犬は怒っているアナタを信用しない〜気分の変化は犬の行動を変えるのか確認した研究のお話
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犬が私たちの感情を読むと言っても驚く人はいないと思います。しかし、怒っている人を信用しないと言ったらどうでしょう?
研究者が、犬が幸せそうにしている人と怒っている人を見た時に、どのように反応を見せるかを調べる実験を行いました。
人間の気分の変化は犬の行動に変化を与えるのか
私たちの犬との付き合いは非常に長く、犬の家畜化は1万6千年ほど前だと言われています(もっと前だったという説もちらほら現れています)。
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しかし私たちは犬について、あまり多くのことを知りません。特に彼らの感情面については、科学的に解明されていることもそれほど多くはありません。それでも彼らが私たちに様子をじっくり観察していること、そして私たちの変化を読み取ろうとしていることは、様々な研究によりわかっています。
今回ご紹介する研究もその一つ。私たちの気分の変化を見た犬がどのような反応を見せるのかを見極めようとした研究です。犬が私たちの”感情がわかる”と断じる内容ではありませんが、気分の変化という手掛かりで彼らが行動を変えるのならば、彼らは「空気を読む」くらいのことはやってのけていると言えそうです。
どうやって調べたのか
実験を行ったのは、米ブリガムヤング大学(Brigham Young University)のフロム教授(Ross Flom)たち。人間が見せるポジティブな感情とネガティブな感情に犬がどう反応するのかを確認しました。
研究は2つの実験で構成されています。1つ目は、笑顔を見せて明るいトーンで話す”幸せな人”が、足元にあるご褒美を指差す行動をする設定。もう一つは、しかめっ面で眉をひそめ厳しい声のトーンで話す”怒った人”が同様に指差し行動する設定です。どちらも、指差し行動は見知らぬ人が行います。ご褒美にはカバーが掛けてあり、何が入っているのかわかりません。人間の様子を見た犬たちが、どう反応するのかを観察するというものです。
この実験では、指差す対象(ご褒美)は犬にとっては見知らぬものですから、見に行ったり鼻を突っ込んで確認することはリスクを行動、相手を信用していなければできない行動だとフロム教授は言います。彼らは「反応までにかかる時間で信用レベルがわかる」と考えました。
怒っている人への反応は遅くなる
結果、怒っている人の指差し行動への反応には時間がかかることがわかりました。すなわち、研究チームの考え方を採用すれば、「犬は怒っている人を信用しない」ということになります。ちなみに、明るいトーンで話す人だと反応が良くなるということは確認されませんでしたが、怒ったトーンの人には明らかな反応の遅れがみられたということです。
しかし、指差し行動をするのが’幸せな人’でも’怒った人’でも、犬は探索をやめることはありません。オヤツの匂いがためらいを捨てさせるのでしょうか。好奇心には抗えないのでしょうか。いずれにせよ、カバーの下にマズルを突っ込んでしまうようです。
この研究から学べることは、普段通りのトーンあるいは楽しげなトーンで話しかけたほうが、反応時間が短くなるということでしょうね。トレーニングの時は、楽しいトーンを使った方が早く覚えられるのかもしれませんよ!なんだかんだ言って、人間のことを信用してくれているワンコたち。嫌なことがあったときや怒っている時も、彼らの前では幸せそうに元気に振る舞ってみたら絆も深まるかもしれませんね。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Flom, R., & Gartman, P. (2016). Does affective information influence domestic dogs’(Canis lupus familiaris) point-following behavior?. Animal cognition, 19(2), 317-327.
[2] Your dog doesn’t trust you when you’re angry | Brigham Young University
Featured image credit Austin Kirk / Flickr