【基本のき】いまさらだけど振り返りたい、犬の「正常行動」ってどんなもの?

生態・行動
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吠える、噛み付く、なんでも齧る。いわゆるワンコの「問題行動」は、飼い主さんの頭を悩ませる困り事ですよね。

ところで問題行動とは何でしょう?一般的な定義は、”飼い主が問題とみなす行動”です[1]。この行動には幾つかのカテゴリが含まれていて、いわゆる異常行動から動物にとっては全く正常な行動が含まれているのです。

犬の問題行動を知るには、まずは「正常行動」を知らねばなりませぬ!ということで今回は、犬の正常な行動のレパートリーを整理してみたいと思います。

犬たちはなぜ、私たちと違う行動をするの

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仲良しだけど、いろいろ違うよ! image by Rita Kochmarjova / Shutterstock

人間と犬が違うのは当たり前…かもしれません。では、犬と猫はどうして行動上にさまざまな違いがあるのでしょう。

すごく簡単にまとめてしまうと、彼らの先祖である野生動物種が長いながい年月をかけて行動様式を進化させ、これをペットたちが引き継いでいるからなのですね。それぞれの種が、種を存続させるために身体機能を異なる形で進化させたのと同じく、行動様式も環境に適応するように独自に進化させたわけです。

また、動物たちが暮らす感覚の世界は、人間のそれと全く異なります。ご存知のとおり、犬の嗅覚や聴覚は人間よりはるかに鋭敏ですが、視力はあまりよくありません。例えば同じ外界の刺激(花火の音、気候など)であったとしても、犬にとっては非常に苦痛だということもあるのです。

ところで、犬ならば同じ反応や行動をするのかといえばそうではなく、「用途の異なる犬種では、形態的特徴ばかりでなく行動の特徴もある程度異なる方向に分化してきたと考えられる[2]」うえ、「犬種による差以上に1頭1頭の違い(個体差)がきわめて大きい」のだというから要注意です。

犬に共通する行動

個体差が大きいとはいえ、ここで「隣のポチに見られる行動」を意識して分類するのは不可能ですので、犬という種に共通する正常行動の特徴を整理したいと思います。『動物行動学』(2012)に基づき、以下の4つの分類を使います。

ちなみに分類は研究者の視点によっても異なります。『犬学』では、(1)優位性行動と服従性行動、(2)捕食性行動、(3)なわばり性行動、(4)排泄行動、(5)繁殖行動、(6)母性行動、(7)探索行動、(8)遊び行動の8つに整理しています。

コミュニケーション行動

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犬の姿勢からも、いろいろわかる image by Foto011 / Shutterstock

コミュニケーション行動には、視覚を介するコミュニケーション行動、嗅覚を介するコミュニケーション行動、聴覚を介するコミュニケーション行動があります。

犬たちは、姿勢や表情、耳や尾の位置などを使って、その時の気分を表すコミュニケーション信号を発します(視覚)。また、聴覚を用いたコミュニケーション行動もあります。集団内における威嚇・服従行動、優位行動と服従行動、片脚挙上排尿、プレイバウ(遊びを誘うお辞儀)、情動を反映する発生(唸り声、キュンキュンなく声)などがあります。視覚や聴覚によるコミュニケーションは、相手との距離がある場合などに用いられ、犬たちは視覚・聴覚を使って対象の大まかな概要を認知します。

詳しい情報を知りたい時には、嗅覚システムを使います。犬の化学物質の検出感度は人間の100万倍とも1億倍とも言われており[3]、匂いから個体のアイデンティティに関するような多くの情報を得ています。マーキング行動、挨拶行動、匂いのこすりつけ行動があります。

生殖行動

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お母さん、大好き♡ image by jiraphoto / Shutterstock

犬は哺乳類。自らの遺伝情報を次世代に継承し、種として存続するために、性行動(交尾行動)を行います。そして育子行動母性行動とも言われる)を行い、我が子に深い愛情を示します。母性行動とも言われるのは、哺乳類のほとんどの種において育子は母親だけが行うものだからです。

