肉球を押しつけないで〜DOGTVはなぜ、世界中で受け入れられたのか?

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犬のための専門テレビ局が存在することは、先日お伝えしたとおり。

その名もDOGTV。しかもその人気はうなぎ上りで、先日は中国全土での配信を目指すという発表もありました。すごすぎるぞ。

DOGTVの成功の秘訣はどんなところにあったのでしょうか。今日はその謎に、ちょっとだけ迫ってみます。

DOGTVってなあに?


DIRECTV COMMERCIAL – YouTube / YouTube

DOGTVは、世界初の犬専門テレビ局。ただし犬に関する番組を放送するのではなく、犬に向けた、特に飼い主がいない間にワンコたちに向けた番組を制作するテレビ局です。犬を飼っていない人たちは冗談だと思うかもしれませんが、留守中にストレスから家具や靴を噛んだり、冷蔵庫から食べ物を盗んで食べたりするペットに悩む飼い主には、大きな救いになっています。

2009年にイスラエルで開局。大手メディア企業のディスカバリー・コミュニケーションズ(Discovery Communications, Inc.、DCI)が株式の一部を保有するDOGTVは、現在 (2015年7月末時点)9カ国、22のプラットフォームでオンエアしています。アメリカ等いくつかの国では有料登録制ですが、無料視聴でいる国もあります。ちなみに日本では「ひかりTV」で視聴ができるほかYouTubeでいくつかの番組を観ることができます。

※ 「ひかりTV」での番組提供は2015年9月に終了。

飼い猫との生活からインスピレーションを得た創業者

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さみしかったよう © misuma / Shutterstock

犬たちからすれば「ネコお断り」と言いたいところかもしれません。でも、このサービスをはじめるきっかけがニャンコからきていることは、犬たちも知っておかねばなりません。

DOGTVのアイディアの元になったのは、創始者であるレヴィ(Ron Levi)さんがイギリスからテルアビブに戻る時に連れてきた猫のチャーリー(Charlie)です。レヴィさんはその頃、とても忙しかったようで「僕が家に帰ると、チャーリーはとても寂しそうな目で僕のことを見るんだ。とても罪悪感を感じたよ。チャーリーは毎日、家で一人ぼっちだったからね」と述懐します。「チャーリーにダウンロードした鳥やリス、魚などの動画を見せてあげたら、すごい反応を見せたんだ。それで、寂しくて退屈している動物たちをテレビを使って楽しませるというアイディアを思いついたんだよ」

DOGTVが初期に行った調査(DOGTV開局前)から、57%のアメリカ人は日中、ペットのためにテレビをつけっぱなしにしていること判明したそうです。一方で、アニマル・プラネットなどの「動物に関する」番組は、四ツ脚の視聴者たちにウケが良くなかったこともわかりました。そこで、既存の番組に頼らず、新たに「動物のための番組」をつくることを決意したのです。

科学に裏打ちされた番組を構成する

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動くもの、きになる © Javier Brosch / Shutterstock

DOGTV側は、彼らの制作する番組および編成は、科学的根拠に基づいていると強調します。

開局前の3年間、レヴィさんは犬の視力や聴力、さらには色や音の周波数などについて学び、60の研究のレビューを行ったとそうです。また、カリスマ・ドッグ・トレーナーヴィクトリア・スティルウェルさんを含む4人の犬の専門家の助けも借りることになりました。専門的知識を背景に準備をすすめたことが、快進撃の一つの鍵のようです。

その結果、番組およびその編成は、犬が喜ぶものとなりました。番組は大きく「リラクゼーション」「アクティブ(stimulation)」「教育(stimulation)」の3つのカテゴリーで構成されています。各番組は、犬に意図した効果を与えような視覚刺激、聴覚刺激が盛り込まれています。逆に「人間仕様」で犬の興味を削ぐようなカット割りやカメラアングルでの撮影は行われません。どうやらこれが、犬まっしぐらの秘密のようです。

さらに編成にもひと工夫。最初に犬の脳に刺戟を与え、次に落ち着かせ、さらには穏やかな形で刺激を与えるといった流れが考えられています。ここでいう「刺激」とは、犬が人間社会で生活するうえで直面する音声や視覚刺激で、たとえば花火や車、掃除機の音などに自然に慣れてもらうことを意図しているようです。犬が退屈せず、必要な生活音についても「学べる」というのは、飼い主さんにとっては嬉しいことですよね。

猫はどうなった?

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なんか、わすれてない? © Dora Zett / Shutterstock

ところで気になるのは猫のこと。猫のためのテレビは作らないのでしょうか。

レヴィさんの答えはこれ。「よく聞かれるけど、いまだってたくさんの猫がDOGTVを見ているし、契約してくれるオウムの飼い主さえいるんだ。可能性はあるけど、今は犬用の番組に専念したい」

じゃあ、出演猫はいるの?

「最初の3年間、リサーチや犬の視力や聴力についての学習に費やした後、2時間のコンテンツを作って、ロサンゼルスとニューヨークの38軒のアパートにカメラを付け、犬達がテレビを見る様子をモニターした。その結果、犬は猫にあまり興味示さず、逆に犬がその鳴き声に苛立って吠える犬もいたので、番組で猫を使うのはやめにしたんだよ」。

猫、かなしい。


アメリカでは、DOGTVをペットと一緒に見ることがトレンドになり、幾つかの番組は飼い主とペットが一緒に観賞できるように作られています。年々、冷ややかな目で見る人は減り、犬をリラックスさせるのに役立つ番組だと認識されつつあります。

DOGTVには、以前は分離不安の薬を服用していた愛犬が、DOGTVを契約してから薬がいらなくなったというコメントが、視聴者から続々と寄せられているそう。

「犬だって、退屈する。1日中1人で何もせずにいたら特にね。カウチポテトになって欲しいわけじゃなく、彼らが憂鬱やストレスから解放される何かを提供したいんだよ」

ところでワンコさん。夢中になるのはいいけど、画面に肉球を押し付けないで。

 
h/t to Don’t press paws: how DogTV built a global TV channel for man’s best friends | Technology | The Guardian

 
Featured image by TaraPatta via shutterstock

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