皆さんこんにちは! ピリッとした冷たい空気がすがすがしい日々ですが、いかがお過ごしでしょうか。東京の読書犬・パグのぐりです。
ついこの前2017年になった!と思っていたら、もう2月… 時が過ぎるのが早い!と言っているのは飼い主のNさん。僕はそんなに忙しいわけではなく、日々、日当たりのいい南側の部屋で本を読んでまったりしています。だって外は寒いんだもの~
あの作家も犬が好き
有名人にも犬好きな方はたくさんいらっしゃいますが、今月は本当に犬が大好きだった作家・遠藤周作さんが、もう一人の犬好きの作家と対談した記録があるのでそれをご紹介しますね。『好奇心は永遠なり』(遠藤周作 講談社 1997年)は、講談社の科学雑誌『クオーク』に連載された遠藤さんといろいろな分野の一人者との対談をまとめた一冊です。
実は僕、遠藤周作さんは大好きな作家の一人。一番好きな作品は『沈黙』です。犬が登場しないので、このコーナーでは紹介していませんが、人間の弱さをはじめとした内面を実によく表現した一冊で、何度も何度も読みました。他にもユーモアたっぷりのエッセイも書かれていて、とても魅力的な方だったんだろうなと想像します。
さて、遠藤さんは犬が大好きで、小さいころからいろいろな犬を飼っていたそうです。雑種が多く、一度だけお母様がシェパードを飼ったことがある以外は、捨て犬を拾ってきたり、牛乳屋さんから子犬をもらったり、というルートで犬が家族の一員になったとのこと。いずれにしても、どの犬も、特に雑種犬は自分のよき相棒だったと回想しています。
動物学者とは違った目線で
対談のお相手は、作家・沼田陽一さんです。この方もたいへんな犬好きで、やはり幼少のころから常に傍らには犬がいた、という環境だったそう。犬に関する著作をたくさん残されています。沼田さんは動物学者ではありませんが、長年犬と共に暮らしてきたからか、犬の気持ちが手に取るようにわかるのです。こうした二人の会話は実にあたたかい。
遠藤 人間が犬と友達になったのは、便利だからとか役に立つからとかいうのじゃなく、そばにいてくれるだけで<なつかしい>という感じがあったんではないでしょうか。
沼田 ええ、たしかにそういうつながりがあったんだと思います。科学ではわからないつながりをぼくは感じるんです(p.122)
ね、あったかい感じでしょう? 僕、この一文を読んでとっても嬉しくなったんだ。確かに動物の図鑑や、学者さんが書いた本には、人間と犬は、たとえば狩猟などでパートナーシップを結んで、行動を共にするようになっていった、という説もあるけれど、なんとなくそれだけじゃないのではって思っていたの。それを上のように見事に言語化してくれているのがこの対談の嬉しいところです。
そしてまた、とにかくお二人とも、犬たちを実によく見ています。
遠藤 そういえば私が朝、起きて庭へ出ていくと、ワンくんがモミ手しながら近寄ってくることがあるんですね。「やァおはようございます。今日はいいお天気でございますなァ」って感じで(笑い)。
沼田 あります、あります。(p.131)
遠藤 ぼくも本当に犬には精神的にずいぶん助けてもらいましたよ。こんなこと言っても誰も信じてくれないけれども、子供の頃、可愛がっていた満州犬の前ですべって引っくり返ったことがあったんです。そしたらホントに口をあけて犬が笑いました。
沼田 (笑いつつ)分かります、よく。(p.134)
こういうことってあるある、って、Nさんも読みながら笑っていました。科学的には説明できないのかもしれないけれど、犬と一緒に仲良く暮らしている人たちには、よくわかる情景なのかなと思います。
尽きない好奇心
こうした、これまでにお二人が飼ってきた犬との体験が披露されつつ、犬と人間の関係について話は進められていきます。そして最後に遠藤さんはこう言います。
遠藤 目に見えないコミュニケーションが自然の生きものの中にはあるんでしょう。それは歳をとるに従って感じます。合理主義で割り切っていくと、ザルから何かが漏れていく感じがありますね。人間中心にものを見るからでしょうね。(p.134)
単なる犬の様子だけにとどまらず、そこから一歩進んで、自分が小さいころから犬を心の友と思っていたのはなぜか、を自分なりに分析されている。単なる主従関係ではない、相棒、仲間意識がそこには確実にあって、それによって自分はとても助けられていたし、楽しい、嬉しい経験もさせてもらったと。「目に見えないコミュニケーション」は、きっとすべての犬とその飼い主にとって貴重で大事なことなのでしょう。
遠藤さんが、犬が好きというだけではなく、こうして対談のテーマにしてくれるほど興味を持ってくださったことに感謝です。さて、この本は犬だけでなく、ミジンコや呼吸法、猫、超能力、幽霊と、実にさまざまなテーマでいろんな人たちと遠藤さんが対談しています。尽きない好奇心をもち、一生涯「面白い、知りたい」という姿勢を貫いていた遠藤さんの人柄もよくわかる内容です。妻である遠藤順子さんが書かれた「夫、父、作家、遠藤周作の横顔」という文章も収録されていて、読み応えのある一冊です。
★ 写真参加:がっくん(2016年6月22日よりお空組所属、ミックス) © anko.gaku_ula / Flickr
【犬本紹介】『また、犬と暮らして。』~愛犬との別れと、新たな出会い | the WOOF
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