母犬は幼い子を外敵から守り、排泄や食事の世話をします。離乳のタイミングでは、母犬は吐き出した食ものを離乳食とし、子犬たちは母犬の口元から食物をもらいうけます。ワンコが飼い主さんの口を舐めるのは、この時の名残であろうと考えられています。ただワンコにだって個性があり、すべての雌犬が出産後に母性行動をとるわけではないのです。育児放棄する母犬だっているのです。

社会行動

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わたし、怒ってます♪ image by cynoclub / Shutterstock

社会行動とは、複数の個体の間で繰り広げられる様々な行動学的相互作用の総称[3]です。複数個体間の相互作用として、敵対的行動親和的行動があります。

敵対的行動とは、2個体以上の競合的な相互作用で、動機付けの違いにより①恐怖性攻撃行動、②競合的攻撃行動、③なわばり性攻撃行動、④雄間攻撃行動、⑤母性攻撃行動、⑥疼痛性攻撃行動、⑦転嫁性攻撃行動、⑧捕食性攻撃行動に分類されます。攻撃行動は通常、犬としては自然な行動であったとしても人間にとっては困りもののことが多く、相談事例の半数ほどを占めるものです[2]

仲間同士が一緒にいることを楽しんでいるような相互作用もあります。親和的行動と呼ばれるのがこれで、挨拶行動や相互グルーミング、遊びなどが挙げられます。成熟した個体の場合、新しい個体と親和的行動をとるか敵対的行動をとるかの判断基準として、嗅覚情報が決定的役割を果たすことが多いそうです。よく「まず匂いを嗅がせる」「匂いのついたタオルなどで慣れさせる」というアドバイスを受けるのは、こうした性質を勘案してのことなのでしょうね。

維持行動

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お客さん、最近お手入れサボってますね image by Palo_ok / Shutterstock

維持行動に分類されるのは摂食、排泄、身づくろい、休息などの生きていくための行動です。犬の摂食行動の特徴としてあげられるのは、大量の食物をガツガツと一気食いするという点でしょうか。これはオオカミ時代に仲間と獲物を取り合った名残ではないかと言われています。

犬の排泄行動の特徴は、人間に比べて排糞回数が少ないこと、そして清潔好きであり自分の寝床から離れた場所で排泄するところでしょうか。そして自分の情報を他の動物に知らせようとする意図を持ってマーキング(自分の縄張りに匂い付けをすること)という点も特徴的です。こうした特性を活かしてトイレのしつけをするのは比較的容易だと言われていますが、さまざまな理由で「不適切に」排泄することもあります。

身づくろい行動(グルーミング)は、自身や他個体の被毛や皮膚を清潔に保つために手入れをする行動です。犬同士のグルーミングは親和的行動としての意味が大きいと解釈されています。人間と犬でも、犬が十分に社会化されており、撫でられることに不安を抱かない限りにおいては、お互いに心が穏やかになる行動です。


前述のとおり、上記は犬という種に共通する行動を整理したもので、個体によってもその行動パターンは異なってくるのです。接触行動ひとつとっても、「うちのコは、1回に食べる量が少ないし、ポリポリとよく噛んで食べるんです」なんて声も聞かれます。

犬種や個体の特性は、お世話や遊びの中で観察するのがイチバンです!基本を知った上で「うちのコはこういう特性があるみたい」と理解するよう努めると、毎日の生活や訓練がもっともっと楽しくなると思います。面白い行動を見つけたら、ぜひhello@woofoo.jpまでお知らせくださいね〜💕

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] 森裕司, 武内ゆかり, & 内田佳子. (2012). 動物看護のための『動物行動学』. 日本小動物獣医師会.
[2] 林良博. (2000). イラストでみる犬学. 講談社.
[3] 森裕司, 武内ゆかり, & 南佳子. (2012). 動物行動学. 株式会社インターズー.

Featured image from Anna Tyurina / Shutterstock

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