが思いっきり期待に応えることをしてくれた。(p.174)

犬の性格をよく見て、その欲求にこたえることで、信頼関係がより深まる。小川さんの日常生活の中で、そうした関係を、コロとどうやって結んでいったのかがわかりやすく書かれているのです。そういう部分もとても読み応えがありました。

行ってみたい!と思わせる旅行記

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image by Akaporn Bhothisuwan / Flickr

さて、このエッセイのもう一つの大きな魅力は「旅」です。仕事やプライベートで、小川さんはこの年も何度も海外へ行きました。インド、フランス、ドイツ、スイス。僕が好きなのは、ドイツ・ベルリン滞在記。スーツケース4つ持って、デンマーク経由でベルリンへ。2カ月半の長い滞在中、しょっぱなからびっくりなトラブルが起こります。それは本書でご確認を。

ベルリンを拠点に、さまざまな国に小旅行をする小川さん。一番の読みどころだったのは、イタリア。田舎の村にあるトラットリアでの食事は、本当に本当においしそう。小川さんが行きたくて、この年初めて訪れたレストランだそうですが、トリュフの名産地ということで、どの料理にもふんだんにトリュフが使われているらしい。ううううーーーー。

僕も食べてみたい! お料理だけではなく、サービスも素晴らしいそうで。

小川さんの文章は読者に、その場所に「行ってみたいな」と思わせる力があります。
同時に、登場するワンコたちにも「あってみたいな」と思わせる。

コロを愛してやまない小川さんとペンギンさんでしたが、コロは先生の家の犬。ベルリンから帰国した夫妻は、とうとうビションフリーゼの「ゆりね」を家族に迎えます。

年末はゆりね、そして訪問客としてのコロとの、それはそれは幸せな暮らしが描かれていきます。犬好きにはたまらない内容になっていますよ~。

早く先が読みたい!そしてほかの小川作品も読みたい!と思わせる一冊。ぜひお手に取ってみてくださいね。


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Featured image credit Akaporn Bhothisuwan / Flickr

